高市早苗前経済安保相が、外国人観光客を巡り、奈良のシカに暴行をしているなどと主張した発言が波紋を広げている。現場を歩き、シカをめぐる現状を探った。
9月末の平日、東大寺や春日大社などがある奈良公園(奈良市)を訪ねた。
中国語や英語、韓国語など、様々な言語が聞こえる。シカに餌のシカせんべいを与えたり、一緒に記念撮影したりする外国人観光客たちだ。
その中に時折、多数のシカに囲まれ、慌てて手で押しのけたり、角で小突かれ、驚いて手にしたペットボトルで追い払おうとしたりする人の姿もみかけた。
奈良県の資料では、県内を訪れる外国人客のうち中国人は最多の15・3%(2023年)を占める。シカにスカートをかまれ、手で強く押しのけていた年配の中国人女性は、黒竜江省から同僚と初めて訪日したという。向かってくるシカを前に、「どう扱えばいいのか、わからない」と困惑した。友達と写真を撮っていた南京市の女性(24)も、餌を求めるシカに尻をかまれ、驚いて振り払ったらしい。「中国で、奈良のシカに襲われ、けがをした人のニュースを読んだことがあった」と言う。
奈良公園のシカは野生の動物だ。観光客との距離感は課題になっており、行政や警察がシカを大切にするよう呼びかけたり、角でけがをさせられないように距離をとるよう呼びかけたりしてきた。
他方、SNS上では近年、公園のシカが蹴られたり、たたかれたりしているように見える映像や写真が拡散されている。中国人観光客がシカを虐待していると主張する投稿もある。
自民党総裁選の演説でも、高市氏が外国人客を念頭に、「足で蹴り上げる、とんでもない人がいる。殴って怖がらせる人がいる」などと話した。
そもそも、シカの保護はどうなっているのか。
奈良公園のシカは国の天然記念物に指定されている。死傷させれば文化財保護法違反罪に問われ、刑事罰を科される可能性がある。2021年には、三重県の男性がシカに刃物をたたきつけて死なせたとして有罪判決を受けた。
奈良県は今年4月、県条例の施行規則に基づいて、同法の適用には至らないシカへの加害行為も禁じた。対象は、①意図的に②みだりに(理由なく)③傷つける可能性を伴う――行為だ。
県によると、これまでにこれら3条件を満たす行為は確認されていないという。
一方、平坦(へいたん)部だけで東京ドーム10個分にあたる約50ヘクタールの広さがある奈良公園で、シカをたたくなど不適切な行為がどれだけあるかは不明だ。
公園で活動する人に聞いてみた。
観光業に従事し、1年余り前…
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