株式会社ルミネは、「お客さまの思いの先をよみ、期待の先をみたす。」という経営理念を掲げています。首都圏の主要ターミナルを中心に、『LUMINE(ルミネ)』や『NEWoMan(ニュウマン)』など15の商業施設を運営しています。さらに、Eコマース事業(ネット通販)、グローバル事業(海外店舗)、ライフスタイル事業、商業施設の新規開発など、既成概念にとらわれない事業領域に挑戦し、新たな価値創造を提案している企業です。(ルミネのHPリンクはこちら

2024年4月、ルミネは2027年までに4,800億、そして2028年以降は5,000億円以上の店舗売上を目指すという経営目標を掲げた「中期経営計画」をスタートさせました。

この中期経営計画とともに発表されたのが、100年先の未来を見据え、グローバル&サステナブルを軸にした「10年ビジョン」です。

今回は、「ルミネの今から10年の歩みが100年先の未来を創る」と語る、ルミネの代表取締役社長の表 輝幸氏に、「10年ビジョン」を掲げた理由や、「グローバル&サステナブル」のビジョンのうち、海外戦略にかける想いについて語っていただきました。

ルミネの「10年ビジョン」に関する記事は全3回の連載でお届けします。第1回の今回は「グローバル」に焦点を当て、表社長の海外戦略への想いをご紹介します。次回第2回では、ルミネが掲げる「サステナブル」ビジョンの具体的な取り組みと未来像について第3回では「ニュウマン高輪」について詳しくご紹介します。

表 輝幸(おもて・てるゆき)氏
1988年JR東日本入社。2000年に日本レストラン調理センター社長にグループ最年少で就任。東京駅グランスタの開発などを牽引し、11年からルミネ常務取締役、専務取締役を歴任。16~21年にかけてJR東日本の執行役員事業創造本部副本部長、常務執行役員、マーケティング本部副本部長を経て、23年6月から現職。

「グローバル&サステナブル」
ルミネの10年ビジョンに込めた想い

——ルミネでは中期経営計画と同時に「グローバル&サステナブル」という「10年ビジョン」を掲げられていますね。このビジョンを掲げた理由を教えてください。

我々の10年ビジョンには、今の日本が抱えている課題が大きく関わっています。

現在、課題先進国といわれる日本は国際競争力も低下し、コロナ禍を経たことで将来への不安も大きくなっています。日本人が日本の強みを理解できておらず、世界のマーケットに向けた価値の発信力が弱いということが要因と考えています。しかし、世界では、日本文化や感性は驚くほど高く評価されています。

そのことに気づかなければ、文化や産業の後継者が育たず、他国にはまねできない日本の強みが失われてしまいます。一度失われたものは、再生することが難しい。

今回の10年ビジョンは、我々ルミネが日本の抱える課題の解決に挑戦するために策定したものです。ルミネのミッションは、「日本を元気にすること」です。この10年の取り組みが、日本の未来を100年後に世界に誇れるものにできるかどうかを左右すると考えています。

——ビジョンのスパンを10年に設定している理由はなんでしょうか?

ビジョンで掲げている「グローバル&サステナブル」を実現するためには、世の中に行動変容を起こしていく必要があります。社会のムードや文化、風土をつくっていくものなので、通常の中期経営計画のように、3年や5年というスパンで達成できるものではないと考えています。

たとえば、「サステナブル」一つをとっても、地球や未来のために必要な行動をと言われて久しいですが、実際に行動に移せていない部分も多いはずです。これは個人の意識だけが問題なのではなく、社会の動きや仕組みがサステナブルにマッチしていない部分があるためです。

世の中にしっかりと行動変容を起こすためには、少なくとも10年という時間が必要ではないかと考えています。

「グローバル」に関しても同じことがいえますね。

我々はアジアを“一つの大きなマーケット”ととらえています。この成長マーケットに対して日本の強みを武器にアプローチし、そこで日本の価値を磨き上げて、アジアのみならず世界に貢献していくことで日本を元気にできると考えていますが、これもまた、一朝一夕で達成できるものではありません。若い人たちに夢と希望にあふれる未来を継承していくためのマイルストーンとして、10年という期間を設定しています。

グローバル展開の拠点に、シンガポールを選んだ理由

ルミネシンガポール開業時 現地スタッフとの集合写真
ルミネシンガポール開業時 現地スタッフとの集合写真

——今回の中期経営計画や10年ビジョンにおいてまず行ったグローバル施策などはありますか?

世界各地に赴くことで「世界から見た日本の強み」を再確認、発見することです。1年ほどかけてさまざまな国の方とコミュニケーションを取ることで多くのことを学びました。

やはり、日本は伝統や文化、風土はもちろん、その中で培われた美意識やファッション文化、工芸などの世界的評価が極めて高いです。しかし、それを時代やマーケットに合わせる形で提案しないと、他国で受け入れてもらえません。

日本のよいものを今の時代やマーケットに合わせて、もう一度キュレーションしたりデザインしたり、ライフスタイルに合わせて提案したりということが、我々ルミネがやるべきことであると感じています。そうすることで、結果的に日本の伝統は続き、磨かれ、引き継がれていきます。

 ——その拠点として選んだのが、シンガポールなのですね。

 観光や経済、さらには国際競争力の面でも高い評価を受けている都市です。また、日本のファッションやライフスタイルに興味を持つ人が多く、世界中から人が集まる多様なカルチャーをもつ場所です。

こうした理由から、日本の文化や強みを世界に発信していく拠点として、2024年8月26日、シンガポールのラッフルズシティ・ショッピングセンターにルミネのグローバル旗艦店をオープンしました。

「アップデートされた日本の価値」に反響 
シンガポールで感じた手応え 

ルミネのグローバル旗艦店 ルミネシンガポール
ルミネのグローバル旗艦店 ルミネシンガポール

——シンガポールの旗艦店オープンでは、どのような部分に手応えを感じましたか?

ルミネシンガポールでは、ルミネが得意とする日本のトレンド感あふれるファッションをメインに提案していますが、店内中央の「ライフスタイルエリア」では、北陸新幹線の延伸に合わせて、福井県の伝統工芸品を集めたポップアップストアを開催しました。そこで日本の工芸品が現地の方々に受け入れられていることに手応えを感じました。

例えば福井県の越前焼の酒器が、お茶を飲むための食器として売れています。日本人からしたら、酒器はお酒を飲むためのものですが、シンガポールでそのままの用途で売ろうとしても彼らのライフスタイルに馴染まないのです。そこで、シンガポールで親しまれているお茶と掛け合わせて提案したところ、非常に人気が出ました。

シンガポールで好評の越前焼の酒器
シンガポールで好評の越前焼の酒器

また、越前和紙の廃材でつくったピアスや、鯖江の眼鏡の端材でできたカラフルなピアスも、軽くて品質が高く、日本らしさを感じるトレンド商品として人気が高かったです。素材や原料を無駄なくアップサイクルする日本人の精神性が、サステナブルであると評価されたことも、人気の要因だと感じています。

こうやって日本の伝統工芸品がアップデートされ、新たな価値を生み世界で評価されることで、日本の伝統文化が続いていくことにつながります。世界で評価されたものを、日本にフィードバックして好循環サイクルをつくっていくということもやっていきたいです。

 ——日本のプロダクトが世界に出ていくことは、インバウンドにも影響しそうですね。

福井県の工芸品へ高い関心を見せるシンガポールルミネのお客さまの様子
福井県の工芸品へ高い関心を見せるシンガポールのお客さまの様子

そうですね。実際、ポップアップストアで福井県のパンフレットを持ち帰る現地の方が多くいました。シンガポールの方は東京などの大都市にはすでに訪れたことがあり、ローカルなエリアや体験への興味も高い。現地で日本の価値を感じてもらえれば、ルミネをきっかけに、地方へ訪れる人を増やすことができる、という部分にも手応えを感じています。

このように、世界に向けて発信できる大きな価値を持つ日本の地域は福井県だけでなく、日本各地にあります。しかし、その地域の方々がその価値のポテンシャルにまだ気づけていないのです。

そこで、私たちルミネは、時代やグローバル市場に合わせた提案を通じて、日本の地域の価値を世界と結ぶ架け橋としての役割を果たしたいと考えています。

 “挑戦心”が地域の魅力を育て、世界へつなぐ

——日本の強みを世界に発信するため、大切にしていることはなんでしょうか?

日本が持つ課題に対して、楽しみながら解決に取り組むことです。苦しいことは長続きしません。行動変容を起こすには継続が大事です。「楽しく、素敵に社会課題を解決していく」「社会課題の解決を、多くの人がやりたくなる格好いいことに昇華する」ということはルミネだからこそ可能なことだと考えています。実は、この考え方も海外視察から得たものです。

ニューヨーク視察中のルミネ代表取締役社長 表 輝幸
ニューヨーク視察中のルミネ代表取締役社長 表 輝幸氏

たとえばニューヨークでは、アートが日常に入り込んでいて、特定の愛好家だけでなく一般の人たちも日常の中で当たり前にアートを楽しんでいます。

ルミネも同じように人間が持つ感性や創造力を使って、楽しみながら様々な課題解決に取り組み、発信していきたいと考えています。その実現のため、ルミネの社員には失敗を恐れず、チャレンジすることを大事にしてほしいです。

挑戦することがルミネの企業価値だと思っていますし、顧客インタビューにおいても、ルミネに一番失ってほしくないものは「挑戦心」と答えてくれた方々が多くいらっしゃいました。

 ——社員の方々に積極的に挑戦してもらうために、行っている取り組みなどはあるのでしょうか?

創造力や挑戦心をはぐくむための様々な仕組みを設けています。

10年ビジョンを掲げてからは、「グローバル」や「サステナブル」を意識したチャレンジを行う社員も多いですね。

たとえば、ルミネに出店しているショップスタッフから回収した不要な衣料品を福祉施設の方と協業してリデザインし、館内のサービスカウンターのベンチにアップサイクルする取り組みを行った館もあります。

それぞれが、自分たちの感性でその地域ならではのよいものを探し出して独自の価値づくりにチャレンジすることで、ルミネがその街の個性を発信できるようになります。そうすることで、その個性に共感する人たちが日本のみならず、世界中からその街にひかれて集まってくるようになるのです。

日本にある地域それぞれに独自の価値と、人が集まる好循環を生み出すことも、ルミネのミッションの一つだと認識しています。

グローバル展開で目指す
「新たなライフバリュー」とは

ルミネ代表取締役社長 表 輝幸
インタビューに答えるルミネ代表取締役社長 表 輝幸氏

——ルミネがグローバル展開で目指す、新たなライフバリューとはなんでしょうか?

我々ルミネは、「わたしらしくをあたらしく」をコーポレートメッセージとして掲げています。

それぞれの人が「わたしらしさ」を自由に磨き上げてアップデートしていく、その選択肢や可能性を引き出して、人や社会の未来に好循環を紡いでいくサポートをしたいのです。ファッションとは、生き方そのものです。ルミネでのショッピングや体験を通して、人生を豊かにする、生きるよろこびや楽しみを提案することで新たなライフバリューをクリエイトしていきます。

今回のグローバル展開で、すでに旗艦店を出しているシンガポールのみならず、多くの国の方々が「日本に来るとこんなに楽しい」「日本を知ることでさらに豊かな人生を送ることができる」という実感を得て、自分らしさや価値基準をアップデートする一端を担えればと考えています。

 ——最後に、ルミネの今後の展望を教えてください。

「100年後の人たちに感謝される、世界や後世に誇れる挑戦をしていきたい」と考えています。復元された東京駅が世界から評価される東京駅として存在しているのは、100年前、最初に東京駅をつくった方々の志や努力、挑戦心があったおかげです。同じように、我々ルミネは100年後の未来に向かって今、その礎を築いていかなければいけません。

高輪ゲートウェイシティの中核施設として「ニュウマン高輪」をオープンします。そのまちづくりプロジェクトへの挑戦もその一環です。

100年後の方々が、今の我々の志や想いを受け取って、さらに未来へ引き継いでいってくれるような挑戦を、ルミネが一丸となり、先頭に立って続けていきたいですね。

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