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相続税

最終更新日:2022.06.30

金にはいくら相続税がかかる?
土地との税額の比較や
生前贈与の注意点を紹介

現金にはいくら相続税がかかる?土地との税額の比較や生前贈与の注意点を紹介

このコンテンツでわかること

  • ■ 現金にかかる相続税の計算方法がわかる
  • ■ 現金にかかる相続税の節税方法がわかる
  • ■ 現金を生前贈与するときの注意点がわかる

日本銀行が公表する2022年度の資金循環統計(第3四半期)によると、家計部門の金融資産計は2,005兆円になっており、そのうち1,100兆円が現金・預金です。このことから、資産の割合は徐々に現金比率が高まっていることが読み取れます。長引く低金利から「預貯金にメリットなし」と考える方も多いようですが、現金資産のまま相続が発生した場合、相続税の扱いはどうなるのでしょうか?また、相続税対策として現金のまま保有するケースもあるようですが、おすすめはできません。

今回は現金を相続した人の参考になるよう、現金にかかる相続税の計算方法や、節税対策をわかりやすく解説します。「現金相続にメリットはあるの?」と考えている方は、ぜひ参考にしてください。

資金循環統計(日本銀行)

現金にかかる相続税計算方法

相続税は各財産の時価をベースに計算しますが、現金は額面どおり、預貯金は残高がそのまま相続税評価額になります。いずれも相続税の課税対象となり、評価額を下げる特例措置もないため、金額が大きいほど相続税も高くなってしまいます。

遺産分割しやすく、使い勝手のよい財産である一方、節税効果は期待できませんが、実際に相続税を計算するといくらになるでしょうか?

相続税の基礎控除を計算

相続税は基礎控除を超えた部分にかかるので、まず基礎控除の計算式から解説します。

  • 計算式

  • 基礎控除の計算式:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

では、法定相続人が3人だったときの基礎控除を計算してみましょう。

  • 計算式

  • 基礎控除:3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円

ひとまず基礎控除額がわかったので、次に課税遺産総額と相続税を計算します。

課税遺産総額から相続税を計算

遺産総額が現金1億円、法定相続人が3人(基礎控除は4,800万円)であれば、課税遺産総額は以下のようになります。

  • 計算式

  • 課税遺産総額:1億円-4,800万円=5,200万円

では次に、「相続税の速算表」を使って相続税の総額を計算します。

  • 計算式

  • 相続税の総額:5,200万円×30%-控除額700万円=860万円

今回は相続税の総額までを計算しましたが、最終的には各相続人の取得分に応じて860万円を按分します。なお、相続税の速算表は国税庁ホームページを参照してください。

相続税の速算表(国税庁)

現金を相続すると税金が高くなる

現金を相続した場合、税額軽減などの特例がないため、額面全体に相続税がかかります。一方、土地の相続税評価額は実勢価格(実際に売買されている価格)の80%程度になるため、購入した時点で課税価格は20%程度減額されることになります。

では、現金1億円の相続と、その現金で1億円の土地を購入した場合、相続税がいくらになるのか比較計算してみましょう。

現金を相続した場合の相続税

現金相続の一例として、現金1億円を1人で相続したときの相続税を計算してみます。先ほど解説した計算方法に従って、まず相続税の基礎控除を計算してみましょう。

  • 計算式

  • 相続税の基礎控除:3,000万円+(600万円×1人)=3,600万円

次に相続税の課税価格(税金がかかる部分の価格)を計算します。

  • 計算式

  • 相続税の課税価格:1億円-3,600万円=6,400万円

最後に税率を乗じて相続税を計算します。

  • 計算式

  • 現金1億円にかかる相続税:6,400万円×税率30%-控除額700万円=1,220万円

では次に、現金1億円を使って土地を購入し、資産の種類が変わった場合(現金から土地)の相続税を計算してみましょう。

土地を相続した場合の相続税

土地の相続税評価額は実勢価格の80%程度になるため、1億円で購入した土地でも8,000万円まで評価額が下がります。

では、8,000万円にかかる相続税を手順どおり(相続人は1人)に計算してみましょう。

  • 計算式

  • 相続税の基礎控除:3,000万円+(600万円×1人)=3,600万円

  • 計算式

  • 土地の課税価格:8,000万円-3,600万円=4,400万円

  • 計算式

  • 土地1億円にかかる相続税:4,400万円×税率20%-控除額200万円=680万円

現金相続の場合の課税額は1,220万円だったので、相続税は540万円(1,220万円-680万円)も低くなっています。

また、購入した土地を居住用宅地(自宅の敷地)にすると小規模宅地等の特例を適用できるので、330㎡までの面積は80%減額できます。土地面積が330㎡(約100坪)以下であれば全体が小規模宅地等の特例の対象となり、相続税評価額を以下のように引き下げられます。

  • 計算式

  • 小規模宅地等の特例を適用した相続税評価額:8,000万円×(1-0.8)=1,600万円

1,600万円は相続税の基礎控除以下となるため、相続税はかかりません。相続財産に現金や預貯金が多い方は、資産の組み換えを検討してみるべきでしょう。

現金にかかる相続税を節税する方法

現金には税負担の軽減措置がないため、現金を多く残さないことがもっとも有効な相続税対策です。

年間110万円以下で贈与する

贈与税には年間110万円までの基礎控除があるため、1年間の贈与額が110万円以内であれば贈与税はかからず、申告も必要ありません。110万円の贈与を10年間繰り返せば、子供や孫に現金を承継しつつ、相続財産は1,100万円減少します。

このような贈与方法を「暦年贈与」といい、ある程度の期間は必要ですが、コストをかけずに高額な財産を移転できます。

住宅取得等資金の贈与の特例を使う

子供や孫の住宅取得資金を親や祖父母が贈与した場合、最大1,000万円までの贈与額が非課税になる制度です。特例の利用期間は2023年12月31日までとなっており、贈与資金のすべてを住宅取得に使う必要があるなど、いくつかの条件も設定されています。また、受贈者(贈与される人)の条件は18歳以上の子供や孫(民法の成年年齢引き下げに伴い、2022年4月1日より変更)となります。

住宅の種類や受贈者の所得にも条件があるため、活用するときは相続専門の税理士に相談しておくとよいでしょう。

教育資金の一括贈与の特例を使う

教育資金として子供や孫に贈与するとき、受贈者1人につき1,500万円まで非課税贈与できる制度です。祖父母や親が直接現金を渡すわけではなく、金融機関の専用口座に贈与資金を入金し、受贈者が提出する領収書と引き換えに預金が払い出される仕組みです。

入学金や授業料、給食費や学用品の購入費など、学校へ支払う費用が非課税対象になりますが、スポーツ教室や習い事にも500万円までの非課税枠があります。ただし、2026年3月31日までが利用期限となっており、相続発生時に管理残高があれば相続税の課税対象になります。

結婚・子育て資金の一括贈与の特例を使う

教育資金贈与の場合と同じく、2025年3月31日までに結婚費用や子育て資金を贈与した場合、最大1,000万円までの贈与が非課税になります。祖父母から孫、親から子供への贈与が対象となり、金融機関の専用口座に贈与資金を入金して、領収書と引き換えに受贈者が現金を引き出す仕組みです。

贈与資金の配分は結婚費用が300万円程度、残り700万円程度を育児費用に使えるので、資金不足に悩む子供や孫には大きな助けになるでしょう。

夫婦間贈与の特例を使う

おしどり贈与とも呼ばれる特例ですが、婚姻期間が20年以上であれば、居住用不動産の夫婦間贈与は2,000万円までが非課税になります。居住用不動産の購入資金にも使えるため、現金2,000万円の贈与でも配偶者に贈与税はかかりません。

ただし、被相続人の配偶者は「配偶者の税額軽減」が使えるため、1億6,000万円までの財産は非課税相続できます。

教育費や生活費として贈与する

子供や孫の教育費や生活費を負担する場合は、扶養義務の範囲内であればもともと非課税扱いです。必要に応じて贈与しておけば相続財産も減りますが、教育費や生活費の範囲を超える金額であれば、贈与税がかかるかもしれないので注意しましょう。

相続時精算課税制度を使う

まとまった現金を贈与したいときは、「相続時精算課税制度」も検討してみましょう。60歳以上の親や祖父母から、18歳以上の子供や孫へ贈与する場合、相続時精算課税制度を使うと2,500万円まで非課税贈与できます。2,500万円を超えた部分も一律20%の贈与税率なので、贈与額が高額になるほど節税効果が高くなります。

ただし、2,500万円までの贈与財産は相続財産に加算するため、もともと相続財産が基礎控除内に収まる場合は、意味のない相続税対策になってしまう可能性があります。

総資産をよく計算してから生前贈与を計画することをおすすめします。

現金を生前贈与するときの注意点

相続税対策として現金を生前贈与する場合、贈与の事実を第三者にも証明しなくてはなりません。また、非課税贈与したつもりでも、結果的に贈与税がかかってしまうケースもあるため、次の項目には十分に注意してください。

贈与が成立する要件を満たしておく

「あげる」「もらう」の意思表示があれば、口頭でも贈与契約は成立します。ただし、法にのっとって行われていることを示すために贈与契約書を作成し、贈与者と受贈者の間で取り交わしてきましょう。

贈与の証拠を残しておく

税務署から贈与として認められなかった場合、贈与財産はそのまま相続財産になるため、結果的に相続税の課税対象になってしまいます。証拠のない贈与は脱税の疑いもかけられやすいので、現金は預金口座に入金し、受贈者の口座へ振り込みするとよいでしょう。

生前贈与加算に注意する

相続開始前3年以内の贈与であれば、贈与財産は相続財産にカウントされます(生前贈与加算)。非課税贈与したつもりでも、相続税がかかってしまう可能性があるので、贈与者の年齢や健康状態も考慮してください。

定期金の贈与に注意する

年間110万円までの暦年贈与を繰り返すときは、贈与額と贈与日に注意してください。毎年同じ日に同じ金額を贈与した場合、最初からまとまった資金(定期金)を贈与するはずだったとみなされ、贈与税が課税される可能性があります。

名義預金に注意する

子供や孫名義の預金口座へ現金を入金しても、本人(受贈者)が自由に使えなければ「名義預金」とみなされる可能性があります。通帳や印鑑を贈与者が管理しており、受贈者が自由に使えない、または口座の存在を知らされていないようなケースでは、贈与者本人の財産と判定されます。

遺産分割しなければ使えない

現金も遺産分割の対象であるため、遺産分割協議が成立するまでは自由に使えません。「このくらいは確実にもらえるはずだ」という見込みがあっても、勝手に使い込まないよう注意してください。

遺産分割協議が終了するまでは、限られた用途であれば使うことができますが、その範囲は狭く設定されています。遺産から支払いたい場合には、使っていい用途かどうかを税理士などに確認してからにするよう注意しましょう。

まとめ

相続財産としての現金は均等配分しやすいため、遺産分割協議がまとまりやすく、相続争いは起きにくいかもしれません。ただし、評価額の引き下げはできないので、金額によっては半分近くが納税資金になってしまうケースもあります。現在の税制で相続税対策を考える場合、生前贈与がもっとも有効なので、基礎控除内の暦年贈与や、特例を使った贈与はぜひ検討しておくべきでしょう。

また、生前贈与は「いつ・誰に・いくらあげるか」も重要になるため、相続に強い税理士のアドバイスも参考にしてください。

税理士 古尾谷 裕昭
  • この記事の監修者

  • 税理士 古尾谷 裕昭

VSG相続税理士法人
代表 税理士

2006年に古尾谷会計事務所開業。現在は、相続を専門とするVSG相続税理士法人の代表税理士。
税理士・司法書士・弁護士・行政書士・社会保険労務士・不動産会社が在籍し、相続税申告のみならず、相続登記、相続争い、遺言書作成、信託、資料収集から不動産売却・コンサルティングまで様々な業務に対応。年間申告件数3,000件以上。

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【出典元】
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