中納良恵の音off

【第4回】 気づけば粉々に

EGO-WRAPPIN’ヴォーカリスト中納 良恵

子供の頃味わったあの不思議な感覚を思い出したい

私が育ったのは大阪の東 大東市という名の町で
飯盛山と生駒山が連なる山沿いの住宅地
空気が特別綺麗なわけでもなく 夜空に輝く星もさほどなく
光り輝くものと言えば
生駒山上遊園地のネオンと
山の中腹に立つ『焼肉のはや』の看板くらいだった
田舎でも都会でもないその町を引き破るように伸びる
外環状道路は南から北へ 北から南へと車を忙しく走らせ
まるで命を守るために体内に張り巡らされた血管のように
車は血流となり日々町を活気付けている
夜になれば暴走族の爆音パラリラサラウンドが
風に巻き上げられ 飯盛山に打ち返し
こだました後 町は口を閉じて黙りこむのだった
私はその外環沿いにある 幼稚園 小学校 児童会 中学校と通い育った
外環に沿って建てられた馬鹿でかい鉄塔が
それぞれの校庭の一部をでかでかと占拠し
仁王立ちをする神将のように私たちの毎日を見下ろした
あの頃 空を見上げるたび 窓から外を眺めるたび
鉄塔はいつも視界の中にドカンと居座り
今でも学校の夢を見るたびに
鉄塔は相変わらず鎮座し 折れたり 倒れてきたり 山に突き刺さったり
夢の中でありえない演出を施してくる

子供の頃は今と違い生まれてきて間もないせいか
異次元と繋がったような不思議な感覚をよく味わった
休み時間校庭で遊んでいたら いきなり自分の両手が気になり じっと眺めていたら
自分のものでもない誰かのものに見えてきて 魂と肉体が離れて行く刹那をよく見た

言葉では何とも表現し難いのだが
自分の両手が大きくなったり小さくなったりして
砕けてバラバラになって粉々になって散ったかと思うと
一瞬にしてまた集まり どんどん大きなものに形成されて行くと言う
そのよく分からない感覚の反復を見ながら
でも私は至って怖くもなく驚きもなく
いつも冷静に心の中で
『またいつか自分の両手を見ながらこうして同じ刹那を感じるのだろう
人生はこうして過去に迎え入れられたり
未来へ引き寄せられたり
今に引き裂かれながら繰り返して生きているけれど
実は本当の自分はどこか遠い場所に存在しているんじゃなかろうか、、』
なんて冷めた感覚を覚えるのだった
大人になって行くと自分の両手を見ても何も感じなくなったのだが
あのバラバラと崩れて行く感覚を思い出すたびに思うことは
人は経験を重ねて培って 何かを作り上げて行くと思われているけれど
実は全く逆で常に壊れ 分解され
果ては粉々に散って行くだけなんじゃなかろうか、、
突き棒で ところてんをぎゅっーーーっと押し出すように
日々は何かによってニョロリと突き出され
それでも何かに抗うために散った破片をつなぎ合わせて
果ては不格好なオブジェを作り上げるのだ

そんな気分に浸る中
サラサラに砕かれて巻き散らかされるようなサウンドを
今回も気まぐれに紹介しようと思います

まずはじめに
イギリスの実験音楽家JAMES KIRBYの別名義
THE CARETAKERの『Everywhere At The End Of Time』
これはシリーズ化されているもので Stage 6を紹介します
一聴した時 え? ここどこですか、、?って思うよね
歌もないしリズムもない世界
行ったことないですが宇宙とかあの世ってこんな響きに包まれているのかもしれないと
思うほど崇高な旅に連れていってくれます
アートワークも秀逸!!

そして
Kali Maloneの『The Sacrificial Cade』

出典:https://kalimalone.com/

ストックホルムに拠点を置くアメリカ人女性
ミニマルアーティスト そして美人
このアルバムはパイプオルガンのみの演奏
ノスタルジックな和音と広域に広がる音の倍音
が瞑想状態にしてくれます
緩むよね〜

そして
this heatの『this heat』

UKのパンクバンドです
言葉で物申すわけではなく
音で混沌を挑発する様が
とても危うくていい
もう巻かれてしまえ


The Philip Koutev National Folk Ensemble『BULGARIAN POLYPHONY』

ブルガリアの民族音楽
独特の和音と旋律と律動による合唱で
まさに自然と共鳴した肉体の境地
脳味噌がサラサラに砕かれて
大自然の肥料にでもなってしまえ

最後に
STEVE REICH『DRUMMING』

出典:https://www.stevereich.com/

アメリカの作曲家
ミニマルミュージックの代表者と言われているけれど
この作品は(1971年)はミニマリズムからの離脱として
その後の音楽性を方向付けた作品
機械のリズムの精確は不自然で音楽的ではないことに気づき
民族音楽やガーナの打楽器音楽 バリのガムラン音楽を学ばれたライヒ先生
リズムの反復とリフのズレが生み出す美しいテクスチャーは
外界と自分の境界を曖昧にする
もう忘我状態 気づけば粉々に

子供の頃のあの不思議な感覚を思い出したいけど思い出せない
素で音に頼るしかない
もしかしたらあの不思議なトリップは 校庭を占拠していた鉄塔の電磁波で
脳味噌がやられていただけなのかもしれないな
もう もはやどちらでもいいな
とにかく不格好でかっこいいオブジェになりたい

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