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相続税

最終更新日:2025.05.30

続税の実効税率とは?
税負担を抑えるために
有効な生前贈与額を決める方法

相続税の実効税率とは?税負担を抑えるために有効な生前贈与額を決める方法

このコンテンツでわかること

  • ■ 相続税の実効税率の計算方法
  • ■ 生前贈与額の検討に実効税率を使う理由
  • ■ 実効税率で最適な生前贈与額を決める方法

相続税対策の一つに、被相続人の財産を別の人に「生前贈与」する方法があります。

生前贈与によって、被相続人の財産を減らしておくことで、亡くなった際の遺産が少なくなり、相続税の金額も減ります。

ここで多くの方が気にされるのが、「毎年いくらずつ贈与するのが、税負担を軽くするためにもっとも有効なのか」ということだと思います。

最適な贈与額を見極めるために重要になるのが、「相続税の実効税率」という考え方です。

今回は「相続税の実効税率」とは何か、それを使って「税負担対策に有効な生前贈与額」をどのように決めるのかを解説します。

なお、相続税対策として行う生前贈与については、下記の記事でも解説していますのでご参照ください。

関連記事
相続税の節税目的で使える生前贈与6つ【相続税対策をするときの注意点と共に解説】

生前贈与額の判断材料になる「相続税の実効税率」とは?

相続税の実効税率」とは、簡単にいうと「相続する財産全体に対して、負担する相続税はどれほどの割合になるのか」を示すものです。

相続税を計算するときには、「相続税の速算表」(出典:相続税の税率|国税庁)に書かれた税率を使いますが、単純に「財産全体にその税率がかかる」わけではありません。

これは、相続税の基礎控除(一定額まで税金がかからない枠)があったり、税率が財産の額に応じて段階的に上がったりするためです。

たとえば、相続人が「被相続人の子供1人」で、相続税の対象となる遺産が「1億円」の場合、下記のように税額を求めます。

画像

相続税の速算表では、このような金額の幅でそれぞれ計算する手間を省略できるように控除額が記載されています。

以上のことから、「自分が相続した財産の全体に対して、何パーセントの相続税がかかるのか?」という実際の税負担の度合いを知るためには、「実効税率」を計算しなければなりません。

そして、この実効税率が「どれほどの金額を生前贈与するのが効果的か」を判断するための重要な材料になります。

ちなみに、「実効税率」に対して、前述の相続税の速算表に載っている税率を「限界税率」といいます。

それでは、実効税率を具体的にどのように計算するのかを見ていきましょう。

相続税の実効税率の計算方法

相続税の実効税率は、下記の式で算出します。

  • 計算式

  • 相続税の実効税率 = 相続税の総額 ÷ 課税対象となる遺産総額

ここからは、具体的に下記のケースでの相続税の実効税率を計算していきます。

  • 課税対象の遺産総額:3億円

  • 相続人:被相続人(父親)の長男・次男の2人

ステップ1. 相続税の総額を計算する

まずは、今回のケースでの「相続税の総額」を求めます。

計算の流れ 計算式
相続税の基礎控除額を計算する 3,000万円 +(600万円 × 2人) = 4,200万円
課税遺産総額を計算する 3億円 - 4,200万円 = 2億5,800万円
法定相続分どおりに取得したものと仮定して、各人の取得金額を出す 2億5,800万円 × 1/2 = 1億2,900万円(子供1人あたり)
各人の税額を計算する 1億2,900万円 × 40% - 1,700万円 = 3,460万円(子供1人あたり)
相続税の総額を計算する 3,460万円 + 3,460万円 = 6,920万円

相続税の計算方法の詳細は、下記のコンテンツをご参照ください。

関連記事
相続税の計算方法|課税対象となる財産や適用税率を事例をもとに解説

ステップ2. 相続税の実効税率を計算する

続いて、「相続税の総額」を「課税対象の遺産総額」で割って、「相続税の実効税率」を算出します。

  • 計算式

  • 6,920万円 ÷ 3億円 ≒ 23.1%

以上によって、遺産3億円全体に対する実効税率(実際の税負担割合)は「約 23.1%」だとわかりました。

生前贈与額の検討に実効税率を使う理由

生前贈与額の検討に実効税率を使うのは、贈与したい財産について「贈与する場合の税負担」と「贈与せずに相続で渡す場合の税負担」を、より正確に比べるためです。

たとえば、先ほどの「課税対象の遺産総額が3億円、相続人は被相続人の子供2人」のケースで、父親から30歳の長男に「500万円」を生前贈与して、相続税の負担を軽減したいと考えているとしましょう。

まず、父親から30歳の長男に「500万円」贈与したときにかかる贈与税は、「48万5,000円」です。計算方法の詳細は、下記のコンテンツをご参照ください。

関連記事
生前贈与500万円に贈与税はいくらかかる?計算方法や注意点

このときの「贈与税」の実効税率(贈与額500万円に対する税金の負担割合)は、「48万5,000円 ÷ 500万円 =9.7%」です。

次に、「贈与せずに相続で渡す場合」の税負担を考えます。

前の項目で計算したとおり、このケースの相続税の実効税率は「約 23.1%」でした。

ここで贈与税と相続税の実効税率を比較すると、贈与税のほうが低いとわかります。

  実効税率
贈与税 9.7%
相続税 23.1%

これは、「今回500万円を贈与するときの税負担率」が、「もし相続で財産全体を渡すことになった場合の平均的な税負担率」よりも低いことを意味します。

以上の比較結果から、今回のケースでは「500万円」は生前贈与した方が、将来相続で渡すよりもトータルの税負担を抑えられる可能性があるといえます。

このように、実効税率を計算すると、贈与する予定の金額について「本当に生前贈与したほうが、相続税対策になるか?」を判断しやすくなるのがメリットです。

実効税率で生前贈与額を決める方法

ここでは、生前贈与を検討されている方が「どれほどの金額まで贈与するのが有効か」というボーダーラインを見つけるための実践的な手順を、次の三つのステップに分けてお伝えします。

  1. 将来の「相続税の実効税率」を試算する
  2. 贈与する場合の「贈与税の実効税率」を計算する
  3. 二つの実効税率を比較して判断する

ステップ1. 将来の「相続税の実効税率」を試算する

まず、ご自身の財産状況で、将来相続が発生した場合の「相続税の実効税率」を試算します。

現在の財産額や法定相続人の構成などから、相続税額をシミュレーションして、実効税率を求めてください。

ここでは、先ほどのケースを引き継ぎ、相続税の実効税率は「約 23.1%」として話を進めます。

ステップ2. 贈与する場合の「贈与税の実効税率」を計算する

続いて、いくつかの贈与額パターンで「贈与税の実効税率」を計算します。

父親から18歳以上の子供へ、年間「300万円・500万円・1,000万円・1,350万円・1,400万円」を贈与した場合の贈与税額と実効税率は、以下のとおりです。

  贈与税額 実効税率
300万円贈与 (300万円 - 110万円)× 10% = 19万円 19万円 ÷ 300万円 ≒ 6.3%
500万円贈与 (500万円 - 110万円)× 15% - 10万円 = 48万5,000円 48万5,000円 ÷ 500万円 = 9.7%
1,000万円贈与 (1,000万円 - 110万円)× 30% - 90万円 = 177万円 177万円 ÷ 1,000万円 = 17.7%
1,350万円贈与 (1,350万円 - 110万円)× 40% - 190万円 = 306万円 306万円 ÷ 1,350万円 ≒ 22.7%
1,400万円贈与 (1,400万円 - 110万円)× 40% - 190万円 = 326万円 326万円 ÷ 1,400万円 ≒ 23.3%

なお、上記の計算をする際には、下記の「贈与税の実効税率の早見表」を利用するのもおすすめです。

▼特例贈与(18歳以上の人が直系尊属から贈与を受ける場合)
贈与額(万円) 贈与税額(万円) 実効税率(%)
~110 0 0
200 9 4.5
300 19 6.3
400 34 8.4
500 49 9.7
600 68 11.3
700 88 12.6
800 117 14.6
900 147 16.3
1000 177 17.7
1100 207 18.8
1200 246 20.5
1300 286 22
1400 326 23.3
1500 366 24.4
1600 406 25.4
1700 451 26.5
1800 496 27.5
1900 541 28.4
2000 586 29.3
▼一般贈与(特例贈与以外の場合)
贈与額(万円) 贈与税額(万円) 実効税率(%)
~110 0 0
200 9 4.5
300 19 6.3
400 34 8.4
500 53 10.6
600 82 13.7
700 112 16
800 151 18.9
900 191 21.2
1000 231 23.1
1100 271 24.6
1200 316 26.3
1300 361 27.7
1400 406 29
1500 451 30
1600 496 31
1700 545 32.1
1800 595 33.1
1900 645 33.9
2000 695 34.8

※二つの表とも、贈与税額は1万円未満切り上げで表示

ステップ3. 二つの実効税率を比較して判断する

最後に、ステップ1で試算した「相続税の実効税率」と、ステップ2で計算した「各贈与額に対する贈与税の実効税率」を比較します。

今回の例では、相続税の実効税率は「約 23.1%」だったので、これと先ほどの贈与税の実効税率の表を見比べてみましょう。

年間の贈与額 贈与税の実効税率 相続税実効税率(23.1%)との比較
300万円 約 6.3% 贈与税 < 相続税 (有効)
500万円 9.7% 贈与税 < 相続税 (有効)
1,000万円 17.7% 贈与税 < 相続税 (有効)
1,350万円 約 22.7% 贈与税 < 相続税 (有効)
1,400万円 約 23.3% 贈与税 > 相続税

贈与額が1,350万円の場合、贈与税の実効税率は約 22.7%となり、相続税の実効税率23.1%を下回っています。

つまり、1,350万円までは贈与税を納めてでも生前贈与を進めるほうが、将来相続で渡すよりも税負担が軽くなる可能性があると判断できます。

一方、贈与額が1,400万円になると、贈与税の実効税率は約 23.3%です。

これは相続税の実効税率を上回っており、このラインを超えると「生前贈与による節税効果」よりも「贈与税の負担」のほうが大きくなる可能性があるのでご注意ください。

以上のことから、今回のケースでは「年間1,350万円」あたりが、贈与税を払って積極的に生前贈与を検討する価値のあるボーダーラインだといえそうです。

もちろん、「年間110万円の基礎控除以下の贈与」であれば、贈与税はかからずに「実効税率は0%」のため、有効な選択肢となります。

ただし、財産が多い方や高齢の方にとっては、年間110万円ずつの生前贈与では十分な対策にならない場合もあるため、「実効税率」の比較が重要になります。

このように実効税率を比較することで、ご自身の状況に合わせた贈与額の目安を見つけることが可能です。

生前贈与額の検討は専門家の意見も聞こう!

今回は「相続税の実効税率」を使って、税負担を軽くするために効果的な生前贈与額の「目安」を見つける方法をお伝えしました。

「贈与税の実効税率」と「相続税の実効税率」を比較することは、「どのくらいの金額までなら、贈与税を払って生前贈与を進めるメリットがありそうか」というボーダーラインを知る上での判断材料になります。

ただし、「実効税率の比較だけで、金額が決まるわけではない」という点には注意が必要です。その理由としては、以下のような点が挙げられます。

理由 概要
相続税の実効税率は変動する 生前贈与によって相続財産が減ると、将来実際に相続が起きたときの相続税の実効税率も変動する
生前贈与加算ルールも考慮しなければならない 亡くなる前3年以内(※)に行われた暦年贈与は、相続財産に持ち戻して相続税を計算するルールがあり、この影響も考慮する必要がある
ほかの制度との兼ね合いもある 贈与税には暦年課税のほかに「相続時精算課税制度」という選択肢もあり、どちらの制度を利用するかによって、対策は変わる

※2024年1月1日以降の贈与より、持ち戻し期間は3年から7年に段階的に延長

以上のことを踏まえながら、相続税対策のために生前贈与をするには、税理士からアドバイスを受けることをおすすめします。

相続専門の税理士は、顧客の状況を丁寧にヒアリングしたうえで、最新の税制に基づいたオーダーメイドの相続・贈与プランを提案してくれることでしょう。

初回の相談は無料の税理士事務所もあるため、お気軽に足を運んでみてください。

税理士 古尾谷 裕昭
  • この記事の監修者

  • 税理士 古尾谷 裕昭

VSG相続税理士法人
代表 税理士

2006年に古尾谷会計事務所開業。現在は、相続を専門とするVSG相続税理士法人の代表税理士。
税理士・司法書士・弁護士・行政書士・社会保険労務士・不動産会社が在籍し、相続税申告のみならず、相続登記、相続争い、遺言書作成、信託、資料収集から不動産売却・コンサルティングまで様々な業務に対応。年間申告件数3,000件以上。

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【出典元】
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