遺産分割調停とは?
遺産分割調停は、遺産分割協議がまとまらないときに、家庭裁判所に申し立てて行う手続きです。調停では、家庭裁判所が中立的な立場から遺産の分割案を提示し、相続人全員の合意を目指します。

遺産分割調停の申し立てをすると、家庭裁判所によって「遺産分割調停委員会」が立ち上げられ、各相続人からの意見聴取が行われます。
| 委員会の構成員 | ・裁判官1人と調停委員2 人 |
|---|---|
| ・調停委員は、弁護士などの相続問題に詳しい専門家から、通常は男女1人ずつが選任される | |
| 聴取される内容 | ・遺産分割に関する意向 |
| ・生活や資産の状況 | |
| ・被相続人からの生前贈与 | |
| ・被相続人の財産の維持、増加に貢献した寄与分 など |
遺産分割調停委員会は、各相続人の事情や意見を考慮し、公平な遺産分割案を提案します。相続人全員がこの分割案を受け入れると、合意内容を記載した「調停調書」が作成されます。
調停調書は、「相続登記(不動産の名義変更)」や「預貯金の払い戻し」といった手続きに利用することが可能です。また、確定判決と同様の効力を持つため、将来的な紛争を防止する効果も期待できます。
(調停の成立及び効力)
第二百六十八条 調停において当事者間に合意が成立し、これを調書に記載したときは、調停が成立したものとし、その記載は、確定判決(※別表第二に掲げる事項にあっては、確定した第三十九条の規定による審判)と同一の効力を有する。
出典:家事事件手続法|e-Gov ※詳細は「家事事件手続法」参照
ただし、遺産分割調停で提示される分割方法は、法的な拘束力を持たない「提案」に過ぎません。そのため、相続人のうち1人でも合意しない場合、調停は不成立となります。
調停不成立となった場合、法的な強制力を持つ「遺産分割審判」に移行し、裁判官が遺産の分割方法を決定します。
遺産分割調停のメリット・デメリット
相続トラブルが発生したとき、遺産分割調停をすることには、以下のようなメリット・デメリットがあります。
| メリット | ・調停委員という第三者が間に入ることで、感情的な対立を避け、冷静な話し合いができる |
|---|---|
| ・法律の専門家である裁判官と調停委員が、法的な観点から妥当な解決策を提案してくれる | |
| ・意見聴取の場では、原則相続人同士が直接顔を合わせないため、精神的な負担を軽減できる | |
| ・調停は非公開で行われるため、プライバシーが保護される | |
| デメリット | ・調停の成立までに時間と費用がかかる |
| ・提案された分割案には強制力がない |
基本的にはメリットのほうが大きいため、遺産分割でもめている場合には、遺産分割調停を検討することをおすすめします。
遺産分割調停に進むべき状況の例
遺産分割について、下記のような状況で悩んでいる人は、遺産分割調停が解決の糸口になる可能性があります。
これらの状況に当てはまる人は一度、遺産分割調停を検討してみてはいかがでしょうか。
遺産分割調停で弁護士に依頼する際のチェックポイント
遺産分割調停を有効に進めるためには、弁護士のサポートがあると安心でしょう。ここでは、弁護士選びで失敗しないためのチェックポイントとして、以下の三つを解説します。
- 相続の専門性が高いか?
- 安心して話せる人柄か?
- 料金体系は明確か?
チェック1. 相続の専門性が高いか?
相続問題は、民法・相続税法・家事事件手続法といった法律が複雑に関係するため、専門性の高い弁護士を選ぶことが重要です。
知識や経験が不足している弁護士に依頼した場合、適切なアドバイスを受けられず、トラブル解決まで余計な時間がかかるおそれがあります。
そこで弁護士を選ぶ際には、「相続問題に精通しているか」をよく確認することが重要です。専門性を見極めるには、以下の方法があります。
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事務所のウェブサイトで、相続問題の解決実績を確認する
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ブログやSNSをチェックし、相続に関する情報発信の内容や頻度を確認する
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弁護士本人と会って、相続問題に対する知識・経験・解決事例などを尋ねる
また、相続問題を円滑に解決するためには、税理士・司法書士・行政書士・不動産鑑定士との連携が必要なケースもあります。
弁護士を選ぶ際は「ほかの士業との連携体制が整っているか」も確認しましょう。
チェック2. 安心して話せる人柄か?
遺産分割調停では、弁護士に自身の財産状況や家族関係といったプライベートな情報を細かく伝え、親族間の感情的な対立や過去のトラブルなどを共有する必要があります。
そのため、安心して相談できる、話しやすい人柄の弁護士を選ぶことが重要です。弁護士との相性は、以下の方法で確認できます。
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ブログ・SNS・YouTubeなどの発信内容をチェックし、人柄や考え方を知る
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初回相談を利用して弁護士本人と会い、自分との相性やコミュニケーション能力を見極める
弁護士への相談は「初回無料」の場合もあるので、積極的に活用してみましょう。
チェック3. 料金体系は明確か?
弁護士に遺産分割調停を依頼する場合、費用が高額になることが少なくありません。
また、 弁護士費用は、依頼する内容や事務所によっても大きく異なるため、事前によく確認することが重要です。料金体系があいまいだと、後から想定外の費用が発生し、トラブルに発展する可能性もあります。
弁護士費用を確認する際は、以下の3点を心がけてください。
- 事務所のウェブサイトで料金体系を確認し、料金の計算方法や内訳を把握する
- 依頼前に必ず費用の見積書を作成してもらい、着手金・事務手数料・報酬金などの明細を確認する
- 追加費用が発生する条件や金額について、事前に明確な説明を受ける
遺産分割調停の流れ
遺産分割調停は「申し立て」から「調停成立」まで、次の6ステップを経て進みます。
- 調停の申し立て
- 調停期日の通知
- 初回の調停期日
- 調停期日の継続
- 調停案の提示
- 調停成立
ここでは、各ステップについて詳しく解説します。
ステップ1. 調停の申し立て
遺産分割調停を始めるには、まず家庭裁判所に調停の申し立てをします。申し立てをする際の「申立人・申立先・必要書類・費用」は下表のとおりです。
| 申立人 | ・相続人のうちの1人もしくは複数人が、ほかの相続人全員を相手方として申し立てる |
|---|---|
| 申立先 | ・原則として、相手方となる相続人のうちの1人の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てる |
| ・例外として、相続人全員が合意した場合に限り、別の家庭裁判所に申し立てることもできる(※この場合、相続人全員の合意を示す「管轄合意書」の提出が必要) | |
| 必要書類 | ・遺産分割調停申立書 |
| ・事情説明書 | |
| ・被相続人の出生から死亡までの連続するすべての戸籍謄本 | |
| ・相続人全員の戸籍謄本 | |
| ・相続人全員の住民票または戸籍附票 | |
| ・遺産に関する資料(不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書、預貯金の通帳、残高証明書等) など | |
| ※被相続人と相続人の関係によって、上記以外の書類も必要です。詳細は、裁判所のウェブサイトをご確認ください。 | |
| 費用 | ・収入印紙:被相続人1人につき1,200円分 |
| ・連絡用の郵便切手代(相手方の人数分) |
ステップ2. 調停期日の通知
遺産分割調停の申し立てから1~2週間ほどで、家庭裁判所から「調停期日通知書」が送付されます。調停期日通知書には、以下の情報が記載されています。
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調停の期日(調停の日時)
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調停の場所
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持ち物
弁護士に依頼している場合は、速やかに調停期日を伝え、今後の対応を相談しましょう。
ステップ3. 初回の調停期日
指定された期日に家庭裁判所へ出向き、初回の調停に臨みます。
初回期日では、まず相続人全員で遺産分割調停の手続きに関する説明を受けます。
ほかの相続人と顔を合わせることに抵抗がある場合は、事前に家庭裁判所に提出する「進行に関する照会回答書(出典:裁判所ホームページ)」にその旨を記載することで、配慮してもらえますのでご安心ください。
手続きの説明後、相続人は順番に個別の部屋に呼ばれ、調停委員から遺産分割に関する意向や、それぞれの事情について詳しく聞かれます。 ここでは自身の主張を冷静かつ明確に伝えるとともに、調停委員からの質問には正直に答えるようにしましょう。
なお、弁護士に依頼している場合は、調停に同席してもらうか、やむを得ない事由があるときは代理で出席してもらうことも可能です。
通常、1人あたり30分程度の聴取が2回行われ、その後に調停委員から調停の進め方や今後の見通しについて説明があります。
以上のすべてのやりとりに要する時間は、一般的に1~2時間程度です。
ステップ4. 調停期日の継続
初回が終わった後も調停期日は継続され、相続人たちは1~2カ月に1回程度のペースで家庭裁判所に出向くことになります。
遺産分割調停委員会は各相続人からの意見聴取を重ねて、それぞれの事情や要望を踏まえ、全員が納得できる遺産分割案を模索していきます。
この調停期日は、統計上6~10回開かれることがもっとも多いとされています。
ステップ5. 調停案の提示
遺産分割調停委員会は、相続人全員が合意できる可能性が高いと判断した段階で、具体的な分割内容を記載した「調停案」を書面で提示します。
その後は相続人に、調停案の内容についての検討期間が与えられます。
弁護士に依頼している場合は、調停案の内容を弁護士と十分に検討し、不利な条件が含まれていないかなどを慎重に確認しましょう。
ステップ6. 調停成立
相続人全員が調停案の内容に合意すれば、「調停成立」です。その後、家庭裁判所によって「調停調書」が作成されます。
調停調書は、確定判決と同様の効力を持ち、記載された内容に基づいて遺産分割を行うことになります。
一方、相続人のうちの1人でも調停案に合意しない場合、調停は「不成立」です。この場合は、「遺産分割審判」という次の手続きに移行することになります。
【調停が不成立の場合】遺産分割審判
遺産分割審判とは、遺産分割調停が不成立に終わった場合に、家庭裁判所が遺産の分割方法を決定する手続きです。
調停は、相続人同士が合意を目指して話し合いをするものですが、審判では裁判官が法律に基づいて、遺産の分割方法を強制的に決定します。
審判の内容は「審判書」にまとめられ、相続人の意向に関わらず、法的な強制力を持つことになります。
遺産分割審判では、原則として法定相続分に基づいて遺産が分割されるため、相続人の個別の事情は考慮されにくい傾向にあります。 また、相続税の節税についても、基本的には考慮されません。
遺産分割調停に関するよくある質問
最後に、遺産分割調停に関して、よく寄せられる質問とその回答をご紹介します。
Q1. 遺産分割調停は弁護士を雇わなくてもできる?
遺産分割調停は弁護士に依頼せず、ご自身のみで行うことも可能です。
しかし、遺産分割調停の手続きは複雑で、多くの時間と労力を要します。また、相続人同士の感情的な対立がある場合、自分1人で解決に向けて進めていくことは、精神的な負担も大きいと考えられます。
このため、基本的には弁護士のサポートを受けるのがおすすめです。
実際に、日本弁護士連合会の統計によると、2023年の「遺産分割調停事件における代理人弁護士の関与状況(出典:基礎的な統計情報2024年|日本弁護士連合会)」は80%を超えています。
Q2. 遺産分割調停に入る前に準備しておくべきことは?
遺産分割調停をスムーズに進めるため、事前に以下の二つを終えておきましょう。
- 法定相続人の確定
- 被相続人の財産調査
これらの情報は、調停の申立時に家庭裁判所に提出する書類に記載する必要があります。
法定相続人と相続財産の確認方法は、以下のコンテンツをご参照ください。
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法定相続人とは?範囲や相続割合、確認するときの注意点について解説
相続財産調査は自分でできる?対象となる財産や調査方法を解説
Q3. 遺産分割調停を有効に進めるコツは?
遺産分割調停を有効に進めるためには、いくつかのポイントがあります。
まず、調停委員に対して礼儀正しく接し、誠実な態度で臨むことは当然のこととして心がけましょう。うそをついたり、感情的に反論したりすることは避けてください。
そのうえで、調停を進めるためにもっとも有効なのは「弁護士にサポートを依頼すること」です。弁護士は、相続に関する豊富な知識と経験に基づいて、調停の戦略を立て、的確なアドバイスをしてくれます。
また、調停をスムーズに進めるためには、ある程度の「譲歩」が必要になることも理解しておきましょう。
調停は、あくまで相続人同士の合意を目指す手続きであり、自身の主張だけを押し通すことは難しい場合があります。そこで、ほかの相続人の意見にも耳を傾ける姿勢を持ち、譲れる部分は譲ることで合意に近づきやすくなります。
Q4. 遺産分割調停にかかる費用は?
遺産分割調停にかかる費用は、ご自身で手続きを行う場合と、弁護士に依頼する場合で大きく異なります。
まず、ご自身で手続きを行う場合には、主に以下の費用がかかります。
| 費目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 収入印紙代 | 被相続人1人につき1,200円 |
| 連絡用の郵便切手代(相手方の人数分) | 数千円程度 |
| 申し立てに必要な戸籍謄本などの取得費用 | 数千円程度 |
| 家庭裁判所までの交通費 | 実費 |
弁護士に依頼する場合は、争っている遺産の額などによって費用が大きく変動しますが、一般的には100万円を超えるケースも少なくありません。費用の詳細については、各法律事務所のウェブサイトなどで確認することをおすすめします。
なお、弁護士法人ベンチャーサポート法律事務所の料金表は、下記のページでご確認いただけます。
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Q5. 遺産分割調停はどれくらいの期間がかかる?
遺産分割調停にかかる期間は、事案によって大きく異なりますが、一般的に申し立てから調停成立まで1年程度かかることが多いです。
調停が難航してなかなか合意に至らない場合や、調停が不成立となり審判に移行する場合には、さらに長期間を要することもあります。
なお、相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10カ月以内)までに遺産分割がまとまらない場合は未分割の状態で申告を行い、後日、遺産分割が完了した際に修正申告または更正の請求をします。
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相続税の申告期限に間に合わない場合の対処法と期限後申告について
Q6. 調停にどうしても出席できないときは?
指定された調停期日に、どうしても都合がつかない場合は、速やかに家庭裁判所に連絡してください。そして、可能な限り調停期日の変更を申し立てることをおすすめします。
期日の変更が難しいとき、弁護士に依頼しているのであれば、代理で出席してもらうことも可能です。
無断で欠席すると、調停委員からの印象が悪くなり、調停が思うように進まない可能性もあります。やむを得ない理由で欠席する場合は、事前に裁判所に連絡し、指示を仰ぐようにしましょう。
Q7. 行方不明の相続人がいるとき、調停はどうなる?
遺産分割調停は、原則として相続人全員が参加しなければなりません。
もし、相続人のなかに行方不明者がいる場合は、以下のいずれかの手続きを行う必要があります。
| 不在者財産管理人の選任 | ・不在者財産管理人とは、行方不明の相続人に代わって、その財産を管理する人のこと |
|---|---|
| ・家庭裁判所に申し立てることによって、不在者財産管理人を選任してもらえる | |
| ・選任された不在者財産管理人は、行方不明の相続人に代わって遺産分割調停に参加できる | |
| 失踪宣告 | ・失踪宣告とは、行方不明者の生死が長期間(7年以上)にわたって不明である場合に、家庭裁判所がその者を法律上死亡したものとみなす制度 |
| ・失踪宣告を受けると、その者は相続人ではなくなるため、遺産分割調停に参加する必要がなくなる |
ただし、これらの手続きは遺産分割調停とは別途で行う必要があるため、さらに時間と費用がかかる点に注意が必要です。
Q8. 遺産分割調停をせずに審判の手続きに入れる?
法律上は遺産分割調停を経ず、いきなり遺産分割審判を申し立てることも可能です。
しかし、実務上は遺産分割審判を申し立てても、裁判所の判断でまずは遺産分割調停を行うよう指示されるケースがほとんどです。
遺産分割調停で相続トラブルを解決しよう
今回は、遺産分割調停について解説しました。
相続トラブルが発生したときは、遺産分割調停の申し立てをすることで、話がまとまることがあります。相続人同士の対立でお困りの方は、このコンテンツの内容を参考にして、遺産分割調停を申し立てることも検討してみてください。
なお、遺産分割調停の手続きは複雑で、専門的な知識も必要となるため、弁護士にサポートを依頼すると安心して臨めます。 初回相談を無料で受け付けている法律事務所もありますので、まずは一度弁護士に相談し、調停の必要性や見通しについてアドバイスを受けてみてはいかがでしょうか。



