浪江の復興拠点に競走馬トレーニング施設 27年秋の開業目指す

酒本友紀子
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 福島県浪江町に国内最大級の競走馬のトレーニング施設が計画されている。東京電力福島第一原発事故で人が住めなくなり、昨春に避難指示が解除されたエリアを中心に整備され、2027年秋に開業の見通し。町は「人口増につながる」と歓迎する。

 計画しているのは、東京都中央区の会社「Blooming Stables」(吉谷憲一郎社長)。同社によると、事業地は帰還困難区域内の居住可能エリアである末森地区の特定復興再生拠点(復興拠点)が中心。山林や元は田畑と民家があった場所で、面積は東京ドーム9個分の約41万平方メートルだ。

 施設では、競走馬としてデビューする直前のトレーニング「後期育成」や、レース間に調整する「外厩(がいきゅう)」を担う。最大512頭を受け入れられる馬房のほか、1千メートルの直線坂路コースと1200メートルの周回コースを設ける。総事業費は約80億円で、福島県の原発被災地での事業を支援する国の補助金を活用。来春に着工したい考えだ。

 27年秋の事業スタート時には、調教や世話のスタッフら約130人を雇用する予定。単身者用の従業員寮(定員約80人)や社員食堂も整備し、担当の馬の変調にすぐ対応できるよう入寮者以外も町内に住んでもらう。

 同社は葛尾村での復興事業に関わった経験のある吉谷社長が、浪江町でも復興の一環として競走馬育成事業をしようと立ち上げた。背景の一つには、競走馬を擬人化した育成ゲーム「ウマ娘」の人気や、コロナ禍をきっかけにネット馬券の購入増を受けた競馬市場の活況がある。近年は8千頭近くの競走馬が毎年生まれているが、後期育成や外厩の施設が不足している。

 そうした施設をつくるにあたり、浪江町は好条件がそろっていた。日本中央競馬会(JRA)の馬はレースに臨む前、全国2カ所あるJRA施設に最低10日間いるルールがある。事業地は、常磐自動車道の浪江インターチェンジに近く、茨城県美浦村のJRA施設への交通アクセスが良かった。また、自然の勾配を生かして1千メートルもの直線コースをつくれる場所は関東平野では他に見当たらなかったという。

 吉谷社長は「エサや寝床用のわら、コースに敷くウッドチップなどを地元で調達したり、馬ふん堆肥(たいひ)で作物を生産したりして、さらに地元雇用が増える仕組みを考えたい」と構想を描く。将来的には引退競走馬の行き場がない問題についても取り組みたいとして、乗馬クラブや観光牧場、さらには相双地域の伝統行事「相馬野馬追」といった場で活躍できるよう仲介することなども考えている。

 浪江町の担当者は「(避難指示解除後も)居住人口がなかなか増えないなか、多くの移住者が見込める事業はありがたい。相馬野馬追や(馬の絵柄が代表的な)大堀相馬焼など馬の文化が根づく地域にとって親和性のある事業だ」と期待する。

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この記事を書いた人
酒本友紀子
大阪本社ネットワーク報道本部
専門・関心分野
人権、共生社会、司法、国策と地方