
3月8日は国連が定めた「国際女性デー」。社会で生き生きと活躍する女性が増えている今、注目したいキーワードが「Healthy Woman Healthy Economies(ヘルシーウーマン・ヘルシーエコノミー)※以下、「HWHE」です。
「HWHE」とは、2015年のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)で提唱された、各国政府や企業、NGO、患者支援団体、患者グループなどが連携して、働く女性の健康増進を図る、世界的な取り組みのこと。
サイエンスとテクノロジーのリーディングカンパニーである、ドイツ・メルクも「HWHE」に賛同しています。同社日本法人で、不妊治療、がん、腫瘍免疫に特化するスペシャリティファーマであるメルクバイオファーマ社代表取締役社長のアレキサンダー・デ・モラルト氏に、今の日本で「HWHE」を推進する意義について伺いました。
——メルクバイオファーマ社は「HWHE」に賛同しています。女性が健康的に活躍できる社会とは、どのような社会だと想定していますか。
「男性、女性の区別なく、誰もが自分の意志によって自分の望む分野の仕事を選ぶことのできる、男女共同参画社会が望ましいと考えています。でも、女性が男性と同じように社会で活躍するためにはまだまだ課題が多いのが実情だと思います。
現代社会は大きな進化を遂げ、男女ともに経済活動に参加するようになったのに、いまだに家での役割は女性が担う部分が多いと言われています。つまり、社会参加する女性の方が男性よりもハードワークをしなければならないのです。
女性は外で仕事をしたあとも、家で食事の準備をしたり、子どもの面倒をみたり、本当に多くのことをしなければなりません。中には親の介護をしなければならない人もいるでしょう。そのため、女性は男性に比べて多くのストレスを抱えていると思います」
「さらに女性は、キャリアを選ぶのか、家族のために仕事を辞めるのかの二者択一を迫られることもあります。この選択を迫られる社会であるということは、その他のいろいろな問題に繋がっています。
たとえばキャリアを優先し、結婚や出産のタイミングを遅らせた場合、人口問題への影響があります。日本では少子高齢化が進んでいますが、女性は35歳を過ぎると妊孕性が低下するといわれています。※1人口が減っていくということは、いずれ経済にも大きな影響を及ぼしますよね。
女性がストレスに苦しむことなく健康的に暮らし、自らが望むタイミングで妊娠・出産できる社会を実現することは、社会が成長を続けるためにも重要です」
http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa18.html

——昨年末の厚生労働省の発表※2では、日本の出生数は統計を始めた1899年以降で初めて90万人を下回り、86万4000人に。そんな中、メルクバイオファーマ社では、会社としてどのような取り組みを行っているのでしょうか。
※2 厚生労働省 人口動態統計
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suikei19/dl/2019suikei.pdf
「女性が健康的に生き生きと活躍する社会を実現するために我々にできることは、2つあります。社会に向けた啓発活動と、社内での取り組みですまず、社会的な取り組みとして、我々はヘルスケア領域のプロフェッショナルであるため、継続して革新的な製品やサービスを開発し、提供することができます。さらにその専門性を活用して妊活を支援する目的で、啓発活動も行っています。メルクは『HWHE』の活動に共感しており、女性が社会参画し、活躍・成長し、大切な家族のいる家庭に幸せを還元できるよう、女性の健康と幸せを推進することを目的として、公開討論などで積極的に発言をしています」
「社会的に信頼されるためには、行動が伴わなければなりません。今日は社員向けの取り組みを3つご紹介させて下さい。一つ目は、就業場所や勤務時間を自分で決められるフレキシブルなワーキング・プログラム『MyWork@Merck』です。出産を機に女性が仕事を辞めてしまう理由の一つに、子育てと仕事を両立させるための時間管理の難しさがあると思います。仕事で大切なのは、どれだけ生産性高く仕事をするかであり、オフィスに滞在する時間の長さではありません。メルクのプログラムは、出産されて間もない女性社員のみならず、ほとんどの社員が柔軟性をもって働くことを可能にしています。
二つ目は『YSP(YELLOW SPHERE PROJECT)』と名付けた、妊活支援のための一連のプログラムです。我々は不妊治療領域を事業の大きな柱の一つとしているため、子どもを授かりたいと考えている社員を支援するプログラムを他の多くの企業の方にも参考にしていただけるよう、整えています。
当社で仕事をする社員には、妊活や不妊治療について、そして妊活支援の必要性を含む社会的背景を包括的に学べる場を提供し、さらに福利厚生制度として、高度不妊治療にかかる費用を補助、不妊治療のための休暇も取得できるプログラムを運用しています。
三つ目は、勤務時の服装の自由を認める『Dress for the Day』。革新的なアイデアを生み出してもらうためにも、男女ともに服装に縛られる必要はないと考えています。もちろん外部の方などお会いする方々に失礼の無いよう適切な服装が必要ですが」
——不妊治療の分野だけでなく、がんや腫瘍免疫の分野の製品開発に力を入れるメルクは、昨年、世界23ヶ国約4500人の女性を対象にUICC(国際対がん連合)の協力のもと実施した「女性のがんに関するグローバル調査」の結果を発表をしました。この調査の目的と、メルクバイオファーマ社が世界に向けて提言したいことは何か、教えてください。
「女性はがんと診断されたときにどのような課題に直面するのか。予防や早期発見に繋げるにはどうしたらいいのか。それを知ることが調査の大きな目的でした。非常に興味深いと思ったのは、がんと診断される前に兆候や症状を自覚していた女性はわずか45%で、55%の女性は全くがんに気づいていなかったという結果です。さらに、乳がんや卵巣がん、子宮頸がんといった女性に多いがんについては知識を持っていても、肺がんや大腸がんなどに関する知識量は少ないということも調査で明らかになりました」
がんと診断される前に
兆候や症状を自覚していた
※メルクバイオファーマ株式会社
世界23ヶ国約4500人の女性対象
「女性のがんに関するグローバル調査」
「不妊に関する正しい知識がさらに普及すれば、一定の年齢の女性が不妊検査を受けるなどの医療政策につながる可能性があります。がんにおいても同様に、我々は、世界中のがん患者さんに治療法を提供するスペシャリティーケアカンパニーとして、革新的な薬剤の開発を進めるだけでなく、がんという疾患そのものについても、広く知らしめる活動を行う必要があると痛感しました。我々は、これからも各方面に向けてがんに関する情報の発信を続けて行きたいと考えています」

——メルクバイオファーマ社のこれからの展望を聞かせてください。
「我々は、政府をはじめとした公的機関とともに『HWHE』の考え方を広めていくこと、そして社会全体に変化をもたらしていくことを目指しています。メルクは352年の歴史があります。民間企業が株主に対して価値を生み続けることが大切であるとするならば、長い間ビジネスを続けていくには使命がなければなりません。使命とは、社会に存在するための理由、もしくはビジネスが存続するための真の価値と言っても良いでしょう。サイエンスとテクノロジーの領域で活躍するメルクは、人類の進歩へ貢献したいと考えています。この使命を達成するために、社員にはCuriosity(好奇心)、Diversity(多様性)、Entrepreneurship(起業家精神)の3つの思考態度を持つことを奨励しています。明確に使命を持ち、この3つの思考態度を実行していくことで、メルクの社員一人ひとりが刺激を受け、モチベーション高く仕事に取り組むことが更にできるようになっていくと私は信じています」
「メルクは、ヘルスケア、ライフサイエンス、パフォーマンスマテリアルズの分野における世界有数の企業です。日本法人メルクバイオファーマ社が特に力を入れているのは不妊治療、がん、腫瘍免疫の分野です。社員には、3つの思考態度を持ち、常に従来のやり方に対して更に何ができるかを問い続け、新しいことを生み出し続けるための行動を期待しています。
今日は、昨日よりも成長しているという概念を実行に移すことが、科学的根拠に基づく新規の革新的なソリューションを患者さんへご提供することに繋がります。これは、明日と今日を、昨日よりも良い日とするために、社会へ貢献できることの一つです」


























