近年、騒がしい場所での会話やテレビ視聴など、日常のなかで「聴こえにくさ」を感じる場面は少なくありません。年齢にかかわらず、生活環境や働き方の変化によって、様々な状況でより快適な「聴こえ」を求める潜在的なニーズも高まっています。 こうした中で、音響機器メーカーとして長年“音”と向き合ってきたオーディオテクニカが新たに立ち上げたブランドが「audio-technica MIMIO(オーディオテクニカミミオ)」。誰もが自然に、自分らしく「聴こえ」と向き合い、音のある毎日をもっと楽しめる社会を目指して開発された商品の背景と想いを、開発責任者に聞きました。

生活の質を左右する「聴こえ」の環境

――「audio-technica MIMIO」は、一人ひとりに心地よい聴こえを目指すブランドとのことですが、「心地よく聴こえること」は、私たちの日々の生活にどのような影響をもたらすのでしょうか。

菊原: まず、日常の音がよりクリアに心地よく聴こえることで、会話がスムーズになり、ご家族や周囲の方々とのコミュニケーションにポジティブな影響が生まれると思います。 また近年では、カフェなどのざわざわした場所や、オンライン会議など、音環境が複雑になる場面が増えています。「audio-technica MIMIO」は、幅広い世代の方々にとって、日常のあらゆるシーンを「自分にとって快適な音」にアップデートし、騒々しい状況での会話など様々なシーンにおける「聴こえ」への興味や理解を深めるきっかけになればと考えています。

株式会社オーディオテクニカ コンシューマープロダクト開発部 ゼネラルマネージャー 菊原 靖仁さん

なぜ音響メーカーが?
「聴こえ」に向き合った理由 

――そもそも音響機器メーカーである御社が、「聴こえ」に特化したブランドを立ち上げたのはなぜでしょうか。

菊原: 現代社会は様々な音が溢れており、一人ひとりにとって快適な「聴こえ」は異なります。これまで、騒がしい場所などで感じる「聴こえ」の課題は年齢に伴うものと捉えられがちでしたが、実際には年齢に関係なく生じるものです。また、普段は問題ないと思っていても、例えばキッチンで洗いものをしているとき、大勢がいる場所で会話をするとき、「聴こえにくさ」を感じることはないでしょうか。このように、生活音などの環境により「聴こえ」の問題が起こりうることも見逃せません。

私たちは60年以上にわたり音と向き合ってきた企業として、改めて騒がしい場所などでの日常の聴こえ方そのものをもっと豊かにできるのではないかと考え、2024年に「ヒアリングサポート事業部」を立ち上げました。 単なる製品開発にとどまらず、人それぞれの音に対するニーズに向き合っています。試行錯誤を重ね、誰もがもっと手軽に自分好みの「聴こえ」が楽しめるというコンセプトをブラッシュアップしていく中で、現在の「ヒアリングアシストイヤホン“MIMIO ASSIST ONE”」にたどり着きました。

――すでに知名度のあるオーディオテクニカの音楽用イヤホンの新シリーズという扱いではなく、あえて「audio-technica MIMIO」ブランドとして独立させたのはなぜですか。

菊原: 「audio-technica=音響メーカー」という認知は広く浸透していますが、今回の製品はこれまでのオーディオ製品とはアプローチやコンセプトも大きく異なります。既存のブランドイメージにとらわれず、騒がしさやざわめきなど様々な状況に応じた「日常の聴こえをカスタマイズする」という新たな価値をよりストレートに届けるため、あえて新ブランドとして展開することにしました。

「周囲の音も、自分好みに」。
新しい選択肢「ヒアリングアシストイヤホン」の特徴

――「聴こえ」をより良くするものというと、補聴器や集音器が思い浮かぶのですが、「ヒアリングアシストイヤホン」とはどういったものなのでしょうか

菊原:まず前提として、医療機器である補聴器とは、目的や対象の方が異なります。「ヒアリングアシストイヤホン」は、製品カテゴリーとしては集音器に該当します。「会話やテレビをもう少しクリアに大きな音で楽しみたい」といった日常のシーンに向けた、生活をより快適にするための製品です。一方で、従来の集音器のイメージを刷新し、より日常に取り入れやすい新しいスタイルを目指しました。

昨今、ワイヤレスイヤホンが普及し、音楽を聴くためだけでなく、日常的にイヤホンを装着するスタイルが定着しました。そこで、音響メーカーである私たちの強みを生かし、イヤホンのように手軽に使えて、かつ自分に合った聴こえ方に整えられる、これまでにない新しい選択肢をご提案できないかと考えました。それが「ヒアリングアシストイヤホン」です。

大きな特徴は、専用アプリによる「聴力フィッティング」機能です。かんたんな聴力測定によって、利用者自身が自分の耳の特性を知り、より快適に聴こえるよう音質を調整できます。独自の信号処理によって周囲の気になるノイズを抑え、ざわついた場所でも会話を聴き取りやすくすることを目指しています。

自分の耳に合わせる。スマホで叶える「聴こえのオーダーメイド」

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専用アプリを使って聴力チェックを行い、自分の「聴こえ」に合わせて音を調整。スマートフォンでかんたんに設定できる。

――スマートフォンの専用アプリによる「聴力フィッティング」は具体的にどのように行うのでしょうか。

菊原: アプリの案内に従って、「低い音」から「高い音」まで4種類のテスト音を再生し、聴こえている間だけ画面上のボタンを押し続けます。 測定が終わると、左右それぞれの耳の聴こえ方の特性がグラフで可視化されます。その結果をもとに、その人の耳がより心地よく音を捉えられるように、アプリが自動で音質を最適化します。こうした高度な信号処理をリアルタイムで行っています。

――開発の初期段階から、アプリによるパーソナライズは構想にあったのでしょうか。

菊原: 「一人ひとりの耳にカスタマイズすること」は、ヒアリングアシストイヤホンにおいて欠かせない要素だと考えていました。手軽に、かつ精度の高い調整を実現するため、このアプリ連携は開発当初から不可欠な機能でした。

テレビ・対面・屋外などシーンに合わせて最適な音を“持ち歩く”

――シーンに応じて音を調整できる機能もあると伺いました。

菊原: アプリを使えば、その時々の状況に合わせて最適なモードに切り替えることができます。例えば「テレビを見たい時」は音声が際立つ設定に、「対面で会話する時」は声の帯域を重視する設定にする、といった具合です。 屋外向けの設定では、車の走行音などの環境騒音を抑える調整が可能で、音量を無理に上げることなく、聴きたい音を自然に捉えやすくする設計にしています。

――そんな効果もあるのですね。

菊原: 賑やかなカフェや人込みなど、周囲のざわつきで相手の声が聴き取りにくい場面でも、必要な音にフォーカスしやすくすることを目指しています。また、一般的なワイヤレスイヤホンと同様の機能も備えており、通話や音楽再生にも対応しています。音楽を楽しみながら、必要に応じて周囲の音をクリアに取り込むといった使い方もできます。

誰でも直感的に! 徹底したユーザー目線から生まれた操作性 

――とても便利な機能だと思うのですが、操作は簡単なのでしょうか。

菊原: 一度アプリで好みの調整を「シーン」として登録しておけば、あとは本体のボタン一つで呼び出せます。本体の操作でもアプリからでも簡単に切り替えられるため、状況に応じて直感的に選んでいただけると思います。

アプリの操作性についても、ユーザーテストを重ねてきました。「文字をもっと大きくしてほしい」「ここは分かりづらい」といった声を一つひとつ反映し、アイコンのサイズや視認性を高めています。

 例えば音量調整は、スライド操作ではなく、押しやすい「プラス・マイナス」のボタン形式を採用しています。また、測定の画面では、どこをタップしても反応するよう判定エリアを広げるなど、どなたでも直感的に使いやすい設計にしています。 実際の利用者から寄せられるさまざまなフィードバックも日々のアップデートに反映し、より身近な存在へと進化させていきたいと考えています。

気軽に試せるレンタルも「MIMIO ASSIST ONE」をもっと身近に

――「MIMIO ASSIST ONE」は、レンタルサービスも行われているそうですね。

菊原: ライフスタイルに取り入れるデバイスとして、「まずは自分の生活環境で試してみたい」という声も多く寄せられていました。そこで、当社として初の試みとなるレンタルサービスを導入しました。 実際の生活シーンで使用していただくことで、これまで意識していなかった気づきにつながるのではと考えています。商品に関心を持った方が、情報を調べる流れでレンタルサービスをご検討いただけるよう、公式サイトからご案内しています。まずは気軽に体験していただくことで、自分好みの「聴こえ」のある日常が、より多くの方に広がることを期待しています。

『audio-technica MIMIO(オーディオテクニカ ミミオ)』の製品ラインナップ

『audio-technica MIMIO(オーディオテクニカミミオ)』の製品ラインナップ。ヒアリングアシストイヤホンの他にも、お手元テレビ用スピーカー『MIMIO SOUND(ミミオサウンド)』シリーズも揃う。 

――「audio-technica MIMIO」では、「ヒアリングアシストイヤホン」以外にも、「お手元テレビ用スピーカー」のラインナップが充実していますね。

菊原: ご家族が一緒にテレビを見る際、それぞれにとっての快適な音量が異なったり、家事をしながら離れた場所で音を聴きたいといったシーンが多くあります。

「手元に音をクリアに届けることで、テレビの楽しみ方を広げる」というコンセプトのもと、シリーズを展開しています。 新たに発売した「MIMIO SOUND MOVE」には、テレビのセリフやナレーションを際立たせ、クリアに届ける「はっきり音」機能を搭載しています。ニュースやドラマで言葉をしっかり聴きたいときはオンに、音楽番組などで全体の音をバランスよく楽しみたいときはオフにするなど、スイッチ一つで簡単に切り替えられます。使う人がその時に何を重視するかに応じて、最適な音を提供できる点が特徴です。

――開発者として、ユーザーにお勧めしたい「MIMIO ASSIST ONE」の使い方はありますか。

菊原: 「必要な時、快適にしたい時だけさっと使う」という軽やかなスタイルを提案しています。私自身、例えば通勤時に使用した際、これまで気づきにくかった小さな環境音や鳥のさえずりなどに気づく場面もありました。単なる会話のサポートにとどまらず、日常の中で新しい「聴こえ」の発見があると感じています。

長年培ってきたイヤホン設計のノウハウを生かし、日常の「聴こえ」を整えるだけでなく、「音楽を聴くためのイヤホン」としての機能も備えています。デジタルガジェットを楽しむような感覚で、より幅広い層の方々に手に取っていただければ嬉しいです。 

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おしゃれでかわいいパッケージは、プレゼントに最適。箱には再生紙が使われており、ラッピングなしで渡せるので環境にも優しい。

日常の音をカスタマイズする、新しい文化を創る 

――最後に、この「audio-technica MIMIO」というブランドが広がることで、社会にどのような影響を与えたいと考えていますか。

菊原: 私たちの根底にあるのは、「もっと多くの人に、快適で豊かな音体験を提供したい」という想いです。騒音下での聴き取りにくさなど、日常のちょっとしたストレスに向き合い、自分好みに音を整えることが、結果として毎日の心地よさにつながればと考えています。何より、「日常の音をカスタマイズする製品を、誰もが当たり前に使っていいんだ」という空気感を社会全体に広げていきたいです。

――日常の中でヒアリングアシストイヤホンを使用することが、より自然な選択肢になってほしいですね。

菊原: まさにその通りです。これまでは、日常の聴こえ方に対して「自分から積極的にカスタマイズする」という選択肢が十分にありませんでした。だからこそ、デザイン性と機能性を両立し、音楽も楽しめるうえ、自分仕様に最適化できる本製品が、新しいライフスタイルの提案になればと考えています。気負わずに使い始められる入り口となることで、誰もが自分らしく音を楽しめる社会の実現につなげていきたいと思います。