2024年03月22日
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全国の地域を訪れて、街の人と交流しながら学ぶ淑徳大学・地域創生学部の魅力
街の魅力づくりに関わる人材を育てるために、淑徳大学地域創生学部は2023年4月に開設されました。最大の特徴は、全カリキュラムの約3割が、全国の地域を実際に訪れて学ぶ「地域実習関連科目」であることです。体験型の学びを深めることで、どんな力が身につくのでしょうか。矢尾板俊平学部長と、1期生となる学生たちに聞きました。
目次
地域の幸せをつくる成功体験 淑徳大学地域創生学部で「当事者」となる学び

2023年4月に開設された淑徳大学地域創生学部では「地域の幸せ」を追求する独自の学びが展開されています。カリキュラムの約3割を占める「地域実習関連科目」では、学生たちが日本各地を訪れ、地域の人と触れ合い、課題を見つけて分析し、提案や実行する力を育んでいます。矢尾板俊平学部長に、学部の魅力やどのような力を身に付けることができるのかについて伺いました。
地域の課題を解決できる人材の育成
――2023年4月の開設から1年が経ちました。改めて、地域創生学部の設立の背景や目指していることを教えてください。
本学部では、地域の産業や福祉に深く関わりながら、その地域が抱える社会課題の解決に貢献する人材の輩出を目指しています。その背景には、他者の幸せを重視するウェルビーイングの視点があり、地域の人と共に、発展に貢献しようという思いがあります。社会課題の解決を教育の中心に置いています。
――現在、日本全体の中で地域創生に注目が集まっています。
社会の持続可能性そのものが問われているタイミングだからではないでしょうか。日本は少子化や高齢化といった問題に直面しています。だからこそ、地域創生に関する学問を大学で学び、社会的な課題に対して具体的かつ実践的な解決策を提案し、実行するための幅広い知識とスキルを身に付けることが必要なのです。本学の教育プログラムは、その期待に十分応えられるものです。
カリキュラムの約3割は地域実習関連科目
――全国の地域を訪れて、特産物をつくる人と話し合いをしたり、街の人に課題を聞き取ったりする「地域実習」を重要視されていますね。
全カリキュラムの約3割が、地域を実際に訪れる地域実習関連科目です。教室内で理論を学ぶだけでなく、実際にその地域に足を運び、現場での実践や実行を深めてほしいと考えています。必要性を重視した結果、このようなカリキュラムになりました。
――地域実習の中でも特色があるものを教えてください。
4年間かけて取り組む茨城県笠間市の実習があります。とことん地域に行くようにと、この1年間で6回も足を運びました。だんだん地元の方に話しかけられるようになるんですね。そうすると、学生も地域に愛着を持つようになる。住民との交流を通じて、実践的なプロジェクトを思いつくことにもつながります。
――実際に現場に行くことが大事なのですね。
インターネットで地域を「見る」ことはできますが、それだけでは地域で活動するための基盤が生まれません。地域の人からの信頼感を得るには、「何回も行く」ことが大切なのです。そこから信頼関係が生まれ、コミュニティに変わっていきます。
また、現場に行くことで、地域の人たちの価値観で考えられるようになります。のんびり暮らしたい地元の人に、「若者にとって買い物できる場所を作ることが地域活性化につながる」といっても実現しません。地域の皆さんが求めているものを提案できるようになるには、暮らしや喜び、そこの人たちが大切にしてきた文化に触れなければなりません。そうやって、「当事者」になっていくのです。
――2年次以降はどのような地域実習をするのでしょうか。
2年までは埼玉県三芳町や茨城県笠間市など、主に関東圏で実習をします。地域調査法や地域資源活用など、学ぶことも専門的になるので、座学で勉強してからそれぞれ特色のある地域へ行きます。3年からは全国へと行き先を変えて、都市部と地方部の共通点と違いなどを学びます。
課題解決力やコミュニケーション力が身につく
――地域創生学部で学ぶことで、学生たちにはどのような力が身に付きますか。
多様な価値観と生活様式を理解することができます。特に都会の学生が地方独自の課題や文化を体験すると、新たな視点につながり、創造力や課題解決能力が高まります。また、地域で継続的な人間関係を作っていくことで、コミュニケーション能力やチームワークが身に付きます。これらは全て、人としての基盤になるもので、将来どのような分野で活躍するにしても役立つはずです。さらに、公的な場で発言する機会を設けるなど、社会の中で実践的に学び、実際に社会を変えていく機会も提供しています。

実際に社会を変える小さな成功体験
――実際に社会を変えていくための実践的な場もあるのでしょうか。
私が副委員長を務めている「千葉市こども若者市役所プロジェクト」の活動に学生たちも参加しています。2023年12月から、千葉市内の団地や町内自治会と連携して「駄菓子屋カフェ」を開催しています。同プロジェクトに関わる高校生たちと大学生が一緒に、専用の通貨「ちばーる」と駄菓子を交換するなど、駄菓子屋の運営を体験しました。
――まさに、当事者として地域のために活動しているのですね。
2024年2月には、千葉市のこども基本条例検討委員会で、引きこもりや不登校で悩む子供たちの居場所を作るにはどうしたら良いかというアイデアを、代表の学生たちがプレゼンテーションで発表しました。これも素晴らしい経験になりました。今の若者の中には、疎外感や無力感を抱く人が大勢います。その解決のためにどうしたらよいのか。行政に提案をして、その意見が条例に反映される。小さな成功体験を積み重ねていくことが、自己肯定感を高めることにつながっていきます。
――将来はどのような仕事に就くことができるのでしょうか。
地域公務員や地域産業に関わる仕事に就く、あるいは、地域の課題解決ができるような起業家になるなどの選択肢が考えられます。地域の役に立ちたい学生が多いので、その志をぜひ社会に出ても持ち続けてほしいです。地域創生の道を志望することは、彼らが社会に対して責任感を持ち、実際に変化を生み出したいという強い意志の表れです。地域の社会づくりに貢献したいという気持ちを、親は応援してあげてほしいと思います。

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矢尾板俊平(やおいた・しゅんぺい)
淑徳大学・地域創生学部教授・学部長。博士(総合政策)。同大コミュニティ政策学部教授を経て、2023年4月より現職。静岡県駿東郡小山町行政アドバイザー、千葉市こども基本条例検討委員会副委員長等を務める。静岡県榛原郡川根本町総合計画策定委員会委員長として、川根本町の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」・第2次総合計画の策定に関わる。主な著書に『地方創生の総合政策論』など。
「ネットではわからない」 実習で体験できる地域の魅力と出会い

地域の魅力を引き出し、課題解決に貢献する知識と方法を学ぶことが出来るのが、淑徳大学地域創生学部です。学生は実際に地域に足を運び、地元の人と交流しながら、地域産業の発展や文化の継承など、さまざまな課題の解決に向き合います。1期生として幅広い学びを経験している武田梨沙さんと筒井颯大さんに、学部の魅力について伺いました。
地域との関わりを深く学びたい
――淑徳大学地域創生学部を選んだきっかけを教えてください。
高校の探究活動で団地コミュニティについて学んでいくうちに、地域社会について関心を持つようになりました。地域でのイベントを主催したときに、住民の方と話したり、楽しんでいる姿を見たりして、自分はこういうのが好きだと気づいたんです。地域との関わりを深く学べる大学を探していたので、まさにこの大学だと思いました。
僕は未熟児で生まれ、命が危険だった状態を医師や看護師などの多くの方に救っていただいたと母から聞きました。人に生かされたのだから、僕も人のために何かをしたいと小学生の頃から思っていました。淑徳大学の建学の精神「他者に生かされ、他者を生かし、共に生きる」に強く共感しました。
――2人とも何がやりたいかをしっかり考えて大学を選んだのですね。
武田さん:はい。ここの地域創生学部は、観光やまちづくりなど特定の分野に特化するのではなく、垣根なく様々な方面から考える力を養える点が魅力的でした。
筒井さん:高校生の時に、地方の飲食店が人口減少に伴う赤字経営の限界とアクセスの悪さが理由で、地元の方に惜しまれつつ閉店したというニュースを目にしました。地域の幸せがなくなってしまうことがとても残念で……。地域の活性化について学び、そのような厳しい状況にある人たちの役に立ちたいと思いました。
――実際に地域を訪れる「地域実習」の関連科目が全カリキュラムの約3割を占めるということですが、実習で印象に残ったことを教えてください。

武田さん:茨城県笠間市を何度も訪れました。最初はレンタサイクルを利用して、観光客目線で散策しました。自然がたくさんあって空気がおいしい、景色がとてもきれいなことに気付きました。自然が魅力の一方で、移動距離が長いことが課題だとも感じました。神社から駅までバスで10分だとしても、自転車では子どもやお年寄りにはしんどい距離です。かと言ってバスの運行数を増やせば、その分赤字になってしまいます。それを踏まえて、全ての住民の方が行動しやすいような交通手段が必要だと思いました。
筒井さん:笠間市に1年間で6回行ったので、行くたびに発見がありました。最初は知らない街でも、何度も足を運ぶことで愛着がわいてきます。
――行かなければ分からないこともありますか。
筒井さん:あります。みなさん、高齢化が進んだ街は元気じゃないというイメージを持っていませんか。実は僕もそう思っていました。でも、笠間市のみなさんは高齢ですが、元気いっぱい。実際に地域の方に会ってみるとエネルギッシュなことが分かります。問題とされていることと現実の間にギャップがある。ネットの情報だけでは分からないことがたくさんありました。
武田さん:地方の若者が減っていると聞きますが、笠間市では、笠間焼という伝統工芸品である陶芸に取り組む若者など、若い世代の方にたくさん出会いました。高齢化問題は注目されていますが、実は若い人たちも熱心に街おこしに取り組んでいます。
筒井さん:若い方も、地元の未来のことを真剣に考えていると感じました。座学だけではなく、実際に地域に行って、人と会わなければダメだと思いました。
武田さん:何度も訪れているうちに、授業じゃないのに、地元のお祭りに行くほど笠間市が好きになりました(笑)。
視野が広がる学び
――どんな力が身に付いていると感じますか。

筒井さん:物事を多角的に深く考えることができるようになりました。「企業誘致」についても、単に行政が企業にお金を渡して誘致をサポートすると解釈するのではなく、そのお金の財源を考えなければなりません。市民や企業からの税収は、地域の人口減少とも密接に関わってくるものです。このように考えられるようになったのは、大学で学んだおかげです。
武田さん:地域のみなさんや職人さんの思いを知って、いろいろな人の立場で考えられるようになり、視野が広がったのを感じます。そして何より、どんどん笠間が好きになりました。
筒井さん:地域のみなさんの思いを聞くと、心が動くんですよね。地域への愛が育っていく感じでしょうか。
武田さん:一年間でいろいろな体験が出来て、自分がとても変わって、成長できているなと思います。考えているだけでなくて、実際に行くことが大切だとわかるようになり、フットワークが軽くなりました。
――矢尾板俊平学部長が委員を務める「千葉市こども基本条例検討委員会」に参加されて、いかがでしたか。
筒井さん:学校には行きたくないけれど、お兄さんお姉さんには話したいという子どもたちの力になれればと活動に参加しました。正直なところ最初は、大学生の僕らが言うことなんて、突き放されると思ったんです。条例を決めると言っても、結局は大人が決めるのだろうと。でも実際は「子どもや若者の思いは、絶対に必要なことだ」と真剣に耳を傾けてくれたんです。行政の方に受け入れてもらえたと感じて、誤解していたなと思いました。
武田さん:子どもたちが自分の考えを言える場が必要だと思うのですが、子どもの力だけでは難しいですよね。私たち大学生も一緒になって声をあげることで、子どもと大人をつないでいきたいです。
筒井さん:どうせ社会は変わらない、変えるのは無理だと思っている子が多い。でも、言ってみたら変わるかもしれない。声をあげることの大切さを強く感じました。
地域に密着する仕事をしたい
――将来はどんな仕事をしてみたいと考えていますか。
武田さん:地方公務員になって、地域のみなさん全員が自分の地域に誇りを持てるようにサポートしていきたいです。また、地域を好きになれるように、行政の立場から住民のみなさんと交流したいです。
筒井さん:地域に密着する仕事がしたいです。僕は2歳から高校卒業まで水泳をしていてスポーツが大好きです。授業の中で、野球の県民球団がファン感謝祭などを通して、地域振興に役立つ方法を実践的に学びました。将来は、スポーツで地域を活性化させる仕事をやってみたいです。

全国8カ所で開催された「地域創生戦略フォーラム」

淑徳大学地域創生学部では2023年4月の学部開設を記念し、全国各地で「地域創生戦略フォーラム」を開催してきました。岩手県遠野市から始まり、一年間かけて山梨県、和歌山県、福島県、三重県、静岡県小山町、茨城県笠間市をまわりました。今年度の最終回は2月24日、淑徳大学が開学した千葉市で開催しました。フォーラムが果たしてきた役割とは、どんなものでしょうか。
大学と地域社会が協力し合うプラットフォームに
地域創生戦略フォーラムの目的は、全国で地域創生に取り組む仲間たちと知見を共有し、学びを実践につなげていくことです。フォーラムは一方的に意見を伝えるのではなく、対話と協働を重視しました。矢尾板俊平学部長は「私たちが地域のためにできることは何かという問いから出発し、共に考える場を設けたい」と参加者に呼びかけました。地域の活性化に必要な資源と人をつなげていきたいと考えています。

フォーラムでは熱い議論が交わされました
地域創生戦略フォーラムは、大学として地域とのつながりを作り、学生たちが地域社会に関われる基盤となるプラットフォームの役割も果たしています。学生や教員と地域住民が集まり、課題解決に向けた実践的なアプローチを探求することで、地域の発展に役立つことを目指しています。
フォーラムには、地域への熱意をもった企業の方々や一般の方はもちろん、学生も参加しています。最前列でうなずきながら熱心にメモをとる学生の姿は真剣そのもの。当事者として地域の問題をしっかり考えている様子が伝わってきました。

熱心に質問をする大学生の姿も
市民の誇りを高めるためには
千葉市で開催されたフォーラムでは、地元の市民活動家、地域メディア、地域経営プロデューサーなどをパネリストに迎えました。千葉市の誇りとなる地域資源である4つのシンボル「加曽利貝塚」「オオガハス」「千葉氏」「海辺」を軸に、観光集客やシビックプライド(市民の誇りと責任感)をどう醸成していくのか、議論しました。
第一部では、千葉市総合政策局総合政策部の上坊寺貴明・都市アイデンティティ推進課長が、「都市アイデンティティ推進の現状」について講演。4つのシンボルで千葉市らしさをアピールすることで、千葉市を好きになってもらうための取り組みを紹介しました。「現代は内面的な充足感が重要な時代だ」と解説し、未就学児から専門学生まで幅広く、学校教育で取り組むことも大切だと話しました。
また、淑徳大学地域創生学部の地域創生教育研究センターフェローの桜井篤氏が、地域の歴史を物語化して、市民の誇りを高める方法について、具体的な事例をもとに説明しました。「この街に住んでいる自分が好き」という気持ちにさせるためのシビックプライドの醸成が必要だと語りました。
考えるだけでなく、一歩行動を
また、第二部では「千葉市の4つのシンボル活用を考える編集会議」をテーマにパネルディスカッションが行われました。千葉市をもっと好きになるため、「活動のポイントは、考えるだけじゃなくて一歩踏み出して行動してみることです」とNPO法人Aqua Dream Projectの小亀さおり代表理事の意見などがあがりました。
矢尾板学部長は「住んでいる街を好きになるために必要なことは、知識や技術だけではなくて感性をどう育てるか。そのためには実際に触れること。自分なりの感想を持つこと。現場でしか感じられない体験を通じて、自分の中の基準を作ってほしい」と話しました。
予定時間を超えるほど議論は盛り上がり、質疑応答も積極的に手が挙がるなど、地域社会の一員として地域の未来を考える素晴らしい機会になりました。
2023年度は大学と関連が深い全国8カ所で開かれましたが、2024年度以降も、開催地をさらに拡大して継続していく予定です。

