パネル討論
未来を創る「分身技術」コロナ禍の世界を変える?
未来を創る「分身技術」コロナ禍の世界を変える?
鈴木 高志
凸版印刷 情報コミュニケーション事業本部
ソーシャルイノベーション事業部
先端表現技術開発本部本部長
2020年、朝日地球会議は初めてオンラインで開催された。10月14日に配信された「未来を創る『分身技術』コロナ禍の世界を変える?」と題されたトッパンのオンラインセッションは、東京・丸の内にある同社のNIPPON GALLERY TABIDO MARUNOUCHIにて収録された。
セッションには、東京大学大学院の暦本純一教授、タレントの眞鍋かをりさん、トッパンの鈴木高志本部長が参加し、朝日新聞社の須藤龍也記者がコーディネーターを務めた。
「仮想テレポーテーション®」は、映像空間と通信技術を一体化させ、物理的に遠く離れた相手とあたかも同じ空間内に存在しているかのような状況を作り、コミュニケーションを可能にすることで、時空を超えた体験を実現する。離れた場所で、店舗のスタッフと会話をしながらショッピングをしたり、東京に居ながら沖縄の海でダイビングをしたり、今は無き安土城の内部にテレポーテーションなど……。様々な「仮想テレポーテーション®」を体験した登壇者によるクロストークの模様を、トッパンが目指す「IoA仮想テレポーテーション」の未来像とともに紹介する。
最新の情報加工技術から生まれた「IoA仮想テレポーテーション」を体験して
須藤 「IoA仮想テレポーテーション」はいかがでしたか?
眞鍋 そのリアルさに驚きました。体験というよりも「体感」した感じです。
須藤 そもそも、トッパンは「印刷会社」ですよね。なぜ遠隔体験やバーチャル体験なのでしょうか。
鈴木 印刷で培った情報加工技術を活用して、紙から、ICビジネス、電子出版のコンテンツ制作、またAR(拡張現実)、VR(仮想現実)などのデジタル領域にまで発展させてきました。
須藤 これまで「印刷は紙に刷るもの」というイメージがありましたが、デジタルデータを様々なメディアに展開するという、出口の違いだけなのですね。
鈴木 その一環で「デジタル文化財」というVRコンテンツも提供しています。たとえば、日本の史跡の中には、石垣は残っているが、城郭は残っていないお城がたくさんあります。それら現存する石垣の上に、文献情報、時代考証、さらにはその土地ならではの空気感、光などのデータも加味して、当時のお城を再現し、VRで体験いただくことも可能にしています。
眞鍋 遠隔で体験できるようになっただけではなく、なくなってしまったものを補って、まるで本物があるかのように見ることもできるのですね。
須藤 「ストリートミュージアム®」という体験型VR観光アプリ上でも、ARのような体験ができるんですよね?
鈴木 実際に覗いているのはスマホの画面ですが、人間の脳の働きの面白いところで現実空間にVRの世界を重ねると、あたかもそこに存在するかのように感じられるのです。今後は、そこに行かなくとも人間の感覚を飛ばし体験できるようにする技術、つまり人間の感覚を拡張するIoA技術を使って、同様な体験ができるように暦本教授とともに研究を進めています。
未来の社会基盤となる「IoA」とはどのようなものなのか
須藤 「IoA」とは、どのようなものなのでしょう?
暦本 「IoT」はInternet of Things(モノのインターネット)の略で、インターネット経由で家電等のセンサーと通信機能をつなぐものですが、私たちが提唱している「IoA」は、Internet of Abilities(能力のネットワーク)です。人間とテクノロジー・AIをつなぎ、時間や空間の制約を超えて相互に能力を強化することを実現します。
鈴木 トッパンでは、暦本教授との共同研究の成果をもとにこの「IoA仮想テレポーテーション」の開発を行い、遠隔観光体験、遠隔教育、不動産の遠隔内見などを実現しています。
暦本 「IoA」ではウェアラブル端末を使って、人と人の「能力」をつなげることが可能です。ジャックイン・ヘッドという、複数のカメラがついたウェアラブルコンピューターを使用して、装着者から360度の景色を送ってもらい、その視点を共有(ジャックイン)することで、「体験」を共有できます。たとえば鉄棒の大車輪をしている人に「ジャックイン」すれば、まるで大車輪ができているかのような体感を味わうことができるのです。
眞鍋 いろいろな能力を持った人間が、違う場所にいながら、いろいろな人たちと能力をつなぐイメージですね。他人の能力とつながることで「個人」の概念がわからなくなっていきそうです(笑)。
暦本 AIと一体化してよりよい方向へ発展し、人間と人間、人間とAI、人間とロボットがつながって、人間の能力がネットワークで拡大していくのが「IoA」です。現在のコロナ禍において、これまで以上のコミュニケーションができる可能性を持っているといってもいいでしょう。
眞鍋 聞いていてワクワクします。
暦本 私だけでなく、子どもの頃、夢みていたことは、大人になってもやりたいことのはずです。今の技術で現実的なものにつなげていけば、それが実現する。妄想を現実にと思って研究に取り組んでいます。
鈴木 トッパンでは、その妄想を現実に、先端表現技術で社会実装しようとしています。教育の分野にも展開し、遠隔地での体験教育を可能にします。
眞鍋 留学したかったけれど、できなかったという人々も遠隔で海外の教育を受けることが可能になりますね。平等に機会が与えられて、教育格差が埋まっていく。そんな側面もありそうです。
須藤 留学を予定している学生が現地に行けないという事態も、今、コロナ禍で現実に起こっていますね。
眞鍋 でも、最先端の技術が社会に実現していけば、遠隔で授業を受けるだけではなくて、友だちとご飯を食べに行けるようにもなるのですね。
テクノロジーが拓く未来の扉 新しい「つながる体験」はもう、すぐそこに
眞鍋 テクノロジーがどんどん進化をしていく中で、これからどういう能力を伸ばしていくといいのか?何を次世代の子どもたちに学ばせるといいのか、すごく迷います。
暦本 必要なのは、ずばり妄想力です。「できたらいいな」を伸ばしていくことが、いずれ研究につながっていきます。そして研究から生まれた技術によって、社会課題が打開される。新型コロナのような感染症にも打ち勝っていきます。
眞鍋 今日体感した技術が当たり前になると、いろいろな価値観も一変しますね。新しい一つの世界ができるといったらいいのでしょうか。腹をくくって、新しい世界を生きていかないと!と思いました。
鈴木 トッパンが社会実装のために取り組んでいる最も重要なポイントは、このような先端技術を誰でも、安心・安全に使えるようにすることです。情報が正しく伝わっているか、絶えず確認しながら技術革新を行っていきます。
※「仮想テレポーテーション」は凸版印刷株式会社の登録商標です。
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