近年厳しさを増す酷暑、風水害に代表される環境変化は、私たちの暮らしの基盤である食づくりにも大きな影響を与えています。しかし、このピンチを「新たなおいしさを育むチャンス」と捉える頼もしい生産者の方々がいます。食の現場に様々な危機が訪れる中で新しいおいしさづくりに挑み、日本の食を元気にしようとする生産者の姿と共に、その支援プロジェクト「一番搾りACTION」を始動させたキリンビール・一番搾りブランドの思いに迫ります 。
暑さでおいしい米がつくれない。暑さに負けないおいしい米づくりに挑戦する農家
米が買いにくい状況が続き、食の当たり前が揺らいだ昨年。生活者の品薄や価格高騰に対する戸惑いは、大きなものでした。その一方、おいしいお米を食卓に届けることにひたむきに取り組む米農家の方々がいます。福井県で暑さに強いお米「いちほまれ」を育てる宮嵜恵介さんもその一人です。
「米って暑いとつくりづらいんだ、とここ5年くらいですごく感じています」。生産者としての切実な思いを語ってくれた宮嵜さんですが、その言葉には未来へ向けた力強い思いも込められています。
おいしい米づくりに恵まれた環境のはずの福井県は近年、暑さでおいしいお米をつくりづらくなっています。そんな悩みを抱える中、宮嵜さんは県と協働して暑さに強い品種「いちほまれ」の栽培方法の確立に力を注いできたそうです。
「農業を教わった義理の父の教えである『田んぼに毎日通え』を続けているのですが、『いちほまれ』の栽培に使った肥料や水の使い方などは、データを記録し県と共有しています。僕だけが『いちほまれ』をおいしくつくれても仕方がないというか、福井県の生産者みんながおいしくつくれるようになることに価値があると思うので。そのためには失敗も成功も包み隠さず、生産者同士で共有することが一番大事だと思っています」
とは言え、おいしさのための新しいチャレンジは、「変わったことをしている」という視線や距離を感じることもあったそう。一番搾りACTIONで支援を受けるにあたって、「過程や成果を見てくれる人がいるというのは、うれしいなあ」。そんな正直な思いを照れくさそうに語ります。
育てるのが難しいうなぎの
安定供給のため、新しい方法で挑みおいしさを届ける
「無投薬によるうなぎの養殖にこだわっているんです」。力強く決意を語ってくれたのは、千葉県で「南総里見うなぎ」の陸上養鰻に取り組む黒川友美さんです。
台風災害からの復興、地域経済の活性化や雇用の創出、高齢化によって増えた休耕田の活用──。様々な思いが重なって始めた陸上養鰻でしたが、その新しさゆえの困難も大きかったそうです。
黒川さんらが取り組む陸上養鰻は、病気などのリスクもあり出荷に至るまでの大きさに育てることが容易ではありません。それでも無投薬による養殖にこだわって、おいしさを追求しています。
「養鰻場の裏山から湧き出る『しぼり水』だけを使っているので、水質に自信を持って提供したいという思いがあります」
こだわりの水は、おいしさへのこだわりにも通じています。この「しぼり水」を、ただ単に循環させて使うのではなく、うなぎにとってより良い生育環境をつくる「循環ろ過システム」を導入しているのです。高濃度の酸素を水に溶かして循環させることで、病気の抑制のみならず、臭み防止にも役立つ仕組みになっていて、おいしさにつながる重要な役割を果たしています。
新しいおいしさを追求する挑戦は、時に先入観や固定観念によるマイナスイメージに足を引っ張られることもあり、その払拭もハードルの一つでした。困難が重なる中で、黒川さんの原動力になったのは「食べてくれた方がおいしいと言って喜んでくれたこと、そして口コミを聞いた方が買いに来てくれたこと」でした。
「一番搾りは人気があるけれど、ビールなので値段は相応。うなぎは今、決して安くはなくて、気軽に食べられないと感じる人もいるかと思います。でも、ビールの脇に南総里見うなぎの白焼きがあるよというくらいの価格帯のものがつくれたら」。黒川さんの言葉には新しいおいしさの安定供給に向ける意気込みがあふれていました。
「新しいおいしさをつくる人を応援する」
一番搾りACTIONとは
宮嵜さんや黒川さんのように、身の回りの変化に向き合ってピンチをチャンスに変え、新しいおいしさをつくろうとチャレンジする生産者たち。そんな挑戦者を応援する「一番搾りACTION」が始動します。
「一番搾りACTION」は、様々な変化や困難に向き合いながら新しいおいしさを生み出そうとする全国の生産者の方々を応援する取り組みです。一番搾りの売り上げの一部が全国の生産者支援のために寄付されます。また、特設サイトでは47都道府県の生産者の活動を紹介したり、収穫や加工といったおいしさが生まれるプロセスを発信したりしていく予定で、支援は特設サイトからも行えます。
「これまで当たり前のように供給されていた日本のおいしい食が、昨今の環境変化によって本当に危機的な状況にあると感じています」。そう話すのは、一番搾りのブランドマネージャーである佐藤洋介さんです。
「近年の猛暑や異常気象、原材料価格の高騰など、食を取り巻く環境は大きく変化しています。昨年には米の価格高騰や品薄も発生し、私たちの食卓を支える基盤が揺らぐ現実が浮き彫りになりました。こうした状況は食品メーカーの我々にとって決して他人事ではなく、取り組んでいくべき課題だと感じています」
一方で佐藤さんは、「食は日本が誇れる文化であり、たくさんの人を笑顔にできる力がある」とも語ります。「だからこそ、10年後も20年後も、100年後も、さらにはその先の未来に向けて、日本の食を支えていきたい。新しいおいしさを届け続けようとする人々を応援したい、そういう思いがあります」
この言葉の根幹をなすのが、一番搾りブランドが歩んできた歴史です。キリン一番搾りは1990年の発売以来、日本の食卓に寄り添い、食と共に親しまれてきました。そして、おいしい食とビールが織りなすCMで「豊かな味わいがもたらす喜び」を世に広め、地域ごとの個性を生かした商品展開にも取り組んできました。「日本の食やおいしさと共に楽しんでいただいている一番搾りだからこそ、今起きている食の課題に対して取り組める支援の形があるのではないかと思いました」
食は暮らしの土台となるものです。日本の食とともに歩み、おいしい食卓のそばにあり続けてきた一番搾りブランドだからこそ、その未来を支えたいという思いがあります。一番搾りACTIONは、その思いを生産者への応援という形にした取り組みです。つくり手たちの挑戦が次の時代のおいしさを育み、その先に今と変わらない「おいしさと笑顔あふれる食卓」が受け継がれていくことを目指しています。