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東京都医師会「コロナ時代を生きる」 心配し過ぎる、お父さん・お母さんが心配です
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現在、子どもの定期ワクチンの接種や健康診断などの受診を控えている親御さんが増えているといいます。しかし、それはとても危険なこと、という意見も。今回は東京都医師会の川上一恵理事に、今、小児科医が伝えたいことを伺いました。

もっと小児科医を頼って!

子育て世代の親御さん、ぜひ読んでください(少し長いですが)。

東京都医師会 川上一恵理事 (小児科医 かずえキッズクリニック院長)

小児科医に期待される役割

子どもはさまざまな人と触れあって成長します。例えば、昔は地域が子どもを育てる文化がありました。近所のさまざまな人から話しかけられたり、悪いことをすると、ときには親の代わりに居合わせた大人が叱ったりすることもありました。しかし今では、子どもに声をかけること自体を躊躇(ちゅうちょ)する人が増えています。また、最近は自分の子どもを産んで抱いた瞬間、それが初めての乳幼児との出会い、という人がとても多いです。子どもたち自体は大きく変わっていないけれど、育てる環境や親たちの状況が変わってきてしまっているのです。

──先生のクリニックのホームページを見ると、いろいろな育児アドバイスが書いてあります。

抱き方も分からず、泣き叫ぶ子どもをどう扱っていいかも分からなくて、本やネットに「泣いたらおっぱい」と書いてあるから、ひたすらおっぱいを与え続け、自分は眠れなくて苦しくて、だんだん気持ちが落ち込んできてしまう。祖父母の世代も離れて暮らしているから、ちょっとしたことでもなかなか教えてもらえない。近所に教えてくれる人もいない。そして悪循環に陥るのです。お母さんたちが、子どもとどのように関わり、育てていけばよいのか、育児指導的な面を伝えるのも、小児科医に期待される役割となってきている感じがしています。

新型コロナウイルスが、
子どもたちから奪ったもの

──新型コロナウイルスの感染拡大で、学校や保育園・幼稚園での活動も制限されました。

新型コロナについては、子どもは感染しても発症しないか、発症しても軽症であるケースが比較的多いようです。また、子どもだけのクラスター報告は全体の中では少ないです。それなのに、夏のプール、運動会、修学旅行などの学校行事が行われませんでした。それに、感染への不安のためか、子どもたちの表情が乏しくなってきています。私は、地域の保育園、幼稚園や小学校の園医、学校医を務めていますが、感染を防ぎながら子どもたちに行事をやらせてあげるにはどうしたらよいかを園長、校長先生と一緒に考えています。予防のための知恵は、いくらでもあると思うのです。

──未就学の子どもにとっても、外に出て人と会ったり、遊んだりすることは情操教育の面でも非常に大切だと思いますが。

そうですね。来院した親御さんたちには「外に出て、子どものストレスを発散させてあげてください」「もし心配なら、雑巾を持って行って遊具を拭いてから遊ばせれば大丈夫」などとアドバイスをしていました。子どものストレスを解消させることは、お母さんのストレス解消にも役立ちます。子どもにも、お母さんにも、我々小児科医や、感染症の知識がある人たちが、本当に危ないことは何か、どのように対処したらよいかといった情報を伝えてあげれば、この時代でも、子どもたちの生活を豊かにすることができるでしょう。

伝え方に気をつける、
大人の言葉ひとつで
子どもの状態は変わります

私が保育園へ行くたびに保育士さんたちにお願いしているのが「手を洗わないとコロナにかかっちゃうよ」という言い方はしないように、ということです。その言い方は子どもを恐怖に陥れます。同じことを言うにしても「手をきちんと洗ったから、病気にならないね」というように伝えてあげる。すると、子どもの気持ちは安定します。小児科医の研修では、大人の言葉ひとつで子どもの状態はすごく左右されるので、子どもの心を安定せるための大人のふるまい、声のかけ方はもちろん、子どもをやる気にさせる接し方も組まれています。

──同じことを伝えるにしても、声のかけ方ひとつで子どもの反応はだいぶ違いますよね。

お母さんたちは真剣に考えれば考えるほど、心配のあまり怖い言い方になりがちですが、大人がポジティブな言い方をすることで、子どももポジティブな気持ちになれるのです。子どもの自尊感情を高めてあげられるように、診察では治療だけではなく、お母さんたちによくアドバイスをしています。

定期ワクチン控えのリスクは、
とても大きい

今回の新型コロナウイルスの感染拡大で、院内感染を恐れて子どもの定期ワクチン接種に来ない親御さんが増えました。でも、子どもにとっては、予防接種を受けないことで感染症にかかることの方が怖いのです。定期接種、特に最初に接種するワクチンにはヒブ、肺炎球菌、それから4種混合ワクチンなどがありますが、これらのワクチンによって予防される疾患は、乳児がかかると命に関わることもあるのです。

──定期ワクチンを打たないことによって感染する可能性がある病気も、当然気をつけてほしい、ということですね。

その通りです。ワクチンによって重症患者数が減っているのですが、今の親御さんはワクチンがなかった時代のことを知りませんから、子どもたちがワクチンで守られていることを理解していない方が多いです。今の子どもたちの健やかな日々は、ワクチンから与えられた日々でもあるのです。決して、定期接種を軽んじないでください。

また、ワクチン接種のために来院した際に、「この子の発達状況は、月齢としてちゃんとしているか」といったことも小児科医は自然と観察しています。実は、私たち小児科医は病気だけを診ているわけではないのです。来院した親子の様子も見ています。

──だから、「よくアドバイスをする」のですね。

親御さんが不安そうな様子の時は、診察に加えて「何か気になることはありますか?」と聞いてみます。そして、「こんな風にすると上手くいきますよ」といったアドバイスもする。そういった親御さんへのケアも、私たち小児科医の仕事です。子どもの笑顔は親をハッピーにしますし、親にゆとりがあると子どもは落ち着きます。それこそが、小児科医が一番目指しているところだと思いますので、そういった意味でも、今回の「受診控え」は、私たちにとってはとても辛いことです。

「病院は危険」という
思い込みを持っていませんか?

─それでも、病院に行くのは心配、というところもあります。

今の小児科は、それぞれがいろんな感染対策を講じています。完全予約制にしたり、入り口や診察室を分けたり、多くの工夫をしています。先ほど、「子どもは新型コロナウイルスに感染しても発症しないか、発症しても軽症であるケースが比較的多い」と言いましたが、当然リスクはゼロに近いほうがよい。もちろん、高齢者や糖尿病などの基礎疾患をお持ちの方がいるご家庭では、より注意する必要があります。新型コロナウイルスに感染しているけれど無症状の子どもを介して、発症したり重症化したりする可能性も否めないからです。ですから、自分が行こうとしている医療機関がどういう体制で診療しているかを調べたうえで、納得、安心して来院してください。

小児科は、
子どもだけの病院ではない

今、育児をされている親御さんに特に伝えたいのが、「遠慮せずに、私たち小児科医を頼って」ということです。東京都医師会では都民の皆様に「かかりつけ医を持ちましょう」と言っていますが、子どもにも、ぜひ、かかりつけの小児科医を持ってほしいです。小児科医は病気の診断・治療をするだけではなく、医療、福祉、教育などいろいろな分野と連携して親御さんの育児における困りごとを解消に導くこともできます。実際、私も行政や保育園と連携しながら親子を支援することがあります。だから、困ったことをとにかく何でも話してほしい。小児科医は、子どものみならず、育児の悩みにおける親御さんたちのかかりつけ医でもあるのですから、遠慮なく、頼ってほしいと思っています。

東京都医師会 川上一恵理事 (小児科医 かずえキッズクリニック院長)

時々、「なぜ小児科医を選んだのか」と聞かれることがあります。診療科として「小児科を選んだ」のではなくて、もともと子どもに関わる仕事がしたかったのです。大学進学時、教師の道に進むという選択肢もあったのですが、医学部に進むことになり、そこからは迷わず小児科医を目指しました。ずっと根底にあるのは、「子どもには未来がある。これから人生を歩んでいく子どもたちに自分が関わっていくことで、子どもたちの未来がよりよく変わっていったら素敵だろうな」という気持ちです。