1日の乗降客数が100万人を超える交通の要衝、東京駅。その東側の八重洲口地下で整備が進められている「バスターミナル東京八重洲」の第2期エリアが、2026年3月20日に満を持してオープンしました。 官民が連携し、約10年かけて国内最大級の地下バスターミナルを整備する巨大プロジェクト。整備の目的は、東京駅周辺に分散していた高速バス乗り場を地下に集約し、鉄道・地下街とつながる「国際都市・東京の玄関口」としての機能を高めることです。異なる完成時期の3つの再開発事業にかかわり、一体整備を統括するのがUR都市機構(以下UR)です。「とりまとめ役」として自治体・民間企業・バス事業者との利害を調整してきた取り組みの舞台裏と、地上からは見えない魅力や工夫を、UR 東日本都市再生本部・都心業務部担当部長の天野昇さんに伺いました。

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UR都市機構 東日本都市再生本部 都心業務部 担当部長 天野 昇さん

「地下集約」で路上の不便を解消へ

八重洲口では長年、高速乗り合いバスや空港連絡バスの乗り場が駅前広場に収まりきらず、外堀通りや八重洲通りなどの路上に分散。特に発着本数の多い夜間は混雑を招きがちで、また屋外待機ゆえに暑さ寒さや雨などの影響を受けやすい不便さも課題でした。これらの課題の解消が、本整備の出発点だったといいます。

「東京駅は新幹線やJR在来線、東京メトロが乗り入れる巨大な交通結節点です。地方や空港から訪れた方が次の目的地へ移動する『玄関口』として、バスを含む多様な交通の乗り換えやすさを高めることが非常に重要だと考えました」と天野さん。

UR賃貸住宅のイメージが強いURですが、なぜバスターミナルの整備にかかわったのでしょうか。天野さんは「URは国の政策実施機関として、これまでにも民間企業だけでは難しく行政単独でも解決が困難な都市課題に関与してきました。今回は、公共的インフラとしての公平性・安定運営を担保するため、中央区から要請を受けて都市再生事業に参画することになったのです」と話します。

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バスターミナル東京八重洲 全体開業時のアクセスイメージ(画像提供:UR都市機構)

京王電鉄バスとタッグ、合意形成に尽力

八重洲地区では、それぞれ200m超の超高層ビルを構える3地区(東京駅前八重洲一丁目東B地区・八重洲二丁目北地区・八重洲二丁目中地区)の市街地再開発事業が段階的に計画されていました。事業者も完成時期も異なり、その地下を一体的・機能的につなぐバスターミナルを整備することは難易度の高いミッションでした。

「とりまとめ役」として選ばれたのが、URでした。URは各民間ディベロッパーからバスターミナル床を段階的に取得し、一体的に保有。バスターミナル床を公募で選定した京王電鉄バスに賃貸しています。バスターミナルの運営事業者である京王電鉄バスは、各バス運行事業者から発着料を徴収して、その収入からURに賃料を支払う――という仕組みで運営をしています。京王電鉄バスは新宿高速バスターミナル(愛称バスタ新宿、2016年開業)の運営にも関わっており、「そこでの知見も最大限活用いただいています」とのこと。

「自治体は都民・区民に安全で快適な環境を提供することが求められます。一方、民間ディベロッパーやバス事業者には事業としての採算性確保が当然必要です。調整は決して簡単なものではありませんでした」と天野さんは振り返ります。

例えば個々のバス事業者からすると、これまで路上での乗降では費用が発生していなかったところに「発着料」の負担が生じるため、合意形成は大きな課題の一つでした。「バスターミナルの公共性、日本の中心・東京駅に立地する重要性、特異性をご理解いただけるよう努めつつ、許可権者である道路管理者や警察にも協力を依頼。関係者間で『整備推進連絡会』を設置し、安全性確保のための路上乗降の禁止と計画的にバス停を移行することについてご協力いただきました」と天野さん。

苦労のかいあって、利用が始まっている第1期エリアでは従来と比べて道路状況が大きく改善。利用者からは「格段に使いやすくなった」という声が寄せられているといいます。

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「バスターミナル東京八重洲 第1期エリア」発券窓口・インフォメーション。観光地やアウトレットモール行きのバスを利用するインバウンド客も多い

「道に迷わない」を設計 日本を感じる地下空間

第1期は2022年9月17日に開業。鉄道や地下街に直結した屋内の待合空間、デジタルサイネージによる発着案内、案内カウンターやコンビニ・飲食店、パウダールームや授乳室などの利便施設を整えました。

「バス事業者とのコラボについては、各地で多くの権利者や関係者の方々のまちづくりの合意形成に携わってきたノウハウを生かしました。そして第1期エリアの経験を踏まえ、第2期エリアではさらに改善点を織り込んでいます。段階整備だからこそ、経験が次に活かせるというメリットがあります」(天野さん)

地下バスターミナルならではの意外な課題もありました。内部に飲食店やコンビニエンスストアが併設され、八重洲地下街(ヤエチカ)とも直結しているため、バス乗車前に買い物や食事ができる便利さがある一方、どこからバスターミナルになっているかが初回の利用客にはわかりにくいという声があったといいます。これを受けて「バスターミナル東京八重洲」の公式サイトでは、地上・地下それぞれの場所からのアクセスルートや案内動画を掲載するなど、表示や案内の改善に取り組んでいます。

第2期開業によって、乗り場は2カ所となり、利用者が迷うおそれが増える可能性があります。そこで3つのエリアを北から順に「地下A」「地下B」「地下C」と分類。Aは緑、Bはマゼンタ、Cはシアンを基調とし、色覚バリアフリーにも配慮したカラースキームを採用した、案内サインの計画を策定。JRや八重洲地下街(ヤエチカ)など、周辺施設の案内サイン改修・新設にも協力いただき、協議しているといいます。

「3エリアのバスターミナル整備においてURが、構想段階から事業実施段階まで関わることにより、利用者目線で統一性のある施設デザインや、分かりやすい案内サインを実現できています」と天野さん。

空間デザインは第1期に続き、「わかりやすい」「かえやすい」「旅立ちたくなる」がコンセプト。あらゆる利用者にわかりやすく、サイン表示に頼らなくても目的の行動を果たせるように工夫しているそうです。

東京駅地下が劇的進化 バスターミナル東京八重洲一体整備プロジェクトのすべて

「バスターミナル東京八重洲 第2期エリア」大型スクリーンには日本の四季折々の風景が映し出される

第2期エリアの見どころの一つは、ターミナル内のガラス面や大型スクリーンに日本の四季折々の風景写真や映像を映し、自然の中に身を置くような感覚を味わえる空間にしている点。天野さんは「海外からの来訪客も増えている中、日本の代表的な玄関口である東京駅に降り立ち、ここからまた別の日本の魅力的な場所へ向かうという感覚を演出できれば、と考えました」と話しました。

地下から広がるバス交通網の未来

「バスターミナル東京八重洲」は2029年に全体完成を迎える予定で、3エリア全体で20バースの乗降スペースを備えた国内最大級の高速バスターミナルとなります。地上に散在していたバス停が悪天候などの影響を受けにくい地下に集約され、鉄道や地下街とつながることで東京駅周辺の歩行者空間の質が向上。バスによる各方面へのアクセスも大幅に強化されます。官民連携の組み合わせだからこそ実現可能だったプロジェクトです。

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「バスターミナル東京八重洲 第1期エリア」の乗場ゲート。デジタルサイネージを活用し各バスの行き先も分かりやすい

「以前の環境をご存じの方には『こんなに変わったのか!』と実感していただけるでしょう」と自信をのぞかせる天野さん。「一方で、これまでの状況を知らない若い世代や海外から来られる方にとっては、これが『当たり前』になります。より高い要求水準に応えるため、常に感度を高く保ち、その時々のニーズや課題を的確にとらえながら、魅力ある都市空間づくりに貢献していきたいです」とさらなる抱負を語りました。