特別講演
持続可能なペットボトルへの挑戦
持続可能なペットボトルへの挑戦
北村 暢康
サントリーホールディングス
コーポレートサステナビリティ推進本部
サステナビリティ推進部長
日本におけるペットボトルリサイクルの現状と課題
プラスチックはこれまで、世界の人々の生活に様々な恩恵をもたらしてきました。単に利便性が高いだけでなく、酸素や水分に対する密閉性能も高いため、賞味期限をのばし、食品ロスを軽減することにも役立っています。
しかし一方で、使用後に適切に処理されないことから、海洋汚染を始めとする環境問題を生じさせてしまっています。世界規模で年間約800トンのプラスチックが海に流出し、2050年には、魚の重量をプラスチックごみが上回るとさえ言われているのです。
一方、日本では使用済みペットボトルの91.5%が回収されており、そのリサイクル率は84.6%。リサイクル率が約4割のヨーロッパ、約2割のアメリカと比べても、明らかに高い水準を誇っています。
日本でペットボトルのリサイクル率が高い理由のひとつに、容器包装リサイクル法の存在が挙げられます。この法律は、消費者、市町村、事業者が三者それぞれの役割として、分別排出、分別収集、リサイクルを担い、容器包装廃棄物の削減に取り組むことを義務づけています。まさに消費者の皆様のご協力のおかげで、この高いリサイクル率を実現することができているのです。
しかし、回収率91.5%という事実は、残念ながら残り数%はごみとして焼却されたり、捨てられたりしていることを示しています。また、回収されたにも関わらず、品質上リサイクルに回すことができずに、焼却されてしまうペットボトルも存在しており、これらを少しでも減らしていく取り組みや啓発が必要だと考えています。また、回収後のペットボトルが再びペットボトルにリサイクルされる、水平リサイクルはまだ26%程度にとどまっています。他の製品に生まれ変わる場合には、現段階では数回程度のリサイクルですが、ペットボトルからペットボトルへの水平リサイクルは、理論上は半永久的にリサイクルができるのです。よって、この比率を上げていくことも必要です。
持続可能な循環型社会の実現を目指す
2019年5月、サントリーはプラスチック問題に対し、グループ全体で取り組みを進めていくため、「プラスチック基本方針」を策定しました。
「プラスチック基本方針」では、2030年までにサントリーグループが使用するペットボトルの原料はリサイクル素材、あるいは、植物由来素材のみとし、化石由来原料の新規使用をゼロにするという高い目標を掲げています。それには、プラスチックの使用総量の削減に加え、ペットボトルの循環の実現が欠かせません。
これまでも当社は、容器包装のデザイン変更により、プラスチック使用量の削減を進めてきました。たとえば2ℓのペットボトルの重さはこの20年で約半分、国内最軽量クラスの29.8gまで軽量化し、商品ラベルに関しては国産で最も薄い12マイクロメートルを実現しています。
2011年にリサイクル事業会社の共栄産業と共同開発した、国内飲料業界で初の「B to B(ボトル to ボトル)メカニカルリサイクルシステム」は、使用済みペットボトルを粉砕して新たなペットボトルへ再生する技術ですが、2018年、海外の企業2社の協力も得て、粉砕した破片を溶かす工程を省けるようになりました。
少ない熱エネルギーで再資源化できるこの「F to P(フレーク to プリフォーム)ダイレクトリサイクル技術」は世界初の技術で、石油原料100%でプリフォームを作ったボトルと比べるとCO2排出量を6割以上削減できます。
このように、当社はリサイクルのイノベーションを起こすべく、新技術の開発に力を入れてきました。環境に優しい素材への代替も進めていて、現在、「サントリー天然水」のペットボトルは植物由来原料を30%使用しておりますが、今後は、アメリカのバイオ化学ベンチャー企業・アネロテック社と開発した技術を用いて、100%植物由来へ切り替えていくことを目指しています。
またこの技術開発の過程で、レジ袋や弁当容器といった、ペットボトル以外の使用済みプラスチックも効率的に再資源化できる技術の芽を発見しました。2020年、国内のプラスチックのバリューチェーンを支える12社と共同で設立した新会社「アールプラスジャパン」は、アネロテック社とも連携し、このプラスチック再資源化技術の開発・実用化を進めています。
今日の地球全体に関わる社会環境の課題の解決には、国や立場を超えたすべての人たちが知恵を出し合い、共に創っていく“共創”と、力をあわせて動く“協働”が大切になってきます。
“人と自然と響きあう”社会の実現を目指す企業として、サントリーはこれからも持続可能な循環型社会の実現に向けて、率先して挑戦を続けていきたいと思います。
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