
【第5回】リーマン・ショックが再び起きたらどうしたらよいでしょうか(前編)
- リーマン・ショックが起きたときは、実は何もしないことが得策だった
- パニックに陥って資産運用を中断すると、一時的なはずの損失が恒久的に確定してしまう
- 中長期的に世界経済が成長し続けるという前提にたてば、金融危機が資産運用に与える影響は一時的なもの
世界的な株高が続いている
2017年11月に入り、日経平均が2万2000円台と21年ぶりの高水準となりました。また、米国でもNYダウが2万3000ドルを超え、過去最高の水準となりました。
このような好調な株式市場の様子を見て、いよいよ資産運用を本格的に始めようとしている方も多いでしょう。その一方で、「現在の株価は高すぎる。近いうちに大きく下がりそうで不安だ」という方も少なくないはずです。
もしも、株価が大幅に下落した場合にはどうしたらよいのでしょうか?今回は「100年に1度の金融危機」ともいわれたリーマン・ショックを振り返りつつ、どのような行動が適切なのかを考えてみたいと思います。
リーマン・ショックによって一時的に株価は約半分に
リーマン・ショックから現在までの、アメリカの株式市場の動きを見てましょう。

08年1月の株価(最も代表的な株価指数であるS&P 500)の水準を「100」とすると、リーマン・ブラザーズが経営破たんした翌月の10月末には「71」と、約30%下落しました。さらに、09年3月には、当初の半分の「51」まで下がりました。
株価は「51」で底をうち、徐々に回復していきます。11年1月末には、08年1月と同じ水準に戻ります。その後も上がったり下がったりを繰り返しながら、リーマン・ショックから9年後の17年9月末には「225」と、リーマン・ショック前の約2.2倍になりました。
リーマン・ショックが起きたら、実は何もしないのが得策だった
では、リーマン・ショックが起きた際に、どのように行動するべきだったのでしょうか。
統計上、多くの投資家が、リーマン・ショック後に株式を売却し、より安全な債券や金、現金などに移したことがわかっています。
実際、私の義理の両親(アメリカ人)もパニックに陥った個人投資家の一人です。1990年代から、「長期・積立・分散」による資産運用を続けていたのですが、さすがに株価が3割も下落し、テレビも新聞もソーシャル・メディアも悲観論に満ちていると、資産運用を中断して現金にしないといけないのでは、と考えました。
しかし、それに待ったをかけたのが、長年信頼して資産運用を任せていたアドバイザーでした。アドバイザーの指摘は次のようなものでした。
- 過去の金融危機でも株価は大きく下落したが、やがて回復している
- 仮に今回も一時的な下落であるならば、損失も一時的なものに留まる
- しかし今、株式を売却すれば、一時的なはずの損失が確定してしまい、回復できない
- もしも手元の現金の余裕があれば、むしろ、割安で追加投資をする大きなチャンス
アメリカの義理の両親の場合は、さすがに追加投資をする勇気はなかったのですが、何もせずに様子を見ることに決めました。
すると株価はむしろますます下落し、ますます不安になります。
しかし、そのまま何もしないでいると株価は回復し、2年後には元の水準に戻り、そこからさらに7年後にはリーマン・ショック前の水準の2倍以上になったのです。この間も積立投資を続けた結果、現在では金融資産だけで数億円になっています。
後日談ですが、ウォール街で働いているときにアメリカの義理の両親から資産運用の相談を受けた私は、同じサラリーマンなのに、日本の自分の両親とアメリカの義理の両親で金融資産が10倍も違うことに気づき、大きな衝撃を受けました。
私は、日本でも誰もが安心して海外の富裕層と同じレベルの資産運用ができるようにしたいと考え、日本でウェルスナビを立ち上げることにしたのです。
(後編に続く)