【連載】日本酒の未来を描く(下)
新谷酒造の杜氏(とうじ)、新谷文子さん(48)が病院勤めを辞め、酒造業に専念したのは2015年のことだ。ところがその後、第二の廃業の危機が訪れる。
蔵の梁(はり)が損傷し、倒壊寸前になっていることがわかったのだ。古い木造の蔵に冷蔵設備を入れたため結露が続き、傷んだらしい。
また大きな投資をしないと酒造りを続けられない。四季醸造蔵にしたときの借金も残っているのに、できるだろうか?
文子さんと、夫で社長の義直さん(57)は国際コンクールに挑戦しようと話し合う。受賞したら活路が開けるかもしれない。だめなら諦めるしかない……。
思いは届いた。全力で醸した酒は18年、フランスの日本酒コンクールKura Master純米酒部門で金賞、ブリュッセル国際コンクールSake Selection純米酒部門でプラチナ賞を受賞した。
夫妻は新しい蔵の建設を決断。完成を控え、義直さんから文子さんに杜氏(とうじ)を交代する。新しい蔵では、酒質の設計からやり直す。それには過去の積み重ねに縛られない文子さんがふさわしいと考えたからだ。
3本の指で洗米 「炭治郎と同じ」と笑われた
その後の道のりも、平坦(へいたん)ではなかった。コロナ禍のころは、外で飲む人が一気に減り、酒造りを休止せざるをえなくなった。
心が折れそうになったとき、文子さんが出会ったのがアニメ「鬼滅の刃」だ。主人公、竈門炭治郎の羽織は市松模様。そのころ、「わかむすめ」のラベルにも市松模様を使っていて、「鬼滅みたい」と言われた。そのとき初めて鬼滅の刃を鑑賞し、すっかりはまってしまった。
日本酒の生産量は、半世紀ほど前の4分の1弱。多くの酒蔵が苦境にあります。そんななか、世界に活路を見いだそうとする山口市の小さな酒蔵「新谷酒造」。そこで「わかむすめ」を醸す杜氏の苦闘を報告します。
シリーズ最新作の映画「猗窩…
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