柴山さん、お金のキーワード、分かりやすく教えてください!

いくらから資産運用を始めればいいですか?(後編)

ウェルスナビ 代表取締役CEO柴山 和久

財務省、MBA留学、マッキンゼーを経て、2015年にロボアドバイザー「WealthNavi」を提供するスタートアップ企業・ウェルスナビを立ち上げた柴山和久さん。本連載では、"お金のプロ"である柴山さんに、お金や資産運用にまつわるトピックをわかりやすく教えてもらいます。


前回のコラム「いくらから資産運用を始めればいいですか?(前編)」では、「いくらからスタートして、いくら積立をするのであれば、資産運用を途中であきらめずに続けられそうか」を考えるのがいちばん大切だとお伝えしました。後編となる今回は、ご自身に近いモデルケースからイメージしていただけるよう、事例をもとに、具体的なアドバイスをお伝えします。

2018年1月に「つみたてNISA」の制度がスタートしたこともあり、「長期・積立・分散」の資産運用を始めようという機運は高まっています。

個人投資家のAさん、Bさん、Cさんには、当面使う予定のない100万円の定期預金があり、加えて月々の給与から1万円を積み立てる余裕があります。

Aさんは、100万円の運用資金で資産運用をスタートし、積立は行わないことにします。Bさんは、定期預金は崩さない代わりに、月々1万円ずつ積立をします。Cさんは、最初に100万円でスタートし、月々1万円ずつ積立もします。まずは3人の資産運用の特徴をそれぞれ見ていきましょう。

Aさんの資産運用

Aさんは100万円の運用資金で資産運用をスタートしますが、月々の積立は行いません。

この方法で資産運用をすると、スタートするときの相場に、その後のパフォーマンスが大きく影響されます。「安く買って高く売る」という投資のセオリーからすれば、相場が大きく下がったときにスタートするのがいいのですが、下がり続けているタイミングで買える人はなかなかいません。以前のコラム「なぜ人は投資に失敗するのでしょうか?」でもお伝えしたとおり、日本でもアメリカでも、多くの人は「高く買って安く売る」、つまり投資のセオリーの逆をいってしまうのです。

Aさんが投資のタイミングを選ぼうとすればするほど、失敗する可能性は高くなってしまいます。

Bさんの資産運用

Bさんは、定期預金は崩さない代わりに、月々1万円ずつ積立をします。

この方法なら投資のタイミングが分散されます。長期的にみれば、Aさんのように、スタートするときの相場の影響を受けることはないでしょう。

一方で、運用資金が積み上がるのに時間がかかるというデメリットがあります。月に1万円ずつ積み立てても、Aさんが最初に投じた元本が100万円に達するまでに、8年以上かかってしまいます。

Cさんの資産運用

Cさんは、AさんとBさんの資産運用を両方とも行います。最初に100万円で初めて月々1万円ずつ積立していくのです。

Aさんと同じくCさんもスタートするときの相場に影響されますが、月々1万円ずつ積み立てていくことで、その影響はゆるやかになっていきます。

Aさん、Bさんと比べると、Cさんの資産運用はバランスが取れているといえるでしょう。ただ、問題はまだ残っています。老後に備えるという意味では、Cさんの資産運用でもまったく足りないのです。

「30年後に3000万円」を実現するには?

一般的には、リタイアする時点で一人あたり3000万円ほどの資金があると安心だといわれています。

100万円でスタートし、月々1万円の積立を30年続けたとすると、運用にあてるお金の総額(元本)は460万円になります。シミュレーションしてみると、3000万円に達する可能性は2%と、限りなく低くなります(※1)

もし、Cさんが月々の積立額を3万円に増やすと30年後に3000万円を実現できる可能性が約30%になり、積立額を5万円に増やすと約70%に上がります。

このコラムの前編では、アメリカでは、月収の3~4カ月を手元に残しておき、残りの余裕資金(当面使わないお金)をすべて「長期・積立・分散」の資産運用にまわすという方法が一般的だとご紹介しました。この方法では、預金として置いておくお金は資産のごく一部で、毎月、積立で資産運用をしていきます。

たとえば、つみたてNISAで毎月積立をする場合は、最大で約3万3000円の積立となります。ロボアドバイザー「WealthNavi(ウェルスナビ)」で積立をしている約4万人の平均は月3万4000円で、うち2割以上の人が、月5万円以上を積み立てています(※2)。

ぜひこの機会にご自身、あるいはご家族で、いつまでにいくらの資産を築きたいかという目標を話し合ってみてください。その目標を達成するために、いくらから「長期・積立・分散」の資産運用を始めるか、そして月々いくら積み立てるかを決めていただくとよいと思います。

(※1)ロボアドバイザー「WealthNavi(ウェルスナビ)」のリスク許容度3(2018年6月時点)の推奨ポートフォリオ(米国株31.0%、日欧株23.4%、新興国株6.1%、米国債券27.7%、金6.8%、不動産5.0%)で、ウェルスナビ社のモデルを用いて30年間の積立投資の成果をシミュレーションしたもの

(※2)2018年6月時点での「WealthNavi」のユーザーデータから算出。積立額は千円未満、ユーザー数は百人未満を切り捨て

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