集中治療室から見たコロナ禍 重点措置の適用「1週間遅かった」

福岡龍一郎
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 【宮城】「まるで映画のワンシーンだな」

 水色のマスクや帽子、フェースシールド、ガウンを身につけた医師や看護師が忙しく動き回る、東北大学病院(仙台市青葉区)の病棟4階にある集中治療室(ICU)。今年8月、集中治療部の志賀卓弥・副部長(43)は、前に見た感染爆発を描いた映画を思い出した。

 集中治療医として10年以上の経験を持つ志賀さんにとっても「異常な光景」だった。確保した重症者用の病床の3分の2が埋まった。患者が危篤状態になっても、家族は面会もできない。「パンデミックが現実のものになってしまった」

 8月の新型コロナウイルスの第5波は、県内でも猛威を振るった。1日あたりの感染者数は301人(同25日)、重症者数は34人(9月3日)と過去最多を更新。確保病床の使用率も8割を超えた。

 同病院のICUで患者は空気が外に漏れない個室に入る。入り口は二重扉。その先は「レッドゾーン」と呼ばれ、入室のたびに手を消毒し、5分ほどかけて防護具を着脱する。1時間もすれば「手袋は汗でぐしょぐしょ」になった。

 志賀さんが治療をするのは最も症状の重い患者だ。呼吸不全の状態で、血液中の酸素量は著しく低下。まず特殊な機械を使い、鼻から高濃度の酸素を投与する。改善しない場合、のどに管を入れて、人工呼吸器やECMO(エクモ、体外式膜型人工肺)を使う。口から管を入れる際、患者がえずいて飛沫が飛ぶのを防ぐため、患者の顔には透明のカバーがかけられる。

 夕方5時から翌朝9時ごろまでは、患者にうつぶせの状態になってもらう。肺を広げるためだという。鎮静剤で意識がない重症者は、看護師ら5、6人がかりで体の向きを変える。人工呼吸器などの管が1本でも外れれば命に関わる。

 3月の第4波では重症者は高齢の人が目立ったが、第5波では40~50代が多くなった。同病院で受け入れた患者は体重100キロ以上の肥満の男性が多く、全員がワクチン未接種だった。

 体位を変えた後も、床ずれが起きないように、看護師は夜通し患者を見守る。ICUの看護師は、一般病床の患者と接触しないことが求められた。

 同病院では人手が足りず、3フロア分の病室を閉鎖し、約30人の看護師を確保した。その影響で一部の手術や入院が延期された。

 一方で、緊急性が高い心臓や肺の移植手術などは以前と変わらずある。「普段でも大変な診療が入っているところに、プラスアルファでコロナ患者が入ってくる。現場の疲弊感は限界に近かった」

 第5波では、8月12日に新規感染者数が200人を超えた。その8日後、まん延防止等重点措置が仙台市内に適用された。「既に感染者の急増は始まっていた。現場で対応した私からすれば適用が1週間ほど遅いと感じた」

 適用が決まる前、県の会議で、志賀さんは早期の対応を求めたが見送られた。県の担当者によると、措置が早くなるほど、飲食店や経済活動への影響が大きくなることが考慮されたという。「いつが適切なタイミングなのかは、正解のない難しい問題。ただ医療に携わる私の立場からいえば、なるべく早く出してほしいというのが本音だ」

 第5波は9月ごろから徐々に収束した。10月に入ると1日あたりの感染者数は連日10人を下回った。同病院では県と協力して「抗体カクテル療法センター」を開くなど、重症化を防ぐ取り組みも始まった。今月1日、まん延防止等重点措置が解除された。

 約2カ月半ぶりに飲食店の時短営業や酒類提供の制限がなくなり、夜の街にも少しずつにぎわいが戻った。志賀さんは「コロナ禍前の日常に戻ることは、悪いことではない」と歓迎する。一方、感染対策がおろそかになれば、間違いなく感染は再拡大するとみる。

 「予兆があった時に政府はきっちり緊急事態宣言などを出してほしい」。同病院は今も第6波のために病床を備え続けている。

     ◇

 県内では今年、時短要請などがなかった期間は2月初旬~3月中旬、6月中旬~7月下旬、10月1日~現在の約3カ月半だけだ。志賀さんは「『緊急事態宣言慣れ』になっていないか。今後の宣言などの効果が薄れてしまう」と心配する。確かに、今後出されても「またか」と、かつての緊張感はないかもしれない。もし感染が再拡大した時、医療現場の危機感をどう社会に伝えるのか。コロナ下では、市民を納得させる「話す力」もリーダーに求められる。

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