「はたらく人ファースト」な会社になるためには、Z世代を含めた社員一人ひとりの多様なはたらきがいを認め、大切にする環境づくりが不可欠です。IT企業ではたらいた経験を持つインフルエンサーでポップスピアニストのハラミちゃん、若者のトレンドに詳しいZ総研のアナリスト・株式会社N.D.Promoton取締役の道満綾香さん、株式会社N.D.Promoton広告事業部の望月優成さんが、Z世代が自分らしさや強みを発揮できる職場に出会うためのポイントなどを語り合いました(司会はツギノジダイ編集長・杉本崇)。

「自分が笑顔になるために、はたらく人も笑顔にできたら」

――杉本:Z世代にとっての「はたらきがい」について聞かせてください。

ハラミちゃん 私自身、お金のためにはたらいているのではないという気持ちが強いです。ピアニストを本業にする前は、IT系企業に勤めていました。ずっとクラシック音楽の世界にいたので、全く違うIT系への好奇心から飛び込みました。

はたらく時間は人生で大きな割合を占めますが、私は「自分を幸せにしたい」という自己肯定が目的です。自分が笑顔になるためにはたらき、人も笑顔にできたらWin-Winですよね。

「ハラミちゃん」の活動でそうした幸せをより多く感じられます。それでお金をいただける奇跡に感謝しながらはたらいています。

――杉本:ハラミちゃんは自分らしさをどのようにビジネスとマッチさせていますか。

ハラミちゃん  自分らしさと認識できる事柄が多くなるほど、仕事にもつながります。データをまとめる作業が好き、笑顔で組織を明るくする、ということでもいいでしょう。

以前の会社で半年に1回くらい、会社の個人チャットで「私のいいところと悪いところを教えてください」とお願いし、膨大な自分のデータを集めました。それらをすべて自分らしさとして、次の仕事につなげようと考えていました。

――杉本:その後の仕事にどんな影響を与えましたか。

ハラミちゃん 意識していなかった部分を色々発見でき、秘密の窓がたくさん開いたような感覚でした。

私は若者向けサービスを開発するにあたり、若者の気持ちを知りたいと思ったので、SNSで若者と友だちになることから始めました。すると、彼ら彼女たちの生活の実態を知ることができたんです。自分の興味からの行動でしたが、周りからは「徹底的にユーザーを探っている」と評価されました。

「人を知りたい」という自分の思いが強みだと気づいたんです。それをとがらせ、磨くことに集中するようになりました。

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ポップスピアニストのハラミちゃん

――杉本:社会人4年目の望月さんは、学生や新卒のころと比べて「はたらきがい」に変化はありましたか?

望月 学生時代のアルバイトとは全然違い、新卒のころと比べても自分がやるべきことをクリアに理解できるようになりました。それが責任感や主体性につながっていると思います。

「好き」を大事にするZ世代

――杉本:Z世代は「自分らしさの発揮」を重視していると言われます。

道満 Z世代は「自分の好き」を大事にして、そこから進むべき道を見つける人が多いです。ただし、それができるのは「それはいいね」と認めてくれる場や環境があるからとも言えます。

Z世代より前の時代なら「好きを追求していい」と言ってくれる人も少なかったと思います。「好き」でつながるオンラインのコミュニティーもないので、今いる場所から受け入れられないと、つらい状況になってしまいました。

その点、Z世代は「好き」を主張しやすく、コミュニティーもオンライン上で作りやすいと思います。

はたらく人と会社の相思相愛が成立するには

――杉本:採用・転職サービス「ミイダス」と朝日新聞社は「はたらく人ファースト」を浸透させるため、はたらく人ファーストアワードを開催しています。「はたらく人ファースト」という言葉にはどんなイメージを持っていますか。

望月 はたらく人が望むことを受け入れてもらえ、仕事がしやすく尊重される会社や社会という印象でしょうか。

道満 Z世代は「ワークライフバランス重視」世代。仕事も自分のプライベートも尊重したいという感覚が強くあります。「はたらく人ファースト」という言葉からは、プライベートも仕事も頑張れる環境が「当たり前」とされている印象です。

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Z総研アナリスト・株式会社N.D.Promoton取締役の道満綾香さん

ハラミちゃん 「はたらく人ファースト」は、はたらく人と会社が相思相愛でないと成立しません。はたらく人が会社に貢献したいと考え、会社もその人を尊重する。それが条件になると思います。

相思相愛が成立するには、会社がはたらく人のスキルだけでなく、その奥にある「自分らしさ」や性格を本質レベルで理解することだと思います。「営業スキル」といった大雑把なものでなく、その人がどう会社に貢献できるか、強みは何かを細かい粒子レベルで把握していることがカギになります。そういう姿勢なら、はたらく人の貢献意欲も高まるはずです。

――杉本:自分らしさや強みを発揮できる場所を、会社はどうつくればいいのでしょうか。

望月 僕は会社が求めるものをやりつつ、自分の好きなことを生かして、貢献したいと考えています。ただ、そのバランスが時間や結果に結びつかないのが難しいところです。

場づくりの前提として「こういうことがやりたい」と発言しやすい環境であることは必要ですよね。僕自身、好きな音楽を生かした仕事がしたいと声を上げたことで、社内で色々なスキルを持つ人の力を借りることができ、音楽を絡めた取り組みをスタートできました。

一人の人間として向き合う

――杉本:会社は生き残りのためにも、若い世代の感覚を取り入れる必要があります。会社側はZ世代に自分らしさを発揮してもらうため、どんな仕組みを作ればいいのでしょうか。

道満 SNSに触れるタイミングはすごく大事です。Z世代は小中学生のころにはスマホを持ち、興味があることはすぐ調べ、多様な価値観に簡単にアクセスできる環境で育っています。色々な価値観を柔軟に受け入れ、新しいことへのチャレンジを楽しむことができるんですね。

一方、私の世代より上は「これだから若い子は…」と決めつけがちなところがあります。上の世代がZ世代に少し歩み寄ることで、一緒に考えたり、デジタルネイティブならではの感性を発揮してもらったりするといいですね。

――杉本:会社が歩み寄ることで、Z世代自身はどう変わりそうですか。

ハラミちゃん 自分らしさを認めてもらうことで、はたらく人もやりがいを感じ、社会にいい影響が広がります。最近のSNSは自分の考えを人に強要する風潮が強まっていますが、お互いの個性を認めるスタンスはすごく大事だと思います。

――杉本:一人ひとりの個性や本音に会社が寄り添うと、内面に深入りしてくると捉える人も出てくるかもしれません。

望月 好きなことを知ってもらうほうが楽しくはたらけるので、僕自身はポジティブに受け止めています。ただ、仕事は仕事として割り切り、自分の内面を会社にあまり知られたくないと思う人もいるでしょうね。

道満 その人が自分について知ってほしいと思っているか。それは、コミュニケーションを取ればある程度わかってくるはずです。最初は決めつけずに、一人の人間として向き合い、話してみることです。そうすれば「自分のことを知ってほしい」と思っているか、「あまり踏み込まれたくない」と捉えているかがわかります。

「はたらく人ファースト」の会社に出会うためには?

――杉本:はたらく人が持つ「自分らしさ」を生かす会社が求められる一方、そうした会社はまだまだ少ないのが現実です。「はたらく人ファースト」の会社はどう見つればいいのでしょう。

道満 出会うのが難しいのは確かですが、そういう環境の会社ではたらく人は確実にいます。その人たちの存在を励みに「もう少し頑張って色々な会社を見てみよう」と考えてはどうでしょうか。

ハラミちゃん 自分の「好き」と周囲の期待がうまくハマるということもありますよね。ハラミちゃんの活動は4年目ですが、とんでもないラッキーが125回続いたと思うほど、運と縁に恵まれてきました。だからこそ、その要因を自分なりに分析して言語化してみたんです。

自分なりの結論は、「一つのことを徹底的に頑張る×フットワークの軽さ=縁と運を呼び寄せる」という法則でした。1度の人生で「何でもやってみよう」と、「運ガチャ」をフットワーク軽く回し続ければ、「アタリ=運と縁」が出る確率がぐんと上がります。

「運ガチャ」に貯めておくものを持つことも大切です。私は4歳からピアノを始めて、音大卒業までトータル2万7千時間の練習を重ねました。食べるときと寝るとき以外はすべてピアノという生活でしたが、楽しいから一生懸命やれたんです。

ピアニストをあきらめて普通の会社員になったときは、「これまでの人生をムダにした」という思いでいっぱいでした。それでも持ち前のフットワークの軽さで、全くジャンルの違うIT企業に飛び込んだんです。一生懸命はたらくうち、会社の先輩と「ハラミちゃん」を始めることになりました。

もう一つは、徹底的にファンの皆様と向き合ったことで、お米さん(ファンの総称)のことも深く理解できるようになりました。

一生懸命やったことは自分の中で冷凍保存され、血肉となり、どこかのタイミングで解凍され、ほかの何かと交ざり合いながら結果を生む。冷凍保存されているものが多いほど、大きな成果をもたらしてくれると思います。

入社後のギャップを埋めるために

――杉本:望月さんは会社を選ぶ際、自分らしさを認めてもらえる環境があるかを重視しますか。

望月 それは大事な軸の一つです。お金をもらって仕事をするので、やらなくてはいけないことがあるのは当然で、そこにギャップは感じていません。逆に自分のやりたいことだけを主張するのは、会社としても個人としてもアウト。ハラミちゃんの言うように、個人と会社が寄り添いあうことが大事だと思います。

就活時はOBやOGからリアルな声を聞くことで、会社とのギャップが埋まると思います。SNSを調べれば、興味のある会社の社員の声を見つけられることもあります。自分から情報を取りに行く姿勢が大事ですね。

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株式会社N.D.Promoton広告事業部の望月優成さん

道満 採用面接する立場で思うのは、志望動機をその会社に合わせてしまうと、はたらいてからのミスマッチにつながりやすいということです。

求職者がやりたいことをできる場を提供できるのか、会社側も深掘りが求められます。型通りの質問ではなく、求職者個人に寄り添い、言いたいことを引き出す対応が必要です。

どれだけ優秀な学生でも自社に合わないと感じたら、私が面接で「こういう会社のほうが向いていて、やりたいことが実現できるよ」とアドバイスしています。逆に、少しでも方向性が重なったり、自分らしくはたらいている姿が想像できたりすれば、すぐに「一緒にはたらこう!」と。

挑戦できる環境がモチベーションを生む

――杉本:やりたいことをそのまま仕事にできる人は圧倒的に少数派です。最初は望んでいなかった仕事も、向き合ううちにモチベーションを感じるケースのほうが多いのではないかと思います。

道満 当社は入社1〜4年目の若手が半数を占めますが、色々なことを経験するなかで自分の得意なことを見つけています。未経験の仕事にどんどん挑戦することで、自分が変わって成長できる。そういう環境は「はたらく人ファースト」といえますね。

望月 僕はもともと営業が好きだったわけではありませんが、仕事をする中で自分の糧となりました。経験を積む中で業務が広がり、新たな興味とも出会えます。

――杉本:ハラミちゃんは「与えられた場で頑張る」ことから何を得られましたか。

ハラミちゃん 私が頑張る究極の理由は「自分を知りたいから」です。とことんやらないと、自分がどういう存在なのかわからないんですよね。

これは会社でも同じだと思います。例えば、営業を経験して初めて、自分の向き不向きがわかる。だからこそ、部署異動が柔軟にできたり、色々な社内プロジェクトに参加できたりする環境のほうが、自分を知るチャンスが多くなります。それがモチベーション向上にもつながるのではないでしょうか。

「はたらく人ファースト」バッジを

――杉本:はたらく人ファーストアワードでは、「はたらく人ファースト宣言」に賛同してもらった企業に宣言バッジを提供しています。個性を発揮しやすい社会づくりにおいて、この取り組みをどのようにお感じになりますでしょうか?

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(左から)望月さん、ハラミちゃん、道満さん

望月 一目で、企業が「はたらく人ファースト」な会社かどうかを判断できるような「はたらく人ファースト」の認定バッジがあれば、はたらきやすい環境を探す基準にもなりますよね。それは、自分らしくはたらく場を探す上で役立つ情報だと思います。

ハラミちゃん SDGsのような認定バッジが広まれば、就活の新しい基準になりますよね。会社員も自分の「好き」を大切にすることが必要です。「はたらく人ファースト」バッジがある会社で自分らしさを発揮するのもいいし、それがわからない人は、認証バッジがある会社で探すのもいいと思います。

道満 「はたらく人ファースト」のような取り組みは、生き方やこれからの人生を考えるきっかけにもなります。このようなバッジがあることで「自分はこの先どんなはたらき方をして、結婚や子育てと仕事をどう両立するのか」という見通しも立てやすく、よりよい世の中をつくる助けになりそうです。

ハラミちゃん2_プロフィール写真

ハラミちゃん
ポップスピアニスト。2019年6月、一般企業のOLからピアニスト系YouTuberへと転身。 スタートから約4年でYouTubeチャンネル登録者数219万人、総動画再生数6億回を突破。2020年7月1日の発売のアルバムはピアノのみのインストゥルメンタルとしては異例のBillboard JAPAN週間ランキング初登場1位、オリコン週間アルバムランキング初登場2位を獲得。2021年1月には女性ピアニストとしては15年ぶりの日本武道館での単独公演を成功させた。ファンの"お米さん"も若いファミリー世代から高齢の親子三世代まで幅広く支持を得ており、TV をはじめとしたメディ アにも多数出演。ピアノ絵本や楽譜の監修など、"ピアノを身近な存在にする"を目標に 幅広く活動中。現在5万人動員予定の『47都道府県ピアノツアー』を開催中。2024年1月13日には東京ガーデンシアターでファイナル公演が決定している。

道満さん2_プロフィール用写真

道満綾香
兵庫県出身。大学在学時に女子大生のマーケティングを目的としたTeamKJを設立し、プロデューサーを務める。大学卒業後はリクルートグループに入社。その後、スタートアップ数社でZ世代を対象としたPRやプロモーションを行い、数々のメディアに取り上げられるなど若者向けのアプリがブレイク。その後、Z世代のプロモーションやインフルエンサーのキャスティングを行う株式会社N.D.Promotonで取締役に就任。Z世代の研究メディア「Z総研」ではアナリストとして、ジェネレーションギャップが生まれるZ世代の「今」を取材している。

望月さん2_プロフィール写真

望月優成
株式会社N.D.Promotion入社4年目広告事業部。Z世代周りの広告施策の営業、ディレクション、キャスティングを担当。

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