識者に聞く 暗号資産の今

【後編】世界の経済を変えるのか?「Libra」の恩恵を受ける国や人々 BCCC代表理事平野さん×「ミスビットコイン」藤本さん対談

フリーランスライター井上 マサキ

BCCC(ブロックチェーン推進協会)代表理事であるアステリア株式会社の平野洋一郎CEOと、「ミスビットコイン」こと株式会社グラコネの藤本真衣CEOの対談後編です。

Facebookを発起人とする企業連合が発表した暗号資産(仮想通貨)「Libra(リブラ)」。前編ではLibraが生まれた背景やビットコインとの違いを聞きました。後編ではLibraはどう使われるのか、Libraによって世界がどう変わるかについて聞きました。

Facebookの「いいね」がお金になる……?

――LibraはFacebook上でどのような使われ方をするのでしょうか。

平野さん:Messengerで送金ができるようになるでしょうし、「いいね」の隣に「Libra」というボタンができて、気に入った投稿者にお金をあげる「投げ銭」ができるかもしれませんね。こうした仕組みが整えば、これまで手続が煩雑だった海外送金も簡単にできるようになります。

藤本さん:送金手数料がほぼゼロになりますからね。FacebookやInstagram上のオンライン決済でも利用されるでしょう。少額決済のハードルが下がれば、新たなビジネスが世界中で生まれる可能性もあります。

平野さん:27億人のFacebookユーザが作る「Libra経済圏」のインパクトは、非常に大きいと思います。Libraはリアルマネーに換金できるとされていますので、国をまたいだ貨幣と価値の交換がよりスムーズに進むはずです。

藤本さん:価値の交換について、さらに想像を膨らませるなら……。FacebookはVRゴーグルを開発するOculus VR社を傘下に収めていますし、将来はVRの中の「仮想世界」で生活できるようになるかもしれませんよ。Libraが仮想世界での通貨として採用されれば、仮想世界で稼いだお金を現実世界で使えるようになるかも……。まさに映画『レディ・プレイヤー1』の世界ですね(笑)。

Libraによって世界はどのように変わるのか?

――Libraのビジョンが実現すれば、ひとつの政府に頼らない通貨としては世界最大規模のものになります。世界にどんな変化をもたらすのでしょうか。

平野さん:金融システムが発達していない国ほど、変化の恩恵を受けると思います。例えばミャンマーやカンボジアといった銀行口座を持てない人が多い国は、民間のマイクロファイナンス(小規模金融)が発展しています。ただ、貸す側にもリスクがあるので利率が非常に高い。その一方で、スマホ普及率が9割に達している国もある。Libraが流通するようになれば、高い利率を経ずに、スマホの中に自分の財布ができるはずです。

藤本さん:国家が信頼を失ったとき、Libraがその国の事実上の基軸通貨になる可能性もあります。例えばハイパーインフレが起こったベネズエラは、世界で最もビットコインの購入に意欲ある国のひとつなんです。ベネズエラ政府が発行する通貨(ボリバル)より、ビットコインのほうが信頼できると。Libraはステーブルコイン(法定通貨換算で価値の上下がほとんどない暗号資産)ですから、日常決済用途としてはビットコインよりもLibraの方が普及が早いかもしれません。一方で、Libraの価値はあくまでも法定通貨に対してのステーブルでしかないので、今後全世界的に通貨供給量が増え続けていくと、ビットコインに対してLibraの価値が相対的に下がっていく可能性もあります。世間的には、ビットコインの価格が上がったと表現されるかもしれませんが、実際はビットコインが上がるのではなく、法定通貨の価値が薄まり続けているだけなのです。なので、国単位で疑問を持つ人がLibraを求めやすく、現代の通貨制度自体に懐疑的な人が、ビットコインを求める傾向が強いです。

平野さん:法定通貨よりLibraが好まれれば、自国の通貨発行権という聖域を脅かされる危険性があるわけですから、各国から反発の声があがるのも当然でしょう。裏を返せば、それだけ大きな出来事といえます。これもブロックチェーンという技術によって、「信用」をデジタル空間に置けるようになったからこそですね。

Libraの対抗勢力が生まれる可能性は十分にある

――今回のLibraのような「世界共通の通貨」が生まれる動きは、今後も出てくるでしょうか。

平野さん:私は「対抗勢力が現れる」と予想しています。Libraは企業連合であるLibra協会が運営するとはいえ、発起人はFacebookであり、事実上のリーダーです。これを良く思わない勢力がグループを作り、同じような動きをする可能性は十分にあります。

藤本さん:あり得ますね。世界中の国が独自の通貨を持つように、企業連合ごとに独自通貨を発行していくかもしれません。とはいえ、Libraほどの規模はなかなか難しいでしょうね。

――ユーロ圏のように、国や地域同士が組むこともあるでしょうか。

平野さん:今のところLibra協会のメンバーはアメリカ企業が中心ですので、中国やヨーロッパの企業が別の暗号資産(仮想通貨)を打ち出すことも考えられます。いずれにせよ、こうした通貨が生まれる流れは止められないでしょうから、いくつか生まれたなかから淘汰され、磨かれたものが残るのではと思います。

Libraについて知ることが大切

――Libraが世界に大きな影響を与えかねないことはわかりました。では日本にいる私たちは、どう向き合っていったらよいでしょうか。

平野さん:投資を目的した仮想通貨ではないので、「出たら早く買わないと」と焦る必要はないですね(笑) そもそもLibraがもたらすメリットは、金融システムが進んでいる日本ではあまり感じづらいもの。すぐに生活が大きく変わるとは考えにくいですが、なぜLibraが生まれ、どういうことに役立つか、知っておくことは大事です。

藤本さん:決して日本に無関係な話ではありませんからね。

平野さん:日本は「失われた30年」を経て、先進国と比べて給料水準が落ち込んできています。例えばグローバル企業が給料をLibraで支払うようになれば、こうした格差がより縮まる方向に進むでしょう。Libraによる価値の変化が、自分の身に起こるかもしれないわけですから。

藤本さん:そういう意味では、国境を越えて表現活動をするクリエイターなどは、Libraとの相性がいいでしょうね。個人の頑張りに対して世界から見返りがくるようになれば、チャンスも広がりますし。

平野さん:確かにそうですね。もしLibraについてもっと理解したければ、今から仮想通貨そのものに慣れ親しんでもらうのもよいでしょう。それは、投資で儲けるためではなく便利な決済手段としてです。Libraの大きな可能性はまさに地球上に広がる決済手段としての可能性なのです。最近の投機的動きを反映して「暗号資産」と呼ばれるようになった仮想通貨ですが、元々ビットコインの狙いもSatoshi Nakamotoが「Cash System」と書いているように通貨としての役割であり、そこに大きなメリットがあるのです。仮想通貨を国際間の個人決済などに使ってみることで、これからの可能性を感じてもらえればと思います。

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