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栄冠を手に
アスリートたちの物語

ROLEX & WECル・マンという
時間を走る
ニック・デ・フリースの冷めぬ情熱

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ロレックス テスティモ二-のニック・デ・フリース © Rolex/Thomas Laisné

積み重ねた時間の先に、つかんだ栄冠だった――。2026年、ル・マン24時間レース。オランダ出身のニック・デ・フリースが乗車したTOYOTA RACINGのTR010ハイブリッド7号車は、14番手スタートから追い上げ、総合優勝を果たした。勝機を見失う瞬間が何度もあったなかで、耐え続けた末につかんだ逆転劇だった。F1では、力を発揮しきる前にシートを去った。それでも失われなかった、状況を読み続ける力と、走り続ける意志。そのすべてが試されるル・マン24時間の核心について、書面インタビューで聞いた。(敬称略)


ル・マン24時間レースで証明した「再起動」

2024年のル・マン24時間レース。デ・フリースが乗車したTGRのハイブリッド7号車は僅差で優勝を逃した。2位の表彰台左から2人目がデ・フリース © Rolex/Landry Basile
2024年のル・マン24時間レース。デ・フリースが乗車したTGRのハイブリッド7号車は僅差で優勝を逃した。2位の表彰台左から2人目がデ・フリース © Rolex/Landry Basile

デ・フリースは、2022年に27歳でF1デビュー。翌23年にはレギュラードライバーとして参戦したが、思うような結果が得られず、シーズン途中の10戦でシートを失った。 その後、24年にトヨタ・ガズー・レーシング(TGR)に加入。主戦場を耐久レースに移し、ル・マン24時間レースに挑んだ。小林可夢偉、ホセ・マリア・ロペスとともに7号車を駆り、2位で表彰台に上がった。トップとの差はわずか15秒未満だった。

——F1を離れてから迎えた2024年のル・マン24時間レースで、「再起動」を印象づけた

私は幸運でした。(F1のチームを解雇されて)フリーになったとき、トヨタはとても協力的で、チームに加わるのは難しいことではありませんでした。

24年のル・マン24時間レースは雨が降ったりやんだりするタフなコンディションで、とても接戦でした。私はスタートから雨が降るまでハンドルを握りました。最初は我慢してチャンスを待ちました。(予選結果で)クラス最後尾スタートでしたし、無理にリスクを取る必要はないと考えたからです。

各車の間が開いてきてからは、少しずつ順位を上げることができました。気流の乱れもなくなり、よいペースで走れたと思います。

結果的に、優勝という目標はとても近かったけれど、遠かった。それでも、チームの素晴らしいパフォーマンスのおかげで、表彰台に立つことができました。トヨタに移って初めてのル・マン24時間レースで表彰台に立てたことは、私にとって特別な瞬間でした。

2024年のル・マン24時間レース。雨のピットレーン  © Rolex/Adam Warner
2024年のル・マン24時間レース。雨のピットレーン  © Rolex/Adam Warner

歴史と過酷さが織りなす「特別な舞台」

——ル・マン24時間というレースがもたらす価値について

ル・マン24時間レースは歴史と権威のある、最高峰のレースです。優勝者のことは誰もが覚えていますし、過去数十年を振り返れば数多くの偉大なレーサーの名が挙げられます。その一員になれることは、ドライバーにとって大きな夢です。ル・マン24時間で9回も優勝したロレックス テスティモ二ーで、元レーシングドライバーのトム・クリステンセンは伝説的な存在。まさに「ミスター・ル・マン」です。

非常に難しいレースで、優勝するのは簡単ではありません。どれほど困難な展開になっても、冷静さと忍耐を失わずに戦い抜かなければなりません。だからこそ、特別な価値があるのです。

ロレックス・テスティモニーのトム・クリステンセン(写真中央)、ジェイミー・チャドウィック(写真左)、ニック・デ・フリース(写真右)2026年、ル・マン24時間レース © Rolex/Andrew Baker
ロレックス・テスティモニーのトム・クリステンセン(写真中央)、ジェイミー・チャドウィック(写真左)、ニック・デ・フリース(写真右)2026年、ル・マン24時間レース © Rolex/Andrew Baker

——耐久レースを戦う上で大切にしていることは

長時間のレースでは、ドライバーは目の前の展開に引っ張られがちで、残り時間を見失ってしまうことがあります。その結果、焦りからミスをしてしまうことも少なくありません。

だからこそ、リスクとリターンのバランスを正しく見極める長期的な戦略が不可欠です。それが耐久レースの本質だと感じています。私自身、経験を重ねる中で、レースごとにそのバランスを調整する必要があることを学びました。勝ち抜くには、タイミングと忍耐がすべてです。忍耐は、耐久レースにおいて最も重要な要素のひとつだと思います。

ル・マン24時間レースは、本番前の練習や準備期間も含めて、1週間以上にわたる長いイベントです。レースが始まる頃には、テスト走行やメディア対応で、すでに疲労が蓄積している状態です。だからこそ、その疲労をどう管理するかもひとつの重要なポイントになると思います。

2026年のル・マン24時間レース。ドライバー交代に入るロレックス テスティモニーのニック・デ・フリース © Rolex/Adam Warner
2026年のル・マン24時間レース。ドライバー交代に入るロレックス テスティモニーのニック・デ・フリース © Rolex/Adam Warner

家族と追った夢、
その先へ

——2023年、F1でフル参戦のチャンスを得ながらも、短期間で結果を残せず、シーズン半ばの10戦でシートを失った

F1でのチャンスを早々に失いましたが、F1が人生の目的地ではありませんでした。

——その後、トヨタからオファーを受け、耐久レースを舞台に新たなキャリアを歩み始めた

年齢を重ね、さまざまな経験を積む中で、物事をより広い視野で捉えられるようになりました。F1での経験は辛いものでしたが、長くネガティブでいることなく、挑戦を続けようと気持ちを切り替えました。今では、耐久レースのドライバーとして、新たなスタートを切る機会を得られたことを、光栄に思っています。

父親が買ってくれたゴーカートに乗って遊ぶ幼い日のニック・デ・フリース=本人提供
父親が買ってくれたゴーカートに乗って遊ぶ幼い日のニック・デ・フリース=本人提供

——レーシングドライバーとしての原点は

5歳のとき、父が小さなゴーカートを買ってくれたのがすべての始まりです。車の販売に携わる一方で、レースに情熱を燃やす人でした。私をこの世界に導くため、献身的に支え続けてくれました。父がいなければ、この道には進んでいなかったと思います。レーシングカート時代には、オランダ、ベルギー、ドイツのカートコースへ家族で転戦していました。そうした日々は、私と父、妹で共有したライフスタイルであり、夢でもありました。

モータースポーツは、日常的に実車で練習できる競技ではありません。限られた走行機会の中でスキルを磨くには、環境や状況に応じて対応する「適応力」が不可欠です。カートから始まり、さまざまなカテゴリーを経験してきた中で、その力が磨かれてきたと感じています。それが、今の自分につながっています。


勝利を刻む時計、
つながり続ける絆

2026年のル・マン24時間レースで優勝ドライバーに授与された優勝トロフィーと刻印入りのロレックス オイスター パーペチュアル コスモグラフ デイトナ© Rolex/Adam Warner
2026年のル・マン24時間レースで優勝ドライバーに授与された優勝トロフィーと刻印入りのロレックス オイスター パーペチュアル コスモグラフ デイトナ
© Rolex/Adam Warner

——ロレックスは2001年からル・マン24時間レースのエクスクルーシブメジャーパートナーおよびオフィシャルタイムピースを務めている

WEC(FIA世界耐久選手権)やル・マン24時間に参加する中で、サーキットの至るところでロレックスのロゴを目にしてきました。モータースポーツにおいても時計製造においても非常に重要なブランドであり、その存在はル・マン24時間の価値を支えていると感じています。また、「精度」「タイミング」「耐久性」、そして「長時間レースという旅」は、ロレックスと多くの共通点があります。

——ル・マン24時間レースでは優勝者にロレックスの腕時計「コスモグラフ デイトナ」が贈られる

これほど困難なレースで勝利を収めたあとに手にする、最高のご褒美であり、お金では決して手に入れられないトロフィーです。時計の裏に刻まれる刻印は、勝者だけに与えられるもので、自分がチームとともに成し遂げた勝利を思い出させてくれるでしょう。それを一生身につけていく——。この時計を手にすることは、どのドライバーにとっても特別な意味をもつはずです。

私が初めてロレックスの時計を手に入れたのは2019年でした。フォーミュラ2でチャンピオンを獲得した後に、その達成の証しとして購入しました。見るたびに自分の歩みを思い出させてくれます。

また、ずっとレーサーとしての私を支え続けてくれた父と妹にも「Three Musketeers(三銃士)」と刻印したロレックスの時計を贈りました。とても特別な思い出です。


諦めなかったレース、
たどり着いた頂点

2026年のル・マン24時間レースで、トロフィーを掲げるトヨタ7号車のドライバーたち© Rolex/Adam Warner
2026年のル・マン24時間レースで、トロフィーを掲げるトヨタ7号車のドライバーたち
© Rolex/Adam Warner

2026年6月13〜14日に開催されたル・マン24時間レース決勝。デ・フリースを擁するTOYOTA RACINGのTR010ハイブリッド7号車は、14番手スタートという厳しい状況から逆転優勝。トヨタは4大会ぶり、通算6度目の栄冠を手にした。

——見事な逆転勝利だった

幸運が重なったかのような気分です。偉業を達成できて、安堵と感謝の気持ちでいっぱいです。レース中は何度も「優勝のチャンスはない」と感じる瞬間があり、WECのポイントを確実に持ち帰ることだけに集中していました。それでも最後まで踏ん張り続けたことが、この結果につながったのだと思います。

※世界耐久選手権(WEC)は年間王者を争うシリーズで、各レースの結果に応じてポイントが与えられ、合計ポイントで順位が決まる。

——2026年にロレックスのテスティモニーになった

サルト・サーキットでロレックスのロゴを目にすることは、今の私にとって特別な意味を持っています。テスティモ二―として、ル・マン24時間レースの勝者になれたことを誇りに感じています。本当に幸せです。ロレックスのレガシーに貢献し、自分にとっても、ロレックスにとっても特別な成果を残せた。そのことに、深い名誉を感じています。


ニック・デ・フリース(Nyck de Vries)
写真=© Rolex/James Moy

ニック・デ・フリース
(Nyck de Vries)

1995年2月、オランダ出身。カートで頭角を現し、国際大会で実績を重ねる。2019年にFIA F2でシリーズチャンピオンに。2020-21年シーズンにはフォーミュラEで王座に輝いた。22年にF1でデビューし、翌23年はレギュラードライバーとしてフル参戦するも、シーズン途中でシートを失う。その後、24年にトヨタ・ガズー・レーシング(TGR)に加入し、主戦場を耐久レースへ移した。WECではトップクラスであるハイパーカーカテゴリーで戦い、同年、ル・マン24時間レースで総合2位を記録。26年にロレックスのテスティモニーに就任。同年6月のル・マン24時間でTOYOTA RACINGから出場し、総合優勝を果たした。


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