駅と街をつなぐ都市型ライフスタイルの拠点として、首都圏を中心に展開してきたルミネ。商業施設の運営にとどまらず、ECや新業態にも領域を広げながら、「ライフバリューの創造」を掲げて進化を続けてきました。

そのルミネがいま、新たなフェーズへと踏み出しています。舞台は、文化と芸術が交差するパリ・マレ地区。世界中の視線が集まるパリ・ファッションウィーク期間中という絶好のタイミングで、初のPOP-UPを開催します。この挑戦は、単なる期間限定の出店ではありません。日本で培ってきた編集力や審美眼が、グローバル市場でどこまで通用するのかを問う、未来への“試金石”です。

「日本のルミネ」から「世界のLUMINE」へ。なぜパリなのか、なぜ今なのか。その問いの先には、日本発の美意識やライフスタイルを再解釈し、世界に届けていくという明確な意思があります。

今回のパリプロジェクトを牽引した、株式会社ルミネ 執行役員 営業本部業態マネジメント部長の山本 幸雄さん、営業本部グローバル戦略部の森 つくしさん、営業本部業態マネジメント部の白鳥 渉さんの3名に、プロジェクト構想から実現に至る舞台裏と、次なる展望について話を聞きました。

「日本のルミネ」から「世界のLUMINE」へ。
パリでの初挑戦

――6月14日(日)~7月7日(火)の計24日間、ルミネ初となるフランス・パリでのPOP-UPが開催されます。数ある都市の中で、なぜ今回パリを開催地に選ばれたのでしょうか。

山本 幸雄さん(以下、山本):パリは成熟した市場であり、特にファッションやライフスタイルの分野においては、世界の中心地の一つです。さらに今回はファッションウィーク期間中ということもあり、世界中から感度の高い人々が集まります。そのタイミングで私たちは、単なるPOP-UPではなく、キュレーションストアのような新たな展開に挑戦したいと考えています。

ここでいう「キュレーション」とは、単に商品をセレクトして持ち込むことではありません。日本のものづくりが持つ背景や文脈、作り手の思想や美意識までを理解したうえで、そこに宿る物語性やクリエイターのセンスが反映された商品を丁寧に選び、提案していくことを意味しています。

私たちは、商品そのものを販売するのではなく、日本のものづくりの価値やカルチャーを商品を通じて伝え、現地の感度の高い層に対して提案・発信していきたいと考えています。

パリPOP-UPで大事にした、流行に左右されない「普遍的な美しさ」

パリから始まる新章──ルミネが挑む「次世代のグローバル戦略」
写真左から、株式会社ルミネ 執行役員 営業本部業態マネジメント部長 山本 幸雄さん、営業本部グローバル戦略部 森 つくしさん、営業本部業態マネジメント部 白鳥 渉さん

――今回のパリでのPOP-UPのコンセプトは『「Japan Sustain」─ Timeless and Evolving』とお聞きしました。この言葉はどのような経緯から生まれたのでしょうか。

白鳥 渉さん(以下、白鳥):日本には代々受け継がれてきた“伝統”が数多くありますが、それを昔のままではなく、今の時代に合わせて柔軟に変化・進化させていることを表現したいと考え、この言葉が生まれました。

日本で古くから培われてきた精神性や、細部にまで宿る職人のこだわり、流行に左右されない普遍的な美しさは、持続可能な価値だと捉えています。そのうえで、現代を生きる人々のライフスタイルやニーズに合わせて変化していく。今回は、そういった商品をパリを起点に、海外の方々にも日常的に使えるものとして受け取っていただけるかが非常に重要だと考えています。

さらに将来的には、海外で日本のものづくりを紹介することで、改めて国内に向けても“世界で評価されている日本のものづくり”という視点で発信していきたいと考えています。それもまた、今回のプロジェクトにおける大きな意義の一つです。

――肝となる商品のキュレーションはどのように行われたのでしょうか。

白鳥:大きく2つの軸で行いました。1つ目は、商品のストーリーと背景です。さまざまな企業や職人の方々と接する中で、伝統の継承が困難な状況にあっても、絶やすことなく進化し続けている姿を実感しました。私たちがともに日本のものづくりの魅力を世界に発信することで、そうした方々の力になりたいという想いがあります。

2つ目は、お客さまのライフステージが変わっても長く愛用できる上質なアイテムであることです。ヨーロッパでも日本同様、 サステナブルな意識が根付いているため、シンプルで本質的に優れたものという視点を重視して選びました。

例えば「マルチョウ」は、全国5か所に直営の縫製工場を擁し、70年以上にわたり国内外のトップブランドに製品を提供してきたファクトリーです。高度な技術を誇る日本の伝統を守りながら、世界でも類を見ない縫製を可能にする独自ミシンの開発や最新設備の導入によって、最高峰の仕立てを実現するブランド「GOOD PEOPLE GOOD STITCHING GOOD PRODUCT」を2023年にローンチしました。これまでファクトリーを支えてきたベテラン職人の技術が若い世代へ丁寧に受け継がれていることはもちろん、持続可能な未来を見据え、スマートファクトリー化にも取り組んでいます。日本の高い縫製技術の継承、産地工場の発展、そして地域社会の繁栄を通じて、これからも日本の服づくりを守っていく――。そんな揺るぎない信念のもと、その価値を世界へ発信していきたいと考えています。

持続可能なプロジェクトへ
「グローバル人材との協働体制」

――今回はドイツのクリエイティブシーンを長年牽引するアンドレアス・ムルクディスさんとともに、商品の選定を行ったそうですね。

パリから始まる新章──ルミネが挑む「次世代のグローバル戦略」
商品を選定する「tokyo sense」クリエイティブパートナー,アンドレアス・ムルクディスさんと白鳥 渉さん

白鳥:アンドレアスさんには、ヨーロッパ拠点ならではの視点から多面的なサポートをいただきました。今回取り扱うクラフトをはじめとした商品についても、日本ではこう使うという固定的なイメージが私たちの中にありましたが、ヨーロッパでは異なるライフスタイルの中でまったく別の使い方がされていることに気づかされました。そうした発見は非常に新鮮であり、商品の新たな魅力や可能性を再認識するきっかけにもなりました。

山本:特に色や造形に対する感覚の違いが印象的でした。日本国内ではまだ一部でしか扱われていないような先鋭的な商品も、アンドレアスさんのアドバイスを踏まえ、取り扱うことになりました。

――森さんは輸送や現地でのショップ運営など、日本と海外をつなぐ「新たなスキーム」をゼロから構築されたそうですね。

森 つくしさん(以下、森):具体的には、事業スキームの立案から契約書への落とし込み、店舗運営に必要な各種届け出や規制、商習慣の調査まで、多岐にわたりました。チームで手分けしながら、懸念点を一つひとつ丁寧に洗い出し、確認していきました。

その中で最も重視していたのが、チーム全員の認識を揃えることです。新しいプロジェクトでは、同じ情報を共有していても解釈にズレが生じると、議論が噛み合わなくなってしまいます。得た情報を共通言語化したうえで議論を進めることで、認識のズレを防いできました。特に、欧州の企業との取り組みは今回が初めてだったため、文化の違いから、思うように進まないこともありました。これまでビジネスをしてきたシンガポールやインドネシアとも異なり、また一口に欧州と言っても、フランスとドイツでは文化的背景が大きく異なるなど、多様なパートナーとビジネスを進める難しさもありました。しかし、丁寧に対話を重ねることで、着実に信頼関係を築くことができました。中でも輸出入に関しては、欧州特有の商習慣や規制に翻弄される場面もありましたが、それらを乗り越えたことで、次の案件にも展開可能なモデルを構築できたと感じています。

――森さんはワーキングマザーでもありながら、海外出張もこなし、プロジェクトの中心となって活躍していると聞きました。

森 :はい。ありがたいことに、社内には育児中の社員が活躍できる制度が整っており、新しい業務に挑戦する機会も多くいただいています。困ったときにはすぐに相談できる環境があり、チームのみなさまや上司、家族の理解と協力を得ながら、プロジェクトに参画できています。

パリでの挑戦が切り拓く、ルミネの次なる可能性

パリから始まる新章──ルミネが挑む「次世代のグローバル戦略」

――将来的に、現地に根付いたビジネスの形も検討されているそうですね。

山本:はい。今回の取り組みは、そうした将来の成長機会を探るための“試金石”と位置づけています。現地での人的ネットワークやビジネスパートナーとの信頼関係も着実に築けており、ノウハウの蓄積も進んでいます。まずは果敢にチャレンジし、得られた知見を次につなげていきたいと考えています。

――白鳥さん、森さんはそれぞれの立場から、今回の挑戦がルミネにどのような次の可能性をもたらすとお考えですか。

白鳥:私は普段、国内で新しいショップを誘致する業務に携わっているのですが、今回のパリでの取り組みをきっかけに、これまで以上に多様なブランドや作り手の方々との繋がりが生まれました。改めて実感したのは、日本には優れた“ものづくり”に携わる方が、まだ数多くいらっしゃるということです。国内のお客さまに対しても、より新しく、ワクワクしていただける提案をし続けるための大きな刺激になりました。

森:今回のプロジェクトは、私たちだけでなく、社内の多くのメンバーの協力によって実現しました。部署の垣根を越え、全員で作り上げていったプロセスそのものが、組織にとっても非常にポジティブなチャレンジだったと感じています。また、一連の仕組みを構築できたことで、今後、他の国や地域へ展開する際にも活用できる基盤が整いました。ビジネス拡大に向けた重要な足がかりになったと思っています。

最後に、表社長から今回のパリでのPOP-UPに込めた想いを語っていただきました。

パリから始まる新章──ルミネが挑む「次世代のグローバル戦略」
写真左から、株式会社ルミネ 代表取締役社長 表 輝幸さん、「tokyo sense」クリエイティブパートナー アンドレアス・ムルクディスさん

表 輝幸さん:ルミネが目指しているのは、日本を元気にすることを通じて世界の課題解決につなげ、地球規模で幸せの循環を生み出すことです。日本の良さを世界へ、世界の良さを日本へ。その橋渡しを「ビジネス」として楽しく、かつ持続可能な形で実現することこそが、ルミネの掲げるグローバル戦略です。

今回のパリ進出は、単なる店舗展開ではありません。審美眼の厳しいパリという地で、世界基準の価値観やマーケットの深さを肌で感じ、自分たちの理念や精神性がどこまで通用するのかを問い直す挑戦の場と位置づけています。

そして、今回のプロジェクト最大の目的は、若い社員たちが世界目線で物事を見極め、異なる文化やコミュニティの力を引き出せる世界基準の人材へと成長することにあります。この経験を通じて、おもてなしの心や理念をより高いレベルで体現できるプロフェッショナルを育てること。「ルミネがあるから、世界はもっとハッピーになれる。」そう確信してもらえる未来を社員、パートナー、すべての職人たちと共創することこそが、今回のパリ案件の真の価値だと信じています。 

山本 幸雄(やまもと ゆきお) 株式会社ルミネ 執行役員 営業本部業態マネジメント部長
1992年入社、ルミネ池袋、ルミネ有楽町、ルミネ横浜にて、主に営業・運営統括、改装・リニューアルを担当。ルミネ横浜店長を経て、現在は執行役員業態マネジメント部長。ルミネ/ニュウマン各店の改装・リニューアルと契約、新規開発や海外ショップ企画等を担当。

森 つくし(もり つくし) 株式会社ルミネ営業本部グローバル戦略部
2015年ルミネ新卒入社。ルミネ池袋、ルミネ大宮の営業部を経て本社グローバル戦略部へ。シンガポール/インドネシアの店舗運営を担当。2025年よりパリプロジェクトでバックオフィスを担当。

白鳥 渉(しらとり わたる) 株式会社ルミネ営業本部業態マネジメント部
2013年ルミネ新卒入社。ルミネ新宿、ルミネ荻窪にて、主にショップの契約やリーシングを担当。その後本社事業推進部にて新規事業の立ち上げに従事。現在は本社業態マネジメント部にてルミネ/ニュウマン各店の改装・リニューアルと契約、新規開発や海外ショップ企画等を担当。

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