子どもの「考える力」や「忍耐力」をどう育てるか――そんな問いに向き合う家庭や学校が増えています。こうした機運が高まる中、2026年3月15日(日)、朝日新聞東京本社・読者ホールで、「朝日杯将棋オープン戦開催記念 おやこ将棋教室」が初めて開かれました。

親子で将棋を楽しみながら、トップ棋士と直接ふれあえるとあって、会場は大勢の親子連れで満席に。トークあり対局ありの盛りだくさんのメニューに、子どもたちもはじける笑顔を見せていました。

ステージ上でトークショーを繰り広げる棋士の2人
トークを繰り広げる佐々木勇気八段(右)と武富礼衣女流二段(左)
トーク登壇者に質問する参加者の親子
トーク&質問コーナーでは、子どもたちから次々と質問が飛びました

トップ棋士が語る「負けること」の意味

イベント最初の目玉はトーク&質問コーナー。朝日杯将棋オープン戦に出場した佐々木勇気八段と、司会の武富礼衣女流二段がステージに上がり、和やかなトークを繰り広げました。

会場に集まった子どもたちを前に、佐々木八段が語ったのは意外にも「敗北」の話でした。

「負けて落ち込むことを繰り返しているうちに、忍耐力がついた」

勝つことよりも、負けて立ち上がることの繰り返しが人を強くする――トップ棋士としてその真実を体で知っているその言葉に、強くうなずく親の姿もみられました。

一方、武富女流二段はこの日の会場を見渡して、こんな喜びを口にしました。

「私が子どものころは将棋を指している女の子が周囲にほとんどいなかったのに、今日は女の子がたくさんいて、うれしい!」

質問コーナーでは、子どもたちが手を挙げて「対局中に眠くなったら、どうしますか?」「長い対局だと、お腹空かないですか?」などと矢継ぎ早に質問が飛んでいました。棋士の思考や日常に直接触れることで、将棋への興味がぐっと高まったようでした。

大盤を使って将棋を教える「ねこまど」の講師たち
将棋の普及活動などをしている株式会社ねこまどの講師が、駒の動かし方を分かりやすく解説しました
将棋の駒の動かし方を教えるテキスト
駒の動かし方がひと目で分かる教材も用意され、初めての子どもにも好評でした

駒に触れて、いざ将棋の世界へ

トーク&質問コーナーが終わると、いよいよ将棋教室の本番です。将棋の普及活動などを展開する株式会社ねこまどの講師が登壇し、ステージ上の大盤を使いながら、佐々木八段や武富女流二段といっしょに授業を進めてくれました。

まずは駒の動かし方からスタート。簡単な「歩」から複雑な動きをする「飛車」「角」「金」「銀」、相手の駒のとり方、「王手」のかけ方まで、初めて将棋にふれる子どもたちでもわかるように丁寧に教えてくれました。

親子が並んで座り、実際に手を動かしながら学ぶ様子は、まさに世代を超えたコミュニケーションとなりました。

特に盛り上がったのは、王将を飛車と角で攻める問題が出されたシーン。子どもたちが次々と妙手を提案し、王将を追い詰めていきました。将棋の「考える楽しさ」「みんなで解く喜び」が、ぎゅっと詰まった瞬間でした。

棋士との対局を楽しむ子どもたち
佐々木勇気八段と直接対決する子どもたち。ドキドキしながら夢の対局を楽しみました

棋士との直接対局――緊張と興奮

後半はいよいよ、棋士とのふれあいの時間です。佐々木八段と武富女流二段がそれぞれ、子どもたちと直接対局しました。

ハンディキャップがあるとはいえ、棋士と盤を挟んで向き合うことは簡単ではありません。それでも子どもたちは真剣に考え、「王手!」と果敢に攻める姿勢を見せました。

駒を動かす指先、真剣な表情、そして「やった!」という歓声。棋士と同じ盤の前に座って知恵を競った経験は、きっと子どもたちの大切な思い出になったことでしょう。

マスコットのシンジルとタクセル
会場を盛り上げた三井住友トラストグループのマスコットキャラクター「シンジル」(左)と「タクセル」(右)

「シンジル」と「タクセル」も大活躍!

会場をさらに盛り上げたのが、特別協賛としてイベントを支える三井住友トラストグループのマスコットキャラクター「シンジル」と「タクセル」です。

開会のあいさつや記念撮影でも会場を明るくし、子どもたちに抱きつかれたり、一緒に写真を撮ったりと大人気でした。

三井住友トラストグループは、信託銀行業務を中心に幅広い金融サービスを提供しています。子どもの未来を見据えたイベントの趣旨は、同グループのパーパス「託された未来をひらく」とも重なります。資産を「託す」という信託の使命と、将棋という文化を子どもたちに継承し育成するこのイベントのコンセプトも、一つのビジョンへとつながっているのです。

イベントの最後には記念撮影の時間が設けられ、ステージに上がった子どもたちの笑顔がシャッターに収められました。

参加した子どもたちにはイベントで使ったソフト将棋盤と駒、駒台がプレゼントされ、佐々木八段と武富女流二段が「おうちでも楽しんでね」と呼びかけていました。

記念撮影におさまったイベント参加者たち(午前の部)
記念撮影におさまったイベント参加者たち(午後の部)
記念撮影で笑顔の参加者たち。午前の部(上)と午後の部(下)

将棋を楽しむ経験が、未来を切りひらく力になる

今回のおやこ将棋教室は、将棋の普及だけを目的にしたイベントではありません。「考える力」「負けても立ち向かう忍耐力」「知恵を競う楽しさ」を子どもたちに伝えたい――そんな思いが込められていました。

朝日杯将棋オープン戦は、将棋界の新たな才能を発掘し、活躍の場を広げることを目的とした棋戦です。その開催を記念して初めて実施されたこのイベントが、「将棋体験会」ではなく、棋士との対話と対局、そして家族でともに学ぶ時間として企画されたことには、大きな意味があります。

三井住友トラストグループは「社会的価値の創出」を大切にしています。将棋という日本の文化を次の世代へつなぐ取り組みは、まさに「未来への信託」と言えるでしょう。

会場を去る子どもたちの手には、ソフト将棋盤と駒が握られていました。家に帰ってから親と盤を囲み、「王手!」と声を上げる子どもたちの姿が目に浮かびます。

その小さな一局の積み重ねが、やがて未来をひらく力になる――このイベントに関わったすべての人が、そんな可能性を信じています。