仕事と妊活の両立で悩ませない
誰もが働きやすい組織風土をめざす
2021.09.17
パナソニック システムソリューションズ
ジャパン株式会社
代表取締役社長の片倉達夫さん(中央)と社員のみなさん

パナソニック システムソリューションズ ジャパン株式会社(以下PSSJ)は、不妊治療に利用できる休暇取得制度の整備や治療費の助成を行い、社員の妊活を積極的に支援しています。

2018年には職場(上司)へ男性の育児休業の取得を義務化したり、社内で「妊活セミナー」を開いたりと、会社全体で不妊治療や育児への理解促進に力を入れているのですが、こうした取り組みは会社にどのような効果をもたらしているのでしょうか。代表取締役社長の片倉達夫さんにお話を聞きました。

働き方、休み方の選択肢を増やし、妊活を後押し

——妊活を支援する休暇取得制度について教えてください。

妊活を支援する休暇取得制度は、2種類あります。不妊治療に専念するために、まとまった休みが取れる「チャイルドプラン休業制度」と、不妊治療のほか、子どもの行事や家族の看護・介護のために休むことができる「ファミリーサポート休暇制度」です。

「チャイルドプラン休業制度」は、無給ではありますが、1回につき30日以上、複数回取得することができ、通算365日まで休めます。一方、「ファミリーサポート休暇制度」は、1年につき有給2日、公休3日の計5日を上限に利用できる制度です。

——休暇取得以外の支援はありますか?

2019年からは、不妊治療にかかる費用の助成も始めました。パナソニックグループでは、福利厚生の一環として、旅行や習い事など自分の好きなことに使える「カフェテリアポイント」という制度があるのですが、PSSJでは、独自の取り組みとして、年間8万円相当のポイントを不妊治療にも充てられるようにしました。

この三つ(2種類の休暇取得制度と費用助成)の直接的な妊活支援制度と、既存のフレックス制度や在宅勤務、半日年休、時間単位年休などを組み合わせれば、妊活と仕事を両立するための選択肢の幅はかなり広がります。

いったん休業して不妊治療に専念したい人もいれば、働きながら治療を続けたい人もいる。多様な価値観を持つ社員が、自分で働き方を選べるように制度設計しているのが、PSSJの妊活支援の特徴です。これらの制度は、もちろん男性社員も利用できます。

——制度を拡充してきた背景は。

社員にとって、「仕事と家庭の両立」はとても大きなテーマです。仕事を通じて成長したいと望んでいるのに、妊活を理由に諦めざるを得ないなら、それを解消するのは経営側の役割です。

女性の採用が増えてきたとはいえ、PSSJ社員の女性比率は17%。男女を合わせた年齢構成では40代以上が73%と、まだまだ仕事中心の人生を歩んできた男性が多いのが現状です。だからこそ、制度を設けるだけでなく、利用しやすい組織風土を醸成していけるよう、会社がしっかり後押しすることが重要です。

——風土の醸成のために、どのようなことをしているのでしょうか。

意識改革のためには、経営者が継続してメッセージを出していく必要があります。例えば「男性の育休」。制度自体は以前からあったものの、2017年まで取得者はゼロでした。そこで、2018年に育児休業制度を変更し、開始から1か月間は有給扱いとしたうえで、職場(上司)へ義務化したところ、2020年に100%を達成しました。

私の世代は育休なんてほぼ取らせてもらえなかったけれど、今はそういう時代ではありません。男性の育休が当たり前になれば、組織全体の多様化に対する受容性も高まります。性別、年齢、国籍関係なく、誰もが働きやすい環境を整えることが、妊活のしやすさにもつながるはずです。

また、妊活への理解を深めるための直接的な働きかけとして、2019年には外部から講師を招き、社内で「妊活セミナー」を開催しました。2021年は企業として社外の「妊活セミナー」に参加しています。これらのセミナーは妊娠を望む社員限定のものではなく、管理職を含むPSSJ全社員が対象です。こうした取り組みは、これからも続けていきます。

社員の多様性を受け入れることで、会社はさらに発展する

——経営者の立場から見た、妊活支援に取り組むメリットはなんでしょうか?

柔軟な働き方を受け入れている、フェアでオープンな会社には、多様な人材が集まります。さまざまなバックグラウンドを持つ人材を取り込むことは、会社の発展にとって非常に重要です。

新卒採用やキャリア採用で、国籍、性別問わず多彩な人材から応募があるのは、妊活支援を含めた働きやすさが理由の一つだろうと感じています。妊活に取り組む30〜40代の中堅社員の退職を防止できているのも、大きなメリットですね。

お客様と共同で進める仕事や、業界の垣根を超えて取り組む仕事が増えてきたので、組織の多様性は今後ますます高めていく必要があります。

——今の制度(妊活支援制度含め)は、設計や運用がうまくいっていると感じますか?

ここ3年ほどの取り組みの成果の現れか、「別の会社になったみたいだ」と話す社員の声をよく耳にします。でも、100%達成できているとは言えません。制度や組織風土を変えるには、やはりある程度の時間がかかりますから。

昔からの決まりごとや、いろいろな慣習にひも付いたしがらみもいっぱいあるので、問題を丁寧に解決しながら着実に進めていきたいですね。

——妊活支援の取り組みについて、パナソニックグループ内で情報共有をする機会はあるのでしょうか。

グループ内では、多様性を尊重し、生かしていく「Diversity & Inclusion(ダイバーシティ&インクルージョン。以下、D&I)」の考え方に基づき、情報交換や情報共有を随時行っています。妊活支援に関して言えば、「カフェテリアポイント」の利用対象に不妊治療を加えたのはPSSJ独自の取り組みだとお話ししましたが、2021年7月からはグループ全体でも不妊治療が利用対象に加わりました。

最近では、コミュニケーションツールを使い、社員同士でも「女性社員」「Working Parents」「障害者および障害者と一緒にD&Iを考えたい健常者」といったグループを作り、情報交換を活発に行っています。

「人材は社会からお預かりした財産」だからこそ

——妊活支援を始めとした「働きやすさ」の追求は、SDGs(持続可能な開発目標)が掲げる目標(※)にも当てはまりますね。
※「17の目標」の「3・すべての人に健康と福祉を」や「5・ジェンダー平等を実現しよう」に該当

「人材は社会からお預かりした財産である」。これはパナソニックの創業者、松下幸之助の言葉ですが、人を大切にする姿勢は引き継いでいかなければならないと私も考えています。

心身の健康を保つ重要性は社会で共有されるべき課題であり、PSSJも「健康経営」に注力してきました。2020年8月には、女性の働きやすさの指標となる厚生労働省の「えるぼし認定」で、最高位の「3段階目」に認定されました。2021年3月には、健康経営優良法人認定制度「ホワイト500」の認定を受けるなど、男女共に、社員一人ひとりが最大限に能力を発揮できる環境整備を進めています。

社員それぞれが望む形の人生を送っていけるようにするのも、企業が担うべき重要な役割です。特にPSSJは、仕事としてお客様の業務プロセスの改善やDX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進を請け負っているわけですから、社内の改革が進んでいかなければ示しがつかないし、信用も得られません。

優れた経営システムはお客様とも共有すべきだと思います。我々もより経験値を上げて、業界を先導するリーディングカンパニーをめざしていきたいと思っています。

——経営者として、企業の妊活支援はどうあるべきだと思われますか?

社員が悩むことなく安心して働ける環境を提供するのは、経営者の務めです。経営者が制度をしっかり管理・運用し、最終的には会社が何も言わなくても、社員自ら多様性に関する成熟度を上げていけるようになるのが理想ではないでしょうか。

多様性を受け入れる「ファミリーフレンドリー」な社会の実現には、仕事の全体最適化の流れを推し進めていく必要もあります。日本はこれまで、その人がいないと回らないような、個別最適化された縦型環境での労働が主流でした。でも、これからは、仕事を全体でシェアする感覚がないと、フェアでオープンな風土にはなっていかないと思うのです。

経験や勘などに基づく知識を可視化し、仕事が標準化されれば、多少職種にもよるとはいえ、時間と場所を限定しない柔軟な働き方を多くの人ができるようになります。この全体最適化の考え方は、仕事以外の分野でも可能性を広げてくれるはずです。

2022年4月から、PSSJは「パナソニック コネクト株式会社」へと名前も体制も変え、規模も格段に大きくなります。世代もポジションも価値観も異なる社員が増えるので、多様性を受容する風土の醸成は引き続き大きな課題として取り組んでいきたいと考えています。

PROFILE

パナソニックグループの技術や法人向け製品、ICTソリューションを提供。システム開発・製造、販売、SI、施工、保守、運用サービスをトータルで手掛ける。また製造業で培った知見・ノウハウを活かし現場業務プロセスを改革する『現場プロセスイノベーション』で企業の経営課題解決を支援している。従業員数は約4880人(2021年4月現在)。パナソニックグループの持株会社制への移行にともない2022年4月より、「パナソニック コネクト株式会社」に変わる。本社は東京都中央区。

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