「将来使うかもしれないから」「解体にもお金がかかりそうだから」と思って家を相続したものの、住む予定もなければ、管理をお願いできる人もいない。どう解決すればいいか困っているうちに、時間ばかりが過ぎてしまう……。
近年、「空き家」は全国的な問題になっています。トラブルに発展する前に知っておきたい空き家問題の実態と対策を、国土交通省の空き家対策ニャビゲーター「あきにゃん」とともに解説します。
空き家は放置すると大変ニャ!
空き家はただ古くなるだけではありません。老朽化や損傷のほか、ネズミや害虫の大量発生、ごみの散乱のような衛生上の問題が起きることもあります。さらに、近隣トラブルや景観の悪化、不審者の出入りがあれば治安の悪化にもつながります。管理や修繕に費用がかかるだけでなく、隣地の建物等が損壊すれば、損害賠償を求められる可能性も。こうした問題を抱えた家は資産価値が下がり、売却すら難しくなります。
2023年に改正された空家等対策の推進に関する特別措置法では、管理が行き届いていない空き家は「管理不全空家等」として、自治体が所有者に勧告できるようになりました。この勧告を受けると、土地の固定資産税が上がってしまいます※。さらに倒壊のおそれがあるような空き家は「特定空家等」として、安全性を確保するよう自治体から命令されたり、代執行(自治体が対策を実施し、所有者に費用を徴収)の対象となったりすることもあります。
※ 住宅用地は最大で1/6まで固定資産税が減額されていますが、この特例が解除されます。
「できること」から始めるニャ!
空き家問題を解決しようとしても、解体や売却といった「大仕事」を前に立ち止まってしまう人は多いかもしれません。まずは家族で「できること」から進めてみませんか。
1. 家族で話し合おう!
空き家が発生してしまう原因は、その半数以上が相続によるもの。家を悩みの種にしないために、家族で少しずつ話し合っておくことをおすすめします。
2. 登記を確認しよう!
相続登記では、「名義人が古いまま」「親戚と連絡が取れない」といった問題が発生することも。被相続人は、情報を確認・整理しておくことが重要です。
3. 家財を整理しよう!
家の活用も「家じまい」も、家財を整理しなければ始まりません。分別・整理などのサービスも活用して、空き家になる前から片付けていきましょう。
専門家に聞いてみたニャ!
空き家問題の相談・解決に当たっているNPO法人「空家・空地管理センター」代表理事の上田真一さんに、問題がなかなか解消されない理由や、家族で動き出すべきタイミング、解決への糸口について聞きました。
――最近の相談の傾向を教えてください。
2024年度の相談件数は2,942件で、毎年1~2割増えている印象です。「空き家って放置しちゃだめなんでしょ」といった雰囲気の醸成が進んだのだと思います。相談者は自宅を所有する親世代だと60代~80代前半、その子世代だと50代~60代が中心です。最近は、相続前の子世代から実家の活用を相談されるケースが増えています。
相談者の過半数が賃貸を希望します。自分は使わないけど、やはり「売りたくない」と。ただ、リフォームに数百万円かかるとお伝えすると、消去法的に売却を選ぶ方が非常に多いです。
――空き家を取得しても「なんとなく放置」という人は多いと思いますが、解決を阻む要因は何でしょうか?
空き家になったときに動けないのには理由があります。例えば、兄弟間で一方は活用、もう一方は売却を主張して意思決定できないというケースは非常に多いです。結論を出すには、家族間のネガティブなことも含めて相談できる先が必要だけれど、それがなかなかない。経済合理性だけでは解決できない、感情的な要因が大きいですね。
一回の話し合いで結論が出ることはないので、ぶつかりながらも何度も向き合うコミュニケーションが欠かせません。「空き家はこうやれば解決できる」という処方箋はないので、気軽に相談できる窓口が全国で充実することを行政に期待したいですね。
――家族で話し合いをするのに適切なタイミングはありますか?
話し合いが遅れると選択肢がなくなって経済的な負担が増えるだけなので、早いに越したことはありません。遅くとも親が元気な70代前半のうちに話し始めることが大切です。兄弟3人なら遺産を3等分してみるなど、ざっくりとでも良いので将来像を具体化することが大切です。
――話し合いの糸口を見つけるコツは何でしょうか?
子供が親に話を切り出すのは勇気がいるので、まずは子世代が動いてみるのが良いと思います。子供が、自分の遺言書を書いて親に話す、実家にある自分の物を片付けるなど。そうしたことで話し合いが生まれます。親世代は、子供たちが実家の行く末に向き合えるように「子供と話し合いましょう」ということに尽きます。
ただ、「子供たちの好きなように」というのは絶対にやめたほうが良い。「家や家財に対する考え」も一緒に相続させてあげて、子供たちの判断を後押ししてあげることが大切です。
また、日本は核家族の割合が高く、空き家はどうしても増えていきます。空き家になった直後は管理する意識が強いものの、時間が経つと足が遠のきやすいので、管理する手間とコストを負担しなければいけないという意識づけが大切です。
※本プロジェクトは国土交通省補助事業「モデル性の高い空き家対策に関する広報等を行う事業」として実施しています。(実施主体:朝日新聞社)