今村翔吾さん直木賞、新庄のファン歓喜

熊谷功二 上月英興
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 第166回芥川賞・直木賞は、直木賞候補者5人のうち2人が山形県内にゆかりがあり、注目を集めた。新庄藩の侍火消したちを描いた時代小説「羽州ぼろ鳶(とび)組」シリーズで人気作家となった今村翔吾さんと、県内在住の柚月裕子さん。19日の選考会で今村さんが受賞者の1人に決まり、新庄市内のファンは喜びに酔いしれた。

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 「羽州ぼろ鳶組ファン倶楽部(くらぶ)」のメンバー7人は19日夜、新庄市内のレストランに集まり、インターネット中継を見守りながら、その時を待った。直木賞の受賞発表の瞬間、「オー」「やったー」などと歓声を上げ、ビールグラスをあげた。代表で市職員の渡辺安志さん(60)は「今回の作品を読んだ時、必ず受賞すると思っていた。こんなにうれしいことはない」。

 今村さんは京都府生まれで、受賞作「塞王(さいおう)の楯(たて)」(集英社)は新庄が舞台ではない。それでも渡辺さんは「今村先生は新庄の宝です」と話す。渡辺さんはツイッター上にも倶楽部を立ち上げ、フォロワーを全国で約750人集めている。

 今村さんは、時代小説「羽州ぼろ鳶組」シリーズの開始からずっと新庄市とのつながりを深めてきた。夏の「新庄まつり」を訪れたり、新庄の中高生向けに文学塾を開いたり。昨年は、市から「しんじょう観光大使」の第1号に任命されたほか、2025年の新庄開府400年に向け、記念事業実行委員会の総合アドバイザーに選ばれた。新庄を「第2のふるさと」と表するまでになった。

 昨年の新庄まつりで山車(やたい)の題材に「ぼろ鳶組」を選んだ上茶屋町の若連の代表、神藤直人さん(40)は「新庄という名前が全国に出る機会はなかなかない。今村先生は我々に代わって新庄を発信しているようなものです」。山尾順紀市長も「市民にとっても大変誇らしく感じます。喜びを市民の皆さまと分かち合うとともに、今村さんが今後ますますご活躍されることをお祈りします」などとコメントを出した。

 市は20日、庁舎の玄関口に今村さんの受賞を祝う横長の紙を取り付けるとともに、展示コーナーでも作品や資料を置いた。

 市立図書館では昨年12月から受付のそばに今村さんの著書や関係書籍を展示するコーナーを設けてきたが、受賞から一夜明けた20日、新たに受賞の新聞記事や関係資料を加えた。

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 柚月裕子さんは、初の医療小説「ミカエルの鼓動」(文芸春秋)が直木賞の候補作に選ばれたが、受賞は逃した。同賞候補は、暴力団と対決する刑事を描き、日本推理作家協会賞を受けた2015年の「孤狼の血」以来、2回目だった。

 柚月さんは、第一線の作家や大手出版社の編集者らが講師を務める山形市内の「小説家(ライター)になろう講座(現・山形小説家・ライター講座)」に通い、プロ作家になった。

 同講座の「兄弟子」にあたる小説家の深町秋生さん(46)=山辺町=は「柚月さんは好奇心旺盛で、勉強したら身に付けるのがものすごく早い。賞を取らなくても業績や評価、売れ行き、知名度、全てを持っている」と指摘。深町さんも作品が映画化されるなど活躍しているが、「山形にいても井の中の蛙にならずに済み、自分も頑張らなきゃと思いますね」と語る。

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 直木賞では川西町出身の井上ひさし(1934~2010)や鶴岡市出身の藤沢周平(1927~97)、芥川賞では同市出身の丸谷才一(1925~2012)……。山形県出身の芥川賞・直木賞受賞者には、文壇の大家もめだつ。

 県出身ではないが、県内を作品の舞台に選んだ縁の深い受賞者もいる。「放浪の作家」と呼ばれた森敦(1912~89)は妻の郷里の庄内地方を転々とし、注連寺(鶴岡市)で過ごした一冬の体験を元に執筆した「月山」で、73年下半期の芥川賞を受けた。

 イリオモテヤマネコの発見にも貢献した動物文学者の戸川幸夫(1912~2004)は、旧制山形高(現山形大)時代の経験を元にした「高安犬物語」で54年下半期の直木賞を受けた。高畠町高安地区を中心にかつて繁殖し、クマ猟に使われた「高安犬」の「最後の1頭」を描いた作品だ。

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