九州大学 Kyushu University
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2学部を改組し
社会の激変に応える
世界へ飛躍する九大新世紀 ×
Kyushu University
変わる工学部が育む
新時代の研究者とは
世界はいま新型コロナウイルスによる混乱の中にあるが、解決すべき課題はほかにもある。エネルギー問題と環境問題、少子高齢化、AI(人工知能)など技術の進歩による産業構造の変化──。山積する問題に挑むため、九州大学が学部の変革を行っている。
2021年春に改組されるのは工学部と工学系大学院だ。同大学副学長を務める大学院工学研究院の髙松洋(ひろし)教授は「社会が大きく変わろうとしている現在、新たな技術開発が不可欠」と語る。それを担う次世代のエンジニアや研究者には、次の三つのことが求められるという。
「まずは専門分野を身につけ、自身で深化させられること。多様な事象を、専門分野の観点からだけでなく俯瞰(ふかん)して捉えられること。そして新しいことにチャレンジできることです」
こうした人材を育てるため、工学部は生まれ変わる。既存の6学科を、より専門分野の明確な12学科に改編。融合基礎工学科と量子物理工学科を新設し、複合的で挑戦的な分野を学ぶ。入試方式でも選択肢を増やし、幅広い個性の学生を募集する。
広い視野をじっくり養う
6年一貫型の深い学び
「本学工学部の卒業生の8割以上が大学院に進学します。この状況を受け、工学部出身者にとっての『社会への出口の標準点』は修士課程修了時だと判断しました。学部から大学院修士課程まで接続した6年一貫型教育を実現することが、この改組の最大の目的です」(髙松教授)
1年次には学部共通教育、2年次前期には学科群共通教育、そして2年次後期以降は学科専門教育を実施。基礎を重んじながら段階的に深化するカリキュラムを経て、大学院でのより専門的な教育へ切れ目なくつないでいくことが、「6年一貫型教育」の特徴だと髙松教授は話す。
「工学部には英語で講義を行う国際コースが設置されており、外国人留学生と日本人学生の交流で学内の国際化を図っています。また、独自の海外研修プログラムの実施やロボコン等への参加支援など、課外活動への支援も充実しています」
そのほか、同大学では国内屈指のアントレプレナーシップ(起業家精神)教育が提供されており、部活動として『起業部』も立ち上がるなど、イノベーションマインドの醸成にも注力している。髙松教授は、この多彩な環境も、工学部が目指す教育にとって大切な要素だと続ける。
「多様な取り組みや支援を活用すれば、より幅広い視野を身につけることができる。恵まれた環境で行う最先端の研究を通じて、多分野をリードする『博士人材』を育てていきたいと考えています」
変わる芸術工学部で
未来をデザインする
九州芸術工科大学を前身とする芸術工学部は20年4月に改組。それまでの5学科を、5コースを横断して学ぶ1学科に改めた。50年以上の歴史の中でも大きな改革の理由を、谷正和芸術工学部長はこう語る。
「かつてデザインとは『目に見えるもの』を作ることでした。しかし時代の変遷の中で、サービスや体験など、『目に見えないものを作る』役割が大きくなってきた。そうした幅広いものをデザインするため、分野の枠を超えた学びやグローバルな視点が必要になってきたのです」
改組と共に希望参加制の国際プログラムを導入し、留学や海外との交流もこれまで以上に活性化する。さらに「目に見えないもの」の創造に特化した「未来構想デザインコース」を開設。新たな社会の仕組みや価値を考える授業を通じ、デザインによる社会課題の解決を目指す。
これは時代の求めに応じたもので、工学部の改組や、18年新設の共創学部とも目的を一にする。実際に芸術工学部と共創学部は学部間の行き来も活発で、ワークショップなど課外活動を共同で行うこともある。
「デザインは社会があってこそ成立する学問分野です。例えばスティーブ・ジョブズが作ったのは単なるスマートフォンではない。彼は『iPhoneがある社会』を作ったのです。そうした発想ができれば、デザインの意義がより深くなります」
変わる社会とそれに呼応するデザインは、相互に影響し合う関係にある。コロナ禍のいまこそ、「新たなデザインの出番」だと谷学部長は語る。
「いま社会は変わる必要がある。デザインでそのモデルを提示することもできるはず。どんな世界にしたいかを考え、そのビジョンに向かっていくのが、芸術工学部が考えるデザインです。いまの社会に生きづらさを感じているような人も、ぜひ本学部で学んでほしいですね」
PRESIDENT’s MESSAGE 総長メッセージ
未来の社会が求める
新たな知を創造しよう
久保千春 総長

「答えが存在する問いに解答しているだけではイノベーションは生み出せません。これからの社会を支えるには、他分野の専門家とも柔軟に協働し、問題を発見し、課題を解決していく力が必要です。そうした革新的な人材を育成すべく、大学も進化を続けています」
だが、そこに感染症拡大という事態が重なった。心療内科医でもある久保総長は学生を気遣い、こう話す。
「まずは身体を整えることが大切です。自分の気持ちに気づき、いたわり、自らを励ます言葉を持ってほしい。精神的な影響も考えられるため、学生や教職員の心のケアも重要だと考えています」
同大学では、独自の学生支援金や授業料免除を盛り込んだ「九州大学緊急学生支援プラン」を実施。新型コロナウイルス対策学生支援基金も設けた。2013年にはすでにパソコンを必携化し、デジタル学習環境の全学展開をしていたという下地もあり、約4900科目のオンライン授業は大きな問題もなく運用されているという。
「『quickQ』も活用されていますが、学生が開発したシステムはほかにもあります。伊都キャンパスに通う学生・教職員のためのバス停混雑度情報可視化システム『itocon(いとこん)』は、人混みを避ける新たな生活様式の実現に一役買っています。さらにワクチン開発など、前向きな取り組みを続けています」
久保総長は、学生や受験生に向け「いろいろな情報にあまり惑わされず、勉強に集中を」とメッセージを送る。巷(ちまた)にあふれる情報の取捨選択も、課題解決に必要な力の第一歩だ。
「国際色豊かな本学のキャンパスで学び、世界で指導的役割を担うグローバル人材になってほしい。誰も経験したことのない状況だからこそ、ぜひ未来の課題に挑戦してほしいと思います」
CAMPUS TOPICS
TOPICS1
1世紀続くカイコ研究の成果。
新型コロナのワクチンを早期実用化を目指して開発中
TOPICS2
学生の悩みは学生が解決!
オンライン授業相談システム「quickQ」を全学で活用
開発は九州大学の学生参加型産学連携プラットフォーム「iQ Lab」の学生が中心となって行った。同プロジェクトで共同代表を務める野口岳さん(21世紀プログラム4年)は「開発期間はわずか10日でしたが、迅速にサポートシステムを作成し実用化しました」と語る。現在では学生のみならず教員も利用する、同大学の重要なシステムになっている。



