わかる!ブロックチェーン

ブロックチェーンでついに「ネット選挙」が実現?その仕組みとは

フリーランスライター井上 マサキ

暗号資産(仮想通貨)のイメージが強いブロックチェーンですが、改ざんを防ぎながらネット上に情報を流通させる仕組みとして、さまざまな活用が期待されています。そのひとつが「選挙」です。

ブロックチェーンによる選挙はどのような仕組みで行われるのでしょうか。また、将来国政選挙などに活用されるには、どのような課題があるのでしょうか。一般社団法人ブロックチェーン推進協会(BCCC)にて技術応用部会長を務める、アステリア株式会社の森一弥さんに話を聞きました。

ブロックチェーンの投票は「仮想通貨の送金」と同じ仕組み!?

2019年6月、アステリア株式会社は自社の株主総会で、ブロックチェーンによる議決権投票を実施しました。過去2度の実証実験を経て行われたネット投票は、「仮想通貨の送金とほぼ同じ仕組み」を用いているといいます。

森さん:仮想通貨の送金は「Aさんのアカウントから、Bさんのアカウントにコインが渡る」ものです。これを投票に置き換えれば「Aさんのアカウントから、投票箱のアカウントに議決権が渡る」となります。議決権をトークン(仮想通貨のコイン)として発行すれば、仮想通貨の送金と同じ仕組みで投票が実現できると考えました。

森さん提供の資料より抜粋

――最後に投票箱アカウントの残高を確認すれば、票数を集計できるというわけですね

森さん:その通りです。対象となった株主総会には10の議案があり、いずれも賛成か反対かを問うものでした。そこでブロックチェーン上で10種類のトークンを発行し、投票箱のアカウントは「賛成」「反対」の2種類を用意しました。株主は手持ちの10種類のトークンを「賛成」「反対」どちらかの投票箱に入れる(送金する)ことになります。

森さん提供の資料より抜粋

森さん:投票はPCやスマホのブラウザ上からでき、特別なアプリを必要としません。期間内であれば24時間いつでも投票が可能です。9307名の株主に持ち株数に応じたトークンを発行し、郵送など従来の投票方法の結果と合わせて票数を集計しました。

――ブロックチェーンによる投票は、BCCCの理事選出にも用いられましたと聞きました。

森さん:信任投票である株主総会に対し、理事選出は「複数の候補者から1名に投票する」という形式でした。こちらもブロックチェーン上に1種類のトークンと候補者数分の投票箱を用意することで、送金と同じ仕組みで投票を実現しています。

――投票する側は、ブロックチェーンを意識する場面はあるのでしょうか。

森さん:ブロックチェーンはシステムの裏側の仕組みですので、投票の際に意識することはありません。投票画面は候補者の顔写真と「投票する」ボタンが並ぶシンプルなもので、「操作がわからない」などの問い合わせはありませんでした。

投票画面のスクリーンショット

ブロックチェーンでも「匿名での投票」は実現できる

――ネット投票には「24時間投票が可能」「地方や海外からでも投票できる」「開票作業の自動化」といったメリットがあります。ブロックチェーンを導入することにより、さらにどんなメリットが生まれるのでしょうか。

森さん:一番のメリットは改ざんが不可能であることです。投票したトークンの動きは全てトランザクション(取引データ)に残るため、期間終了後の投票といった不正もすぐに分かります。新たにネット投票システムを立ち上げる際にブロックチェーンを採用すれば、開発コストの低減も期待できるでしょう。

――ブロックチェーンは誰でもトランザクション(取引)の内容を確認できます。投票の匿名性はどのように担保しているのでしょうか。

森さん:ブロックチェーンのアカウントは、送信元を示す「アドレス」と、暗号化に必要な「公開鍵」「秘密鍵」の3点で表現されます。このうち「アドレス」は公開鍵から作られた30文字程度の文字列で表現されます。アカウント名やドメイン名が含まれるメールアドレスと異なり、英数字が入り交じった形で構成されていますので、アドレスを見ただけでは個人まで特定できません。

――「誰かが投票した」まではわかっても、「誰が投票した」まではわからない、ということですね。

森さん:そうです。また、今回の投票システムでは、「秘密鍵」は投票に利用するPCやスマホの内部にのみ存在するように設計しています。投票には秘密鍵による暗号化が必須であるため、管理者による不正な代理投票も不可能です。

――投票する側から、匿名性について不安の声はありましたか?

森さん:BCCCの理事選出では「投票先を他人に知られるのではないか」という問い合わせがありましたね。ブロックチェーンでの選挙を実現するには、こうした仕組みを丁寧に説明し、不安を払拭することも必要だと感じました。

今後の課題は投票前の「本人確認」

国内外には、既にブロックチェーンを用いたネット投票を実施している自治体も存在します。今年8月には、つくば市がIT活用政策コンテストでマイナンバーカードによる顔認証とブロックチェーン技術を組み合わせたネット投票を試みました。また海外では、米ウェストバージニア州が海外派遣中の軍関係者向けに、ブロックチェーンを用いた投票アプリを使って中間選挙の不在者投票を実施しています。

――将来的には国政選挙にネットが活用されるかもしれません。今後ネット選挙が広がるためには、どんな課題をクリアすればよいのでしょうか。

森さん:ブロックチェーンは「投票後」の改ざんを防ぎますが、成りすましのような「投票前」の不正についても対策が欠かせません。従来の国政選挙の通知のように、ネット選挙のIDとパスワードを郵送してしまうと、第三者がそのIDを使って投票する恐れがあるからです。顔認証のような本人確認の仕組みが必要となるでしょう。

――投票システムの課題についてはいかがでしょうか。

森さん:国政選挙でネット投票を行うならば、投票権(トークン)を配布するため「選挙権を持つ18歳以上の男女」のリストが必要です。そのリストとブロックチェーンのアドレスをどのように紐付けて、どのように保存するかを検討せねばならないでしょう。万が一、リストやアドレスが漏洩すれば、重大なセキュリティ事故になりますから。

――解決すべき課題はまだ多いと思いますが、今回の株主総会や理事選出での実績が今後に活きてくるのではと感じました。

森さん:そうですね。今回の取り組みを通じて、ブロックチェーンが実際の選挙に用いられた場合の問題点を洗い出せたのではと考えています。引き続き検討を進めるとともに、選挙以外の用途、例えば人気投票やアンケートなどにも積極的にブロックチェーンをアピールできればと思います。

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