陶磁器から工業製品へ発展した東海エリアのセラミックス産業
瀬戸市(愛知県)や美濃市(岐阜県)を中心に、古くから陶磁器産業が盛んな東海エリア。日本の陶磁器産業を代表する企業グループ「森村グループ」が拠点を置く、セラミックス産業の中心地だ。1904年(明治37年)に日本陶器合名会社(現在のノリタケカンパニーリミテド)が名古屋市で設立され、時代とともに技術進化を重ね、新事業を発展させることで日本の経済成長の原動力となってきた。
セラミックスとは、天然の鉱物など無機材料を混合して焼き固めた素材の総称だ。陶磁器はもちろん、ガラスやセメントもセラミックス素材の一種で、硬くて水に強く、耐熱性、耐食性、電気絶縁性に優れることから、さまざまな産業分野に応用されてきた。これに対して、近年、あらゆる産業分野でニーズが高まっているのが、高純度に精製した天然原料のほか、化学的プロセスにより合成した人工原料、化合物から作られるファインセラミックスだ。原料の種類や粒子の細かさ、焼き方などを変えることで優れた性質・機能を持たせることができ、製造技術の進化に伴い自動車、電機製品、情報通信、医療機器などあらゆる産業分野で活用が広がっている。
瀬戸や美濃、多治見、常滑など日本を代表する陶磁器の産地が集まる東海。高い技術が、セラミックス産業のルーツにある。写真は愛知県常滑市。
拡大を続ける産業規模シェア世界一の製品も多数
日本ファインセラミックス協会の産業動向調査では、2017年度の日本国内のファインセラミックス生産総額は過去最高となる2・7兆円。中国や韓国との国際競争は熾烈だが、地球規模で環境への配慮が課題になっており、産業規模は確実に成長している。
「業界全体を見ると、半導体に代表されるIT・電子部品関連での活用が中心で、東海エリアにもセラミック基板のMARUWAなどグローバルシェアナンバー1に輝くメーカーがあります。一方で、東海エリアのファインセラミックス産業の中心は、自動車排ガス浄化用セラミックスの日本ガイシをはじめ、自動車向けの製品開発に強みを持っていることが特徴。スパークプラグの日本特殊陶業、自動車向け粒子状物質低減装置のイビデンなど、海外にネットワーク拠点を広げ、世界トップシェアを誇る有力企業もあります」
東海のファインセラミックス産業は、排ガス浄化装置など自動車向けの製品に強みを持つ。
航空機部材として世界が注目 軽量・耐熱素材「CMC」
「高度で多様な特性を持つファインセラミックスは、自動車や航空機の軽量化・省エネルギー化に不可欠な素材といわれ、次代の中核的産業となるポテンシャルを秘めている」と語る長尾さん。とりわけ注目している新素材が、金属よりも耐熱温度が高く、はるかに軽いCMC(セラミックス基複合材料)だ。2012年にはGEとサフラン(フランス)が、SiC繊維の製造技術をもつ日本カーボンと合弁会社NGSアドバンストファイバーを設立。CMCを部材とする航空機用エンジンの製造を開始し、世界的に注目を集めている。
「米・欧を代表する航空機エンジンメーカーが、日本の中小企業に出資していることからも期待の高さがうかがえます。また、CMCのSiC繊維を製造できるのは日本カーボンを含めて2社のみ。どちらも日本企業で、開発競争では圧倒的に強い立場に立っています。自動車や航空宇宙産業の集積がある東海エリアを含むファインセラミックス業界全体で、部材開発に取り組む動きが生まれつつあり、今後さらに開発事例が増えていくでしょう」と長尾さんは分析する。
市場創出の期待が広がる「全固体電池」
また、EVなどに不可欠となる次世代電池の開発が盛んになっているが、セラミックスを電池に利用する企業も増えている。なかでも日本特殊陶業は、自動車の電動化への対応という側面から全固体電池の開発に注力。長尾さんは「新しい応用領域として市場誕生への期待感が高まっており、10年後にはスパークプラグに代わる、同社の主力製品になっている可能性もあり得る」と予想している。
自動車産業の構造変革に対応し、新たなニーズを掘り起こす必要性に迫られている点は工作機械産業と同様だ。とはいえ、「ファインセラミックスは原料の調合から成形、焼成、研削までが一貫して制御され、複雑な工程を必要とする精密産業。マニュアルを読めば簡単に作れるというものではない」と長尾さんは話す。東海エリアのファインセラミックス企業が培ってきた技術やノウハウは、新素材や新製品の研究開発競争において、大きなアドバンテージになるはずだ。
5年連続で生産総額は増加。2017年は過去最高の2.7兆円に達している。
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