文系、理系に関わらず"食べず嫌い"を防ぐ
山崎光悦学長は金沢大学大学院工学研究科修士課程を修了。2014年から現職。今年度は新入生全員に、大学で学ぶことの意義を講義した
金沢大学は"地域と世界に開かれた教育重視の研究大学"として、多岐にわたる改革に力を注ぐ。
その取り組みは10年前に始まる。2008年度に、より幅広く柔軟な学びをめざして学部学科制から学域学類制に移行し、「人間社会学域」「理工学域」「医薬保健学域」の3学域16学類となった。18年度には、社会のニーズに応えるため、理工学域の学類再編により17学類となったほか、人間社会学域もコース再編・新設を行うなど、時代の流れに対応した学びを提供している。
さらに、改革の核となる人材育成の指針として、「金沢大学〈グローバル〉スタンダード(KUGS)」を掲げた。「自己の立ち位置を知る」「自己を知り、自己を鍛える」「考え・価値観を表現する」「世界とつながる」「未来の課題に取り組む」の五つの基準で、これからの社会で中心的役割を担うために身につけるべき能力を示している。その各基準に六つの授業科目(GS科目)をひも付け、学生には文理を問わず、基準ごとに3科目以上の履修を求めている。その狙いについて、改革の旗振り役となる山崎光悦学長はこう語る。
「簡単に言えば、"食べず嫌い"を防ぐためです。得てして人は好きなものばかりを選択してしまいます。教養科目であっても、理系の学生は理系、文系の学生は文系の科目を履修する傾向にあります。しかし、大学を巣立った先に、専門分野の知識・技術だけで乗り越えられる世界はありません。グローバル社会のリーダーとなるには、専門性を極めつつ、多種多様にバランスよく学ぶ必要があるのです」
英語による授業を学士課程で50%以上に
少人数制の授業を通して英語力を高める
国際社会に貢献する「金沢大学ブランド」の人材育成に挑む上で、英語力の向上にも注力する。14年度には、徹底した国際化と改革を断行する大学を重点的に支援する、文部科学省の「スーパーグローバル大学創成支援事業」にも採択された。
「23年度までに達成する目標値を設定しています。一例を挙げると、英語による授業を学士課程で50%、大学院課程で100%とし、外国人教員や海外での学位取得・教育研究歴を持つ教員の比率も50%に高めます」
現状では、英語による授業は学士課程で10%、大学院課程で34%と、目標までの道のりは長い。それでも、山崎学長はこれらの目標を「画餅で終わらせるつもりは毛頭ない」と、実現への一手を次々と打っている。
例えば、質の高い英語教育で知られる米ボストンのタフツ大学と連携し、スーパーグローバルELPセンターを開設した。ELPは「English Language Programs」の略称で、タフツ大学講師が常駐し、学生、教員、職員それぞれを対象とした少人数制の英語プログラムを実施する。
さらに、海外留学に関するサポート体制も充実させている。海外の大学では主流のクォーター制(4学期制)を導入し、学生が留学しやすい環境を整備。さらに独自の留学プログラムや奨学金も用意し、学生の背中を押している。
「徐々に目に見える効果が上がっています。今後も果敢な挑戦で、目標達成に向けた取り組みを一層加速していきます」
高大接続を意識した入試制度改革に着手
改革は、大学への入り口となる入試制度にも表れている。18年度の入試では「文系後期一括・理系後期一括」入試を導入した。従来の入試は学類ごとに選抜していたが、一括入試では文字通り、文系や理系といったより大きな枠組みで入学生を募集する。
「入学後1年かけて幅広く学んだ上で、自身の専門分野を選択してもらうのが目的です。今は後期日程だけですが、ゆくゆくは一括入試を拡大していきたいと考えています」
高大接続に重点を置く入試制度改革も見据える。20年度からは高校生を対象に、特別セミナーや実習などを体系化したプログラムを通じ、時間をかけて生徒の能力を見極める特別入試を予定している。このプログラムでは、グループワークや英語の講義なども実施し、グローバル社会のリーダーとなる素養も探る。また、高校生向け文学賞や数学コンテストを大学独自で行い、その優秀者に対して入学をフォローアップする仕組みも構想中だ。
「大きな志を持つ人たちに、入学してきてほしい。希望にあふれる学生をサポートするため、金沢大学は、徹底的かつ抜本的な挑戦を続けていきます」

