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遺産分割

最終更新日:2022.02.22

【住んでいる家の相続】
そのまま住み続ける方法・
売却せずに遺産分割を行う方法

【住んでいる家の相続】そのまま住み続ける方法・売却せずに遺産分割を行う方法

このコンテンツでわかること

  • ■ 自宅に住み続けられる配偶者居住権の仕組み
  • ■ 住んでいる家を処分せずに遺産分割する方法
  • ■ 住んでいる家を相続する際のトラブルや問題点
  • ■ 住んでいる家を相続する際の注意点

相続が発生したときに、自宅をどうするかでもめてしまうケースがよくあります。「長く住んでいるから今後も住み続けたい」または「売却してお金に換えたい」など、各相続人の要望も様々です。物理的に分割できない財産はトラブルの原因になることが多く、親族同士がもめた結果、配偶者が自宅を出て行く実例もありました。

現在は「配偶者居住権」が使えるため、所有者ではなくても自宅に住み続けることが可能になっています。

今回は配偶者居住権をわかりやすく解説しますが、他にも自宅を手放さずに遺産分割する方法も解説しますので、家の相続に悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

住んでいる家にそのまま住める「配偶者居住権」とは

被相続人の配偶者が住居に困らないよう、「住む権利」として創設された制度が配偶者居住権です。2020年4月開始の制度であり、従来の所有権から居住権を分離させることで、所有者ではなくても自宅に住み続けることが可能になりました。

配偶者居住権の創設前は、配偶者が自宅を相続し、わずかな預貯金を子供が相続する例が多くありました。しかし、配偶者は住む家を確保できる一方で生活資金に困り、子供は取得分の偏りに不満を持ってしまうことが少なくありませんでした。

配偶者居住権はこのような問題を解決できる制度ですが、具体的には次のような活用方法があります。

配偶者居住権の活用例

家が主な相続財産であり、現金や預貯金が少ない場合は、以下のように遺産分割に偏りが出てしまいます。

  • 相続財産:自宅2,000万円、現金500万円

  • 相続人:配偶者と子供1人

この条件で配偶者が自宅、子供が現金を相続すると、子供は「法定相続分 は1,250万円だから不足分の750万円を払ってくれ」と主張する可能性があります。

一方、配偶者居住権を活用すると、法定相続分どおりに遺産分割できます。

  • 配偶者の相続分:自宅の居住権1,000万円、現金250万円

  • 子供の相続分:自宅の所有権1,000万円、現金250万円

自宅の所有者はあくまでも子供ですが、配偶者はそのまま住んでいる家に住み続けることができ、遺産分割の不公平感も解消されることになります。ただし、配偶者は遺言書による指定や遺産分割協議、死因贈与契約等によって居住権を取得しなければなりません。

配偶者短期居住権とは?

遺産分割が決着するまでの間は、配偶者短期居住権を使って自宅に住み続けることも可能です。配偶者居住権と違って自動的に取得する権利であり、相続開始から6カ月間は居住権が保障されます。また、家の相続人は配偶者短期居住権の消滅を申し入れできますが、申し入れ日から6カ月間は住み続けられるので、新たな住居を探す時間も確保できるでしょう。

なお、配偶者居住権は自宅全体を対象とした権利であり、登記も可能ですが、配偶者短期居住権の対象は居住部分だけであり、登記はできません。

住んでいる家を処分せずに遺産分割を行う方法

自宅を相続する際、夫や妻は配偶者居住権によって住み続けられますが、子供には居住権が保障されていません。相続の状況によっては自宅を手放すことにもなりますが、次のような方法を検討すれば、住んでいる家を処分せずに遺産分割できるかもしれません。

現物分割

財産の種類別に相続する方法が現物分割です。配偶者が自宅、長男が株式、長女が預貯金といった分け方であり、実際の相続でよく使われる方法です。

ただし、財産価値が同額ということはほとんどないため、不公平感から相続人同士の争いに発展する可能性もあります。相続財産のアンバランスを解消したい場合は、次の代償分割などを検討するべきでしょう。

代償分割

各自の相続財産が公平になるよう、金銭で調整する方法が代償分割です。

たとえば長男が5,000万円の自宅を相続し、次男が預金1,000万円を相続した場合、4,000万円もの差額が出てしまいます。法定相続分に従う場合はそれぞれ3,000万円ずつになるため、長男が次男に2,000万円支払って不足分を調整します。

家をそのまま残して遺産分割できますが、調整用のお金を用意しなくてはならないため、資力に余裕がなければ実現できない方法です。現物分割、代償分割ともに難しい場合は、次に解説する共有分割も検討してみましょう。

共有分割

不動産の所有権を配偶者2/3、長男1/3などに設定し、権利を共有する方法が共有分割です。どちらも持ち分に応じた権利を主張できますし、自宅を処分する必要もありませんが、将来的にはトラブルの原因になる可能性が高い方法です。

不動産活用や売却にはすべて共有者の同意が必要になるため、考え方の違いからもめてしまうケースがよくあります。また、共有分割の状態で相続が発生すると、子供や孫の世代に所有権が引き継がれてしまうため、ねずみ算式に共有者が増えることになります。売却も活用もできない不動産になる可能性が高いので、安易に選択しないよう注意してください。

換価分割

相続した自宅を売却し、売却代金を相続人同士で分け合う方法が換価分割です。自宅を残すことはできませんが、現金であれば均等に分割できるため、相続争いが起きにくい方法です。売却後の住まいが確保されており、自宅に未練がない場合は検討してもよいでしょう。

【関連記事】遺産分割とは?しない場合のリスクや遺産分割協議の流れをわかりやすく解説

家を相続する流れ

家を相続するときは以下の流れで手続きを進めます。

必要書類の収集には時間がかかるケースが多いので、家の相続手続きは少しでも早めに着手するとよいでしょう。

相続人や財産、遺言書の有無を確認する

家を相続するときは、遺言書の有無や法定相続人、家以外の相続財産を確認してください。

遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があり、遺言書に法的な有効性があれば、遺言どおりに遺産分割しなくてはなりません。

遺言書がないときは遺産分割協議を行いますが、相続人全員の参加が条件になっており、相続財産の全容を把握しておく必要もあります。

法定相続人を調査するときは、被相続人の戸籍謄本を収集してください。

遺産分割協議を行う

被相続人が遺言書を作成していなかったときや、遺言書に記載のない財産があるときは、相続人全員が参加して遺産分割協議を行います。

遺産分割協議では財産の分け方を話し合い、誰がどの財産を相続するか、または財産の取得割合を決定します。

協議成立後は遺産分割協議書を作成しますが、相続人全員の署名捺印がなければ無効になるため、直筆の署名と実印による捺印が必要です。

実印を押印したことの証明として、印鑑証明書も添付してください。

必要書類を集める・作成する

遺言書や遺産分割協議で家の相続人が確定したら、相続手続き用に以下の書類を収集・作成します。

【共通書類】

  • 登記申請書(自分で作成)

  • 不動産の固定資産評価証明書

【遺言書がある場合】

  • 遺言書

  • 被相続人の死亡がわかる戸籍謄本

  • 被相続人の住民票除票または戸籍の附票

  • 家を相続する人の戸籍謄本と住民票

【遺産分割協議を行った場合】

  • 遺産分割協議書(※法定相続分どおりに遺産分割するときは不要)

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本

  • 相続人全員の戸籍謄本と住民票

  • 相続人全員の印鑑証明書(※)

相続する家の手続きをする

家の相続に必要な書類が揃ったら、法務局に提出して相続登記の手続きを行います。

提出先は不動産の住所地を管轄する法務局です。わからないときは法務省法務局の公式ホームページを参照してください。

相続登記は郵送扱いやオンライ申請もできますが、書類の添付漏れなど、軽微なミスはその場で教えてもらえるので、初めての方は窓口提出がよいでしょう。

なお、自分で相続登記の手続きに対応できない方は、司法書士へ依頼することをおすすめします。

家を相続するときにかかる費用

家を相続するときには、以下の費用がかかります。

  • 登記事項証明書:1つの不動産につき600円(窓口申請・窓口交付の場合)

  • 戸籍謄本や住民票などの発行手数料:1通500~700円程度

  • 印鑑証明書:1通300円程度

  • 郵便切手代:金額は場所による(郵送扱いで必要書類を取得、または相続登記を申請する場合)

  • 固定資産評価証明書:1枚300~500円程度

  • 相続税申告を税理士に依頼する場合:手数料は相続財産の0.5~1%程度

  • 相続登記を司法書士に依頼する場合:手数料は3万~10万円程度

専門家の手数料は建物の棟数や土地の筆数、評価額などによって変動します。

家を相続するときにかかる税金

家を相続する場合には、以下の税金がかかるので注意しましょう。

  • 登録免許税

  • 相続税

登録免許税は土地と建物に課税されるものです。「固定資産税評価額×0.4%」でそれぞれの税額を計算し、相続登記の申請時に法務局窓口で支払います。

相続税は遺産総額が以下の基礎控除を超えたときに発生し、控除額を超えた部分に課税されます。

  • 計算式

  • 相続税の基礎控除:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

相続税がかかるときは、相続開始を知った日の翌日から10カ月以内に相続税申告を済ませるようにしましょう。

申告期限を過ぎると、延滞税などの追徴課税があるので注意しましょう。

住んでいる家を相続する際のトラブル・問題点

不要な相続財産であれば処分しても構いませんが、住んでいる家を相続する際には様々なトラブルが発生します。家族の心情的な問題や税金問題も発生するので、次のような点に気を付けておきましょう。

相続税が発生する可能性が高い

地価の高いエリアに自宅がある場合は、財産が自宅だけでも相続税がかかるかもしれません。前述したように、相続税には基礎控除がありますが、自宅の評価額が基礎控除を超えていれば相続税を納めることになります。

  • 計算式

  • 相続税の基礎控除:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

相続人が1人の場合は3,600万円、2人であれば4,200万円になり、かなりの額を相続財産から控除できますが、都市部では土地だけで1億円を超える例もあります。ただし、土地や相続人が一定要件を満たしていれば、小規模宅地等の特例によって評価額は8割減になります。要件に該当するかどうか不明な場合は、税理士に相談してみるとよいでしょう。

将来は空き家になる可能性が高い

自宅を相続して住み続けても、いずれ相続人も死亡するため、将来的には空き家問題が発生します。すでに子供がマイホームを購入していれば、生まれ育った実家が不要になることもあるでしょう。すぐに売却できなければ子孫が固定資産税などの税金を払い続けることになるため、次世代の相続も考慮しておく必要があります。

売却時にもめてしまう可能性がある

相続した自宅を売却する場合、他の相続人から「待った」がかかるかもしれません。「思い入れのある自宅を継いでくれるから、自分は少ない取り分で我慢した」などの不満が出る可能性もあります。

また、売却益の分割を要求される場合もあるので、自宅の売却については他の相続人を交えて検討するとよいでしょう。

住んでいる家を相続する際の注意点

住んでいる家の相続をスムーズに行うには、次のような方法があります。確実に相続できる方法や、維持できるかどうかを考慮して忘れないように注意しておくとよいでしょう。

遺言書を作成してもらう

遺言書で指定されると、確実に自宅を取得できます。法的な効力が強く遺産分割協議も必要ないため、誰が自宅を相続するかでもめることもなくなるでしょう。ただし、各相続人には遺留分があるため、法定相続分の1/2や1/3を渡せるよう準備しておく必要があります。

【関連記事】遺留分の割合・計算方法【対象者と遺留分侵害額請求権の手続き方法も解説】

自宅相続で発生する税金や費用を把握する

住んでいる家の相続には相続税がかかることもあります。相続した家を取得するときには「固定資産税評価額×0.4%」で計算される登録免許税も発生します。また、土地・建物を所有している間は固定資産税や都市計画税が発生し、建物の築年数によっては高額な維持費もかかります。屋根、外壁、床下、水廻りの改修費用は特に高いので、ある程度の維持コストを確保しておかなければなりません。

相続後は早めに登記を済ませる

今のところ相続登記に期限はありませんが、2024年には義務化される予定です。不動産の相続後、3年以内に登記しなかった場合は10万円以下の罰金も予定されているので、相続後はできるだけ早めに登記手続きを済ませるようにしましょう。

【関連記事】未登記建物の相続手続き・注意点|放置しておくリスクとは?

住んでいる家を相続するときによくある質問

住んでいる家を相続するときによくある質問とその回答をご紹介します。

住んでいる家を相続したくないときの対処法は?

相続開始前から住んでいる家でも、相続税や固定資産税の負担が重いなど、何らかの事情で相続したくない場合があるでしょう。

住んでいる家を相続したくないときは、以下の対処法を検討してみましょう。

  • 家の売却

  • 相続放棄

家を売却する場合、一度相続人名義に変更するので、相続登記は必ず済ませてください。

また、相続放棄は「相続開始日から3カ月以内」が期限になっており、家庭裁判所に申述しなければなりません。

相続放棄の期限に間に合わない、またはすでに期限を過ぎているときは、すぐにでも弁護士に相談してください。

住んでいる家を相続したときの名義変更はいつまで?

住んでいる家を相続しても、名義変更の期限は特に定められていません。

ただし、2024年4月1日から相続登記が義務化されるため、家の相続人が確定してから3年以内に相続登記しなかった場合、10万円以下の過料になる恐れがあります。

また、相続登記の義務化は遡及適用されるので、法改正以前に発生した相続登記が放置されていた場合も、過料の対象になる可能性があるでしょう。

相続登記に対応できないときは、早めに司法書士へ相談することをおすすめします。

まとめ

住んでいる家の相続はトラブルが起きやすいため、「誰が相続すると一番よいか」を家族で話し合っておく必要があります。

ただし、利害関係者だけの話し合いはまとまらないケースが多く、相続開始前からもめてしまう可能性もあるため、専門家の関与も検討しておくべきでしょう。相続の専門家であれば現実的な着地点を見つけてくれますし、相続税などの税額計算も依頼できます。また、相続争いの防止には遺言書も効果的ですが、書き方を誤ると無効になるので、専門家に相談しながら作成することをおすすめします。

相続人同士の自宅争奪戦が起きないよう、早めに弁護士や税理士に相談するとよいでしょう。

税理士 桑原 弾
  • この記事の監修者

  • 税理士 桑原 弾

昭和55年生まれ、兵庫県出身。
大学卒業後、税務署に就職し国税専門官として税務調査に従事。税理士としても10年を超えるキャリアを積み、現在は「相続に精通した知識」と「元国税調査官としての経験」の両輪を活かして相続税申告を実践している。

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