5月15日、WITH HARAJUKU HALL(東京・神宮前)で「Well-beingシンポジウム〜未来を創る“豊かさ”と安心のかたち〜」(主催:一般社団法人生命保険協会)が開催された。シンポジウムでは、Well-beingを単なる心身の健康に限定せず、暮らしや働き方、お金の安心までを含む概念として捉え、多彩な人々が対話を重ねた。

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「幸せな人は、視野が広くて利他的」

前野隆司氏(武蔵野大学ウェルビーイング学部長・教授)
基調講演に登壇した前野隆司氏(武蔵野大学ウェルビーイング学部長・教授)

近年、様々なシーンで目にする「Well-being」という言葉。幸福学の第一人者である前野隆司氏は、「Well-beingとは、身体的・精神的・社会的によい状態を示す概念で、日本では“幸せ”という意味で使われることが多い」と説明する。

20世紀、人の幸福度はGDP(国内総生産)に比例すると捉えられていた。しかし現在では、経済発展だけで幸福度を測るのは難しくなっているという。前野氏は、一人ひとりの豊かさを測る指数として「GDW(Gross Domestic Well-being)」が大切だと語る。

「私はWell-beingが世界を救うと思っています。ある心理学者の研究では、“幸せな人は視野が広くて利他的”という結果が示されました。これは、保険の本質である相互扶助にも通じるものであり、自分も他人も社会も幸せにすることにつながります」

また、前野氏の研究によると、金銭、もの、地位を得たときの幸福感は高いものの、持続しにくいという。一方で、「非地位財」の幸せは長続きする。それには、「自己実現と成長(やってみよう因子)」「つながりと感謝(ありがとう因子)」「前向きと楽観(なんとかなる因子)」「独立と自分らしさ(ありのままに因子)」の四つの心的因子が必要だとした。

ままならない人生で、自分を好きでい続けるために

トラウデン直美さん
トラウデン直美氏

基調講演に続き、クロストークではWell-beingをめぐる議論が展開された。「よりよい生き方ってどういうこと?」をテーマに、慶應義塾大学医学部教授の宮田裕章氏とモデル・タレントのトラウデン直美氏が意見を交わした。

宮田氏はWell-beingの基本的概念はあるものの、意味することは一人ひとり違うと語る。自身の「Well-beingな“推し”」は、ペンギン。「大好きなペンギンについて突き詰めていくと環境破壊の懸念につながり、私的なことが社会に結びつく」と話した。

トラウデン氏のWell-beingとは、「人生はままならないと理解した上で、自分を好きでい続けること」。それはとても難しいが、自分の安心材料とは何かを考えることがヒントになるという。そんなトラウデン氏は大の馬好きで、乗馬が趣味だ。宮田氏は「言葉が通じない馬とともに生きるために何ができるか考えることは、Well-beingの本質について深い学びがあるのではないか」といい、トラウデン氏も深く共感した。

Well-beingの概念は企業にも浸透しつつある。「これまでは経済合理性が重視されてきたが、今は若い世代を中心に、短期的な利益の追求や人から搾取することをよしとしない考えが根付いている」と宮田氏。それは、個人的な思いから、地続きで持続可能な社会へとつながっていく発想だとした。

新時代の“豊かさ”、企業は何を担うか

宮田裕章さん
宮田裕章氏

トークの後半では、生命保険とWell-beingについても議論が展開された。トラウデン氏が「周りの友人にも結婚や出産など人生の大きな選択をする人が増え、保険の話も出るようになった。不安があっても、安心できる土台があればチャレンジしやすい」と話すと、宮田氏も「しっかりと積み上げた心の余白(余裕)があれば、未来や人生の選択肢を広げ、明るい可能性を増やしてくれるように思う」と続けた。

最後の「働くことで感じるWell-being」というテーマでは、トラウデン氏は「仕事を通して豊かさを感じる瞬間が多い」と実感を語った。宮田氏は「事業の目的がWell-beingになっている企業も出てきている。新しい考え方を持つ人々の“豊かさ”に、企業はどう貢献するのか。それがリーダーたちの重要課題になりつつある」と述べ、さらに「その提案が(企業の)未来の価値になっていくと思う」と指摘。Well-beingは経済活動を含めて大きな影響を与える概念だと説いた。

Well-beingにおけるお金と働き方とは

クロストーク「生命保険とFinancial-Well-being “お金の安心”をどう再定義するか?」の様子
(左から)石川善樹氏(予防医学研究者・Well-being-for-Planet-Earth代表理事)、井戸照喜氏(三井住友信託銀行専門理事)、鹿島紳一郎氏(日本生命常務執行役員)、重本和之氏(第一生命保険常務執行役員)

「よりよい生き方」をめぐる対話の後は、登壇者も新たに「生命保険とFinancial Well-being」をテーマにクロストークが行われた。Financial Well-beingという言葉に明確な定義はないが、病気や失業、老後などのお金の不安を解消する「経済的備え」(マイナスをゼロ)と、学びや転職、地域活動などを通じて人生を充実させる「選択肢の拡大」(ゼロをプラス)という共通の要素がある。

生命保険はこうした要素に対し、「経済的リスクのカバー」と「心理的安心の提供」の両面で貢献できる。また生命保険会社は機関投資家としての側面も持ち、個人では難しい長期・非流動性投資を強みとする。社会課題の解決や経済成長にも寄与しながら、個人へは長期的な資産運用を通じ、将来の収支を見通しやすくする。さらに予期せぬリスクには「保障」で応え、「一歩踏み出すための安心」を支える点も特長だ。

予防医学研究者の石川善樹氏は、「長い時間軸でFinancial Well-beingに向き合うことが、どう生きたいかという人生設計につながる」と語った。

Well-beingに企業がイノベーションを期待する背景

クロストーク「企業におけるWell-beingの実践 個人の幸せと企業価値の両立をどう実現するか?」の様子
(左から)石川善樹氏、小島玲子氏(丸井グループ常務執行役員CWO)、羽田幸広氏(LIFULL執行役員CPO・人事本部長)、佐藤光信氏(明治安田生命執行役員常務)

続くセッションでは「企業におけるWell-beingの実践」について語りあう。ある研究では、人は幸せを感じているときのほうが、主体的に行動しやすい傾向にあるという。そのため、社員がWell-beingな状態で挑戦できることが、長期的な企業の価値創造につながる。

ここでは企業の取り組みも紹介され、「丸井グループでは働く人のWell-beingは、好きを通じてフロー状態(没頭)に入ること」「LIFULLでは、Well-beingを『挑戦の土壌』と位置づけて、その環境をつくるために『社員のつながり』と『挑戦の選択』を大事にしている」と、小島玲子氏と羽田幸広氏が語った。

また企業のWell-beingを側面から支える佐藤光信氏は、「健康経営を単なるモチベーション向上や福利厚生ではなく、喫緊の経営課題と捉える企業が増えている」と指摘。企業の枠を超えた連携も必要不可欠だといい、パートナーとして生命保険会社の知見やサービスが貢献できるとした。

今日をよりよく生き、誰かのために行動する

高田幸徳氏(生命保険協会会長・住友生命保険取締役代表執行役社長)
クロージングで挨拶を行う、高田幸徳氏(生命保険協会会長・住友生命保険取締役代表執行役社長)

シンポジウムの締めくくりには、生命保険協会会長の高田幸徳氏が登壇した。

「かつて生命保険は雨の降ったときの傘に例えられたが、未来にどうあるべきか、本日の議論から多くの示唆が得られた。今日をよりよく生き、誰かのために行動することは、必ず未来のWell-beingにつながっていく」と語った。

Well-beingをテーマにした展示も実施

会場入り口
会場入り口の展示コーナーの様子
トラウデン氏の「Well-beingなグッズ」
トラウデン氏の「Well-beingなグッズ」。このほかにも愛読書やお気に入りの入浴剤が展示された。

会場前のスペースでは、Well-beingへの理解をより深められる展示コーナーを設置。生命保険各社や今年3月に行われた「WELLBEING AWARDS 2026」受賞企業のパネルや、シンポジウムに登壇したトラウデン氏らの「Well-beingなグッズ」など、多角的な切り口で紹介された。