OBの北里柴三郎が新千円札の顔に
本荘北地区基礎医学研究棟の入口に設置されている北里像
熊本大学は千円札と縁がある。2004年までの千円札の顔・夏目漱石は、熊大の前身である第五高等学校(五高)の英語教師として教鞭をとった。一方、新しい千円札の顔となる北里柴三郎は、熊本県阿蘇郡の出身で、熊本医学校(現・熊大医学部)で学んだ。
自身も熊大医学部出身である原田信志学長はこう話す。
「北里柴三郎を昔から尊敬していました。基礎研究に取り組みつつ臨床にも携わり、よりよい治療をめざした方。伝染病研究所や北里研究所を創立され、数多くの医学者を育てられてもいる。われわれ医学教育者にとっては、いまでもお手本です」
こうした縁もあり、熊大には基礎医学の研究者を育てる「柴三郎プログラム」が存在する。12年から始まったこのプログラムでは、卒後臨床研修を受けつつ博士課程で研究することが可能に。奨学金や海外研修制度も充実している。医学部医学科の学生には、大学院の単位を早期に修得できるなどの特徴をもつ「プレ柴三郎プログラム」、医学や生命科学研究に興味のある高校生には、最先端医学研究を体験してもらうなどの特徴をもつ「柴三郎Jr.の発掘プログラム」も用意する。
グローバル教育の一環として英語を重視
「一番重要なのは好奇心。学生たちには、好奇心をもって自主的に課題を見つけて、自分で解決していく人になってほしいですね」と原田信志学長。文書館の前にて
「Global Thinkingand Local Action という意味でも、北里はお手本」と原田学長は続ける。北里はドイツに留学し、細菌学の大家・コッホに師事。早い時期に海外に目を向け、飛び立ち、世界に貢献する仕事をしたからだ。原田学長自身は1981年、31歳のときに渡米、大学で研究職に。そこで出合ったのが生涯の研究対象となるエイズだ。自身の経験からも「早い時期に海外に行くのはいいこと」と言い切る。
本格的に大学の国際化を進めるため、2017年、文、法、理、工の4学部にグローバルリーダーコースを新設した。地域の問題を解決できるグローバル人材の育成をめざし、専門教育に加えて英語を主体とした教養教育や、文理融合型で学ぶ科目を設置するなど独自のカリキュラムを充実させた。
「グローバルリーダーコースは英語のネイティブスピーカーの先生を多数採用し、英語による授業を増やしました。続けて学部の一般教養でも英語授業を増やす試みを始めています。こうして学内のグローバル化が進めば、学生が海外へ出るきっかけにもなると考えています」
20年度の大学入試改革についても英語に関心を寄せ、高校時代に「会話」や「発信」を意識した勉強をする必要性が高まることに、期待をにじませる。
一方、民間試験については、出願資格とするのみで、加点対象にする予定はないという。
「入試改革については学内でかなり議論しました。民間試験については、CEFRのA1レベルを出願資格とすることを公表しています」
地域に根差した未来志向の研究拠点
ヒトレトロウイルス学共同研究センターにおける教授と大学院生の様子
研究面でもさまざまな取り組みが始まっている。「地域に根ざし、グローバルに展開する未来志向の研究拠点大学」が、熊大のコンセプトだ。
18年、「健康長寿代謝制御研究センター」を設置。社会的にも関心が高い老化や健康長寿をテーマに研究を進める。また今年4月、日本の大学初のエイズ専門研究施設として発足したエイズ学研究センターと、鹿児島大学の難治ウイルス病態制御研究センターを統合。新たに「ヒトレトロウイルス学共同研究センター」をスタートさせた。
こうした姿勢や功績が認められ、ロイター発表(18年)の「アジアで最もイノベーティブな大学ランキングTOP75」で、熊大はアジア30位、国内10位に選ばれた。科学の発展と新技術の創出に貢献し、新しい市場や産業を推進する大学を評価する国際的なランキングだ。
学ぶ際にも研究する際にも大切にしてほしいのが、「熊大スピリット」だと原田学長は言う。
「五高以来の『剛毅木訥』の気風を受け継ぎ、進化させた熊大スピリットを象徴する言葉が、『創造する森 挑戦する炎』です。『創造する森』は静かに、じっくり考えるイメージです。一方、いったん行動すると決めたら、問題を解決するには情熱が必要。それが『挑戦する炎』です。森は『熊本』、炎は『阿蘇』と地域のイメージとも関連しています。この精神に基づいて学習や教育、研究に励んでほしいと思います」

