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相続税

偶者居住権とは?
利用が向いているケースや
メリット・デメリットなども解説

このコンテンツでわかること

  • ■ 配偶者居住権について理解できる
  • ■ どんなケースで配偶者居住権の利用が向いているかがわかる
  • ■ 配偶者居住権のメリットとデメリットが理解できる

民法が40年ぶりに改正され「配偶者居住権」が施行されました。 一見とても便利な制度に思えますし、相続税の節税につながるという声もあります。

とはいえ、居住権を設定する前に知っておくべき注意点もあります。

ここでは、配偶者居住権について知っておくべきポイントとどのようなケースに向いているのかを解説していきます。

配偶者居住権とは

配偶者居住権とは、家の持ち主が亡くなった後も配偶者(同居していたことが条件)が生涯または一定期間引き続きその家に住み続けることができる権利のことです。

配偶者の住む場所と生活費の確保を目的として、2018年7月の民法改正によって制定されました。

配偶者が相続開始時に被相続人所有の建物に居住していた場合に、配偶者は遺産分割において配偶者居住権を取得することができます。 それにより、終身または一定期間、その建物に無償で居住することができるようになります。

以下のようなケースで考えてみましょう。

  • 被相続人は夫

  • 相続人は妻と子供の2人

  • 相続財産は自宅(2,000万円)と預貯金(2,000万円)

法定相続で、妻が引き続き自宅に住み続けるとすると以下のようになり、妻は生活費に困ってしまいます。

  • 妻の相続分 自宅(2,000万円)

  • 子供の相続分 預貯金(2,000万円)

これが、配偶者居住権を設定(1,000万円の評価額と仮定)すると以下のようになります。

  • 妻の相続分 配偶者居住権(1,000万円)と預貯金(1,000万円)

  • 子供の相続分 自宅の所有権(1,000万円)と預貯金(1,000万円)

このように妻は自宅に住み続けることができるとともに、預貯金も相続できることになります。 子供は、配偶者居住権の負担付きの自宅所有権を取得します。

妻が亡くなると配偶者居住権もなくなり、子供が自宅の完全な所有者となります。 この際、自宅に関して相続税はかからないとされています。

配偶者居住権の施行時期

配偶者居住権の施行日は2020年4月1日です。

2020年4月1日以降に発生した相続について適用することができます。 つまり2020年3月31日に亡くなられた方の相続については、配偶者居住権は設定できません。

また、遺言によって配偶者居住権を取得させることができますが、その場合は2020年4月1日以降に作成された遺言のみ有効です。

配偶者居住権を設定する遺言の作成日が2020年4月1日以前の場合は、その記載部分は無効となるので注意が必要です。

配偶者居住権の設定方法

次に、配偶者居住権の設定方法について解説します。

ご自分が所有する建物に配偶者が住んでいる場合は、遺言で配偶者に遺贈する事で配偶者居住権を設定できます。 この場合、遺言者が亡くなった時点に配偶者がその建物に住んでいることが条件となります。

建物の所有者が遺言を残さずに亡くなった場合は、配偶者と他の相続人と遺産分割協議をすることで配偶者居住権を取得することができます。

この協議が成立しなかった場合は、家庭裁判所に遺産分割の審判の申立を行うことで、配偶者居住権を取得できる可能性があります。

設定後は速やかに登記をした方がよい

配偶者居住権は以下の要件を満たしていれば自動的に権利として発生します。

  • 被相続人の配偶者である

  • 配偶者が被相続人の所有する建物に居住していた

  • 遺産分割、遺贈、死因贈与、家庭裁判所の審判により取得した

この要件さえ満たしていれば自動で設定されます。

ただし、権利は発生しますが、登記しておかないと第三者に対抗することができません。 たとえば、その建物の所有権が第三者に譲渡された場合、その第三者に対して配偶者居住権を主張できないことになってしまいます。

それで配偶者居住権を設定した場合は速やかに登記することをおすすめします。

配偶者居住権を設定するメリット・デメリット

では、配偶者居住権のメリットとデメリットはどんな点があるでしょうか。 以下で解説していきます。

メリットは配偶者の住居・生活費確保と相続税節税

すでに「配偶者居住権とは」の部分で説明した通り、最大のメリットは配偶者の住む場所と生活費の確保につながる点です。

配偶者が住み慣れた住居で生活しつつ、老後の生活資金として預貯金などの資産も確保しやすくなりました。

もう一つのメリットは、場合によっては相続税の節税につながる点です。

配偶者居住権を設定することで、イメージとしては自宅が「負担付き所有権」と「配偶者居住権」の2つの評価額に分かれることになります。

そして、遺された配偶者が亡くなった時に配偶者居住権も消滅し、自宅の所有権者に権利が移転します。 この二次相続の時には配偶者居住権に相続税は課税されません

このように、配偶者居住権を利用することで税負担を抑えることができる場合があります。

デメリットは譲渡・売却できないこと

配偶者居住権は、不動産所有権のように譲渡・売却することはできません

そのため「老人ホームに入居したいから自宅を売りたい」という場合でも自宅を売却することはできないのです。

原則としては、居住権を持つ配偶者が亡くなるまで自宅を売却することができないので、居住権の設定はよく考慮して判断する必要があります。 どうしても自宅の売却を希望する場合は、所有者と共同で売却を行うという手続きを踏まなくてはなりません。 居住している配偶者だけの意思では自宅を処分することができないことが最大のデメリットといえます。

配偶者居住権の利用が向いているケース

ここまでは配偶者居住権の概要とメリット・デメリットを解説してきました。 では具体的に配偶者居住権を設定するのにどんなケースが考えられるでしょうか。

利用が向いているケースをご紹介します。

配偶者と子供が疎遠

相続人が配偶者と前妻の子供、または配偶者と愛人の子供といった場合は遺産分割をめぐって争いになるケースが多いようです。 そのような場合は、基本的には法定相続分に従って遺産分割が行われます。

このとき配偶者が住み慣れた自宅を取得しようとすると、自宅の評価額が高額となるため、預貯金の相続分が減ってしまうケースが少なくありませんでした。 自宅の評価額が法定相続分より高い場合は、超えた分を代償金として他の相続人に支払う必要があることさえあります。

このようなケースで、配偶者が所有権より評価額が低くなる居住権を取得することで、法定相続分の範囲内で住居と生活費双方を確保しやすくなると考えられます。

再婚した妻の家系ではなく子供に自宅を相続させたい

配偶者居住権の利用が向いていると考えられるもう1つのケースは、子供がいる高齢者が再婚したようなケースです。

たとえば、父親が再婚した後、再婚相手の妻より先に亡くなり、自宅を再婚相手に相続させていたとします。

この場合自宅は妻が亡くなった後、再婚相手の妻の相続人のものとなってしまいます。 つまり、自分の子供ではなく、再婚相手の家系のものとなってしまうわけです。

遺言では、自分が亡くなった後、再婚者が亡くなった際の相続まで指定することはできないのです。

このようなケースで配偶者居住権を利用するのが向いていると考えられます。

再婚相手は配偶者居住権を取得して住まいを確保し、所有権は子供が取得することで、再婚相手が亡くなった後に自宅を完全な形で取得することができます

配偶者居住権の評価方法

では、配偶者居住権の価値はどのようにして評価するのでしょうか。 評価額によって遺産分割の際に相続できる預貯金や相続税が変わってきますので、これは重要なポイントです。

それぞれ遺産分割における評価と相続税申告時の評価に分けて解説します。

遺産分割における財産的価値の評価

配偶者居住権の財産的価値の評価方法については様々な方法がありますが、法務省で評価方式の一例が紹介されています。

配偶者居住権=建物敷地の現在価値―負担付所有権の価値

負担付所有権の価値は、建物の耐用年数、築年数、法定利率等を考慮し、配偶者居住権の負担消滅時まで利用できない分の収益可能性を割り引いて求めます。

「配偶者居住権の価値評価について(簡易的な評価方法)」(法務省)

相続税申告における評価

相続税申告において、自宅は下記の4つの権利に分けて評価することになります。

建物の権利

  1. 配偶者居住権
  2. 居住建物の所有権

土地の権利

  1. 敷地利用権
  2. 居住建物の土地等の所有権

上記のうち、1と3は配偶者が、2と4は配偶者以外の相続人(子供など)が取得することになります。価額の求め方はそれぞれ以下のようになっています。

配偶者居住権の価額=建物の時価―建物の時価×(残存耐用年数―存続年数)/残存耐用年数×存続年数に応じた法定利率による複利現価率

居住建物の所有権価額
=建物の時価―配偶者居住権の価額

敷地利用権の価額
=土地の時価―土地の時価×存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率

居住建物の土地の所有権の価額
=土地等の時価―敷地利用権の価額

「配偶者居住権等の評価」(国税庁)

配偶者居住権を設定するときの注意点

配偶者居住権は比較的新しい制度です。 そのため、利用するときにはご自分の家庭や状況にふさわしい制度なのかどうかをよく見極める必要があります。

利用するときの注意点をまとめると以下のようになります。

将来施設に入る際の資金捻出が容易ではない

すでに解説した通り、配偶者居住権が登記された物件は譲渡、売却することはできません。 売却するには所有者の同意を得て、なおかつ配偶者がその権利を放棄する必要があります。 放棄するということは、その権利と引き換えにお金を得ることが原則できないということです。

そのため将来的に配偶者が認知症や療養のために施設に入居したいと考えた場合でも、その資金を準備するのが難しくなるケースが考えられます。

この点を慎重に考慮して、配偶者居住権を設定する必要があるでしょう。

遺言では「遺贈する」と書く

遺言で配偶者居住権を設定するときには書き方に注意が必要です。 「相続させる」ではなく「遺贈する」と書かなければいけません。

「相続」と書いた場合は、配偶者が配偶者居住権を取得したくないと考えたときに相続放棄しか手段がありません。 つまり配偶者居住権とともに相続した他の財産も一緒に放棄する選択肢しかないわけです。

配偶者居住権のみを放棄し、他の財産は相続するという選択肢を残しておくためにも遺言書では「遺贈する」と表現するようにしましょう。

固定資産税の扱いに注意

自宅の固定資産税は、原則として建物の所有者に納付義務があります。

ただし、建物の通常の必要費用は居住権を取得した配偶者が負担することとされており、固定資産税はこの通常の必要費用に入ると考えられます。

このため、自宅の所有権者(子供など)は、固定資産税にあたる金額を配偶者居住権の取得者に請求することができます。

誰が所有権を取得するのかに注意が必要

配偶者所有権は建物に設定されるものです。 このため、自宅所有者がその所有権を売却してしまった場合は、配偶者は自宅を出ていかざるを得なくなるという事も考えられます。

このような事態を防ぐためにも、配偶者居住権を設定したなら登記をしておかなければいけません。 そうして初めて、居住権を第三者に対して主張することができます。

また子供が複数いた場合は特に、所有権を誰が取得するのかを慎重に考慮しなければいけません。

配偶者が亡くなった後は、自宅の所有権者は何の負担もなく完全な形で自宅の所有権を取得することになります。 他の相続人から不満がでないような配慮が必要かもしれません。

まとめ

このように配偶者居住権は、賢く利用しなければトラブルを招いてしまう可能性があります。

とはいえ、賢く利用することで配偶者の住まいと生活費の確保に役立てることができますし、長期的観点から節税につなげることが可能です。

それで、ぜひ利用する前には相続の専門家に相談されることをおすすめします。

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