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企画制作:朝日新聞社メディアビジネス局 広告特集

反響続々「イチロー社長」
旧知のジャーナリスト石田雄太はこう見た

2021年7月7日
2021/7/7
  • 7月2日朝刊に掲載された「イチロー社長」
    インタビュー (クリック拡大)
    7月2日朝刊に掲載された「イチロー社長」
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「理想の上司」アンケートで常連のイチローが本当に社長だったら、どんな会社をつくるのか、社員には何を求めるのか――。そんな想定で行われたインタビューを紹介した7月2日の朝日新聞紙面は、大きな反響を呼んだ。しかし、25年にわたる100時間超のインタビューで、その言葉に長く耳を傾けてきたベースボールジャーナリストの石田雄太さんは言う。自分だったら、イチロー社長の下では働けないと。優しげな言葉の裏には厳しさがあり、厳しさをくぐり抜けた者に対しては、どこまでも受け止める優しさを持つ。「イチロー社長」の語る哲学は、私たちにどんなヒントを与えてくれるのか。石田さんに寄稿してもらった。

イチロー社長の前では油断は禁物

もしイチロー社長のもとで働くとしたら、それなりの覚悟が必要だ。なぜなら、イチロー社長にはすべてを見透かされていると思ったほうがいいからだ。何しろあのだだっ広い外野を縦横無尽に動き回った現役時代、イチローが備える“センサー”は群を抜いて高性能だった。飛んでくるボールの位置を瞬時に捉える彼の空間認識能力は、じつは日常にも活かされている。見ていないようで、360度を見ているのだ。社員は当然、緊張を強いられる。

イチロー社長の会社では一見すべてが自由なようだが……

もちろん、どの会社よりも働きやすい環境は提供してくれるはずだ。「準備というのは、言い訳の材料となり得るものをすべて排除していくこと」と言ったイチローである。こうだからうまくいかなかった、といった類いの逃げ道はすべて事前に塞ぐに違いない。

だから『株式会社263』の社員は最高の環境の中で仕事に打ち込める。ジムがあっていつでもトレーニングできるし、ゴルフのシミュレーターを使って練習する場所も用意してくれるらしい。社長室にはワインセラーが置かれていてワインは飲み放題、他にもあらゆる種類のお酒が取りそろえられ、飲みたい人は自由にどうぞと社長は言う。無理強いはしないものの、飲みニケーションは距離を縮めるからと社員に社長室を開放する。

朝の始業はゆっくりで、朝礼もなければ社長の訓示もない。そんな自主性に任された職場ならば、きっとマイペースで、自分にできる仕事をすればいい……なーんて勘違いを社員がしてしまったら、これは大変なことになる。何も言わないのは、「言われた通りにすればいい」という安易な道を閉ざすためだったりするからだ。イチロー社長に油断は禁物なのだ。

打てないときこそ打ちにいけ

おそらく野球選手のイチローにはストイックなイメージを持つ人が多かったのではないか。ところがWBCで日の丸を背負うイチローが“激アツ”な姿を惜しげもなくさらしたことにより、それまで勝手に抱いていた“クールで孤高”のイメージはひっくり返る。2年前の引退会見では、当意即妙な受け答えやユーモアたっぷりの素直なリアクション、理路整然とした話しぶりで聞く人を魅了した。ストイックとは正反対のそんな姿は、仕事ができて尊敬に値するカッコいいオトナであり、“理想の上司”。今ではそれが、イチローの新たなイメージだ。

そんな流れの中で『もしもイチローが社長だったら!?』というフレーズを目にした人は、思わずワクワクしてしまったことだろう。あのイチローならきっと社員に対して自由な振る舞いを認め、個性を尊重してくれるに違いない……確かに「人が好き」だというイチロー社長は、社員の熱量を感じ取り、社員の情熱を大切にする。しかし、だからといって自由の意味するところを履き違えてはならない。たとえば、イチロー社長は自ら率先してトイレを掃除すると言う。そのとき「いやぁ、ウチの社長は立派だなぁ」とただ眺めているのではなく、「私がやります」と誰かが言い出すのを、社長は黙って待っている。

現在、アメリカで球団のインストラクターを務めているイチローは、若い選手たちにさまざまなアドバイスを送っている。とはいえ、イチローのほうから選手へ歩み寄ることはない。何も語りかけず、練習をジッと見ているだけだ。すると、そのうち選手がイチローに質問をする。 あるとき、メジャーで首位打者、盗塁王を獲得した選手がイチローに教えを請う様子に出くわした。調子を崩していた彼はイチローに「フォアボールを増やすにはどうしたらいいか」と訊いていた。するとイチローがこう言う。

「初球から打ちにいけ」。

彼は驚いた。フォアボールを増やすために積極的に打ちにいくなんて、逆じゃないか、と……しかし、のちにその選手はこう言っていた。「イチ(イチロー)が言いたかったのは、『フォアボールは結果であって狙うものじゃない、狙ったら積極性が消えてもっと打てなくなってしまう』ということだった。彼はグラウンドの上でもクラブハウスでも、常にプロフェッショナルとはどうあるべきかを示している。そんなイチが言うことだから納得できるんだ」

言葉で説明するより自分の姿を見せる。それがイチローの教え方だ(写真提供:朝日新聞社)

自ら考える人、
動く人に報いる“優しさ”

何かが伝わればいいと考えているときのイチローは、決してわかりやすい優しさを示そうとはしない。彼には意外に古風なところがあるのだ。“昭和的”であり、“体育会的”でもありながら、その価値観にはいつも愛情が伴っていた。普段はどんなに厳しくても、イチロー社長には頑張りに報いてくれる優しさがある。それは例の“センサー”が社員の頑張りを察知し、すべてを見透かしているからこそ成せるワザだ。見ていないふりをしながら、その実、人のことをよーく見ている。

思い起こせばイチローのメジャー1年目、日本中の注目が集まる中で、他人を寄せつけないオーラを身にまとった彼に質問することは容易ではなかった。それでも同じ場所で時間を共有すれば、ふともれる言葉や垣間見える仕草に、その時々の想いがあふれ出てくることもある。もちろんそれを見聞きしたからといって、余裕を持てるはずのないシーズン中、きっと知られたくないであろう心のうちを勝手に記事にすべきではないと考え、何も書かずにいた。

「で、インタビュー、いつにするの?」

新人王とMVPをダブルで獲得する歴史的な一年を戦い終えた直後、イチローは突然、こう問い掛けてきた。驚いたし、うれしかった。彼はこちらがやせ我慢していたことを察してくれていたのだ。厳しくもあり、愛もある……そうしたスタンスは今も昔も変わらない。

さらに言えば、イチローは時代の空気に流されることはない。発信するのはあくまでもプレーであって、言葉で発信しようとはしない。答えるべき場所で、答えるべき何かを問われたときだけ言葉を紡ぐ。だからSNSとは無縁なのだ。いつも何が必要なのかを考え、厳しい環境下でも自分のために道なき道を切り開き、そのためのブレない軸を持つ――それは野球に限らずビジネスや学びの場など、どんな世界でも、時代を超えて求められる力そのものだ。

私事ながら50代も半ばになって『株式会社263』へ入社する覚悟など持てるはずもなし、そもそも少数精鋭でビジネス界へ斬り込もうというイチロー社長のお眼鏡にかなうわけもない。ただ、社食に用意されているらしい“出汁の役割を終えたビーフ”を抜いた、具がすっかり溶けたルーと炊きたての白飯だけの『伝説のイチローカレー』はこっそり潜り込んで食べてみたいと、密かに企んではいるのだが——(笑)。

最後に思わず漏らした意外な言葉は? 動画で確認を

イチローさんとともに、
いっしょに、明日のこと。

日米の野球チームという組織の中で活躍し、マネジメントという立場へステージを変えられたイチローさん。チームで目標を達成することの難しさと喜びについて、イチローさんほどよく知っている人はいないのかもしれません。
採用面接ではどんな質問をしますか? 会社の福利厚生は? リモートワークってどう思いますか? 社長として必ず成し遂げたいことは?
驚くほど率直に答える「イチロー社長」の言葉には、いい会社とは何か考えるためのヒントが詰まっています。
2001年からイチローさんをブランドパートナーに迎えた私たちSMBC日興証券は、「イチロー社長」の言葉をヒントに、これからも前へ進んでいきます。

文=石田雄太

1964年愛知県生まれ。青山学院大学文学部卒業。NHKディレクターを経て92年フリーに。日本でプレーしていたころから20年以上にわたりイチローを追いかけ、その時々の心情を語る言葉を書き留めてきた。著者に『イチロー・インタビューズ激闘の記録2000-2019』『大谷翔平 野球翔年I』『平成野球30年の30人』(いずれも文藝春秋)『イチローイズム』『桑田真澄ピッチャーズバイブル18』『声〜Voice of Dice-K〜松坂大輔メジャー挑戦記』(いずれも集英社)など。現在、週刊ベースボールで「石田雄太の閃球眼」Numberで「スコアカード」連載中。