
なぜ人は投資に失敗するのでしょうか?
ポイント
- 人間は「損をすること」を嫌う生き物
- 「損をしたくない」という感情が「正しい判断」の邪魔をする
- 多くの人は、高く買って安く売ってしまう
なぜ人は投資に失敗する?
「資産運用に興味はあるけれど失敗するのが怖い」「以前投資をして失敗した」……。私が代表を務めるウェルスナビは、資産運用を全自動化したサービス「WealthNavi」を提供しています。資産運用に二の足を踏んでしまう、という方たちからは、このように「失敗」が怖いという声をよく聞きます。
ではなぜ人は、資産運用に失敗してしまうのでしょうか?
人が投資に失敗する大きな原因の一つが「感情」です。人間なら誰もが抱くであろう、ある自然な感情が、資産運用にあたって、「正しい判断」の邪魔をしてしまうのです。
人は損をするのが嫌い
人は「損をすること」を嫌う生き物です。「損をすること」と「得をすること」を比べると、感情の振れ幅は2倍近くになると言われています。
たとえば、あなたが「観たい」と思っていた映画のチケットをなくしてしまったときの心の痛みは、偶然その映画のチケットをもらったときの喜びよりもずっと大きいはずです。
「損をしたくない」というのはとても自然な感情なのですが、こと資産運用にあたっては、マイナスに働いてしまうのです。
「値上がりした白菜」を買いたい?
「今夜はお鍋にしよう」と思ってスーパーに行ったところ、天候不順で不作だったのか、白菜が想定の2倍の値段でした。
さてあなたならどうするでしょう。予算が限られていれば、「1玉のところを1/2玉にしておこう」と、買う分量を減らすかもしれません。
一方、旬のみかんがセールになっていたとします。普段からみかんを食べるなら、「今日まとめて買っておこう」と思うかもしれません。
価格が高すぎるときに買い控えて、価格が低ければ買い増すというのは自然な行為です。

「値上がりした投資信託」なら…?
ではこれが野菜や果物ではなく「投資信託」だったらどうでしょうか。
さまざまな金融資産にバランスよく分散された投資信託があるとします。どんなときに買いたくなるか、あるいはどんなときに売りたくなるか、想像してみてください。価格が上がっているときでしょうか、それとも下がっているときでしょうか。
価格が上がっているとき、多くの人は「まだまだ上がりそうだ」と直感的に思うので、投資信託を買いたくなるでしょう。
では、すでに保有している投資信託の価格が、買ったときより下がっていたらどうでしょうか。(実際には確定しない限り損にはならないのですが)多くの人は「損をしている」ことを怖いと感じるはずです。そして「これ以上マイナスが膨らむのは嫌だ」と直感的に思い、手放してしまいたくなります。
実は、アメリカでもこの傾向は同じです。アメリカの投資信託のデータを見ると、株価が上がっている時期に資金が多く入ってきて、株価が下がるタイミングで資金が出ていきます。つまりアメリカでも多くの人は、高く買って安く売ってしまっているのです。
スーパーの野菜なら冷静に判断できるのに、いざ投資信託(金融商品)となると、「損をしたくない」というごく自然な感情が、「正しい判断」を遠ざけてしまうのです。
プロも感情に左右される
実は投資のプロであっても、感情に左右されて、間違った判断をしてしまうことがあります。
ちょうど1年前の2017年2月、金融業界ではある記事が話題になっていました。ゴールドマン・サックスのニューヨーク本社で株式売買システムの自動化を進めたところ、00年に600人いたトレーダーが現在では2人しか残っていないというのです。
トレーダーに代わって取引するのは、複雑なアルゴリズムを搭載した、自動取引プログラム。記事によれば、ゴールドマン・サックスではエンジニアが9000人と、従業員の3分の1を占めるまでになっています。
アメリカでは、個人の資産運用を自動化するロボアドバイザーも、若い世代を中心にスタンダードになりつつあります。「長期・積立・分散」の資産運用を淡々と続けるための仕組みがあれば、相場がよいときも悪いときも、感情に左右されずに資産運用を続けることができるのです。