(社説)3度目の緊急事態 危機直視し今度こそ抑止を

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 先の緊急事態宣言の解除から、わずか1カ月余り。まん延防止等重点措置では感染の再拡大を防ぐことができず、菅首相が3度目の宣言に踏み切った。

 感染力の強い変異ウイルスが猛威をふるい、関西では医療崩壊が進行している。いのちを守ることを最優先に、社会経済活動への制約を大幅に拡大することは、この際やむをえない。

 ただ、科学的データに裏付けされた、これまで以上に丁寧な説明が不可欠だ。政府の狙い通り、「短期集中」でしのげる保証もない。期限にとらわれず、今度こそ徹底して感染を抑え込む必要がある。

 ■短期集中で大丈夫か

 東京、大阪、京都、兵庫の4都府県を対象に、新型コロナ対応の特別措置法に基づく緊急事態が宣言された。重点措置の対象は、新たに愛媛県が加わり、神奈川、埼玉、千葉、愛知、宮城、沖縄の計7県となった。

 前回の宣言が飲食店への時短要請に的を絞ったのに対し、今回は幅広い業種に休業を求めるのが特徴だ。酒類やカラオケを提供する店にとどまらず、百貨店やショッピングセンター、映画館までが対象となった。スポーツなどのイベントも原則無観客とするよう求める。

 政府はその場での感染リスクより、人出そのものを抑制することに主眼を置く。しかし、この1年、感染防止対策で試行錯誤を重ねてきた事業者の間には、「なぜうちが」という不満や不公平感も生じよう。納得のいく説明と、減収を補う適切な支援措置が伴わなければ、幅広い理解は得られない。

 医療・介護やライフラインの維持などにあたるエッセンシャルワーカーが、不便を強いられないような配慮も求めたい。

 過去2回の宣言では、期間はまず1カ月とされた。今回は大型連休中に強力な対策を集中的にとるとして、25日から5月11日までの17日間とされた。しかし、政府分科会の尾身茂会長が先日の国会で「個人的には最低3週間は必要だと思う」と述べたように、専門家からは早くも、感染を十分に抑え込むには短いとの見方がでている。

 ■第3波よりも深刻だ

 前回、新規感染者数を十分に少なくする前に宣言解除を急いだことが、変異株の広がりと相まって、特に関西で急激な再拡大を招いた。そのことを教訓とせねばならない。

 変異株は感染力が強いだけでなく、重症化率も高いとの報告があり、若い世代での感染も目立つ。関西に続き、東京でも変異株への置き換えが急速に進んでいる。期待のワクチンは、高齢者向けの接種が始まったばかりで、医療関係者にもまだ十分に行き渡っていない。現在の第4波は、第3波以上に深刻と受け止めるべきだ。

 前回の解除の際、再拡大の防止策として打ち出された諸施策の実行状況もお寒いばかりだ。

 感染拡大の予兆をつかむためのモニタリング検査は「1日1万件規模を想定」という目標に対して、平均すれば1日1千件、今月中旬になっても1日2千件余りにとどまっている。

 スクリーニング検査の拡大で変異株の監視を強めるという対策も、ここまで広がってしまうと、封じ込めは困難だ。

 国民生活に強い制約を課す措置は、その分、解除後の反動も大きいと見込まれる。そのことも織り込んで、ワクチンの普及まで感染レベルを一定水準に抑え込むために、今回、どこまで新規感染者を減らせばいいのか。政府は明確な戦略と目標を示さねばならない。

 ■首相の覚悟が見えぬ

 「再び宣言を出すことがないように、しっかりやるのが、私の責務だ」と言って、1カ月前に解除を政治決断した首相の責任は極めて重い。

 きのうの記者会見では「心からおわびする」と頭を下げたが、これまで、重点措置については知事任せで、宣言に至ることのないよう、自ら直接、会見などで国民に協力を強く訴える場面はなかった。

 ただでさえ、それまでの自粛要請と重点措置の違いがわからないという声があるなか、これでは、首相自ら、重点措置を軽んじているとみられても仕方あるまい。

 重点措置で感染拡大を抑えられなかった責任を問われると「宮城は減少してきている」。2度目の解除の判断についても「大阪、兵庫の変異株というのは当時はなかった」。

 この間の首相の言葉からは、指導者として責任を引き受ける覚悟も、国民に危機感を共有してもらい、ともに難局を乗り切ろうという強い意思も感じられなかった。

 東京五輪について、首相はきのう「IOC(国際オリンピック委員会)は開催を決定している」と述べたが、本当に安全安心な大会を実現できるのか、説得力のある説明はなかった。人びとのいのちと暮らしがかかる感染症対策に関する判断が、政治的な思惑で左右されるようなことがあってはならない。

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