
【Ginco森川さんに聞く 前編】ブロックチェーンって何がすごいんですか?
ここ数年、話題に上り続けている暗号資産(仮想通貨)。知名度の高い「ビットコイン」をはじめ、実際に投資しているという人も少なくないかもしれません。最近では、Facebookをはじめとした企業連合が仮想通貨「Libra」を2020年前半にも発行すると発表し、大きなニュースになりました。
そもそも暗号資産(仮想通貨)とは、(1)インターネット上でやりとりできる財産的価値であり、(2)代金の支払い等に活用でき、日本円などの法定通貨と相互にでき、(3)法定通貨または法定通貨建ての資産ではないものと定義できます(日本銀行サイトより要約)。
そして仮想通貨や暗号資産について語る際に欠かせないのが、その基盤の技術となる「ブロックチェーン」です。「分散台帳技術」とも呼ばれるブロックチェーンにはどんな特徴があり、どんなことに役立てられるのでしょうか?仮想通貨ウォレットの企画・開発・運用や企業向けのブロックチェーン事業を支援する株式会社Gincoの森川夢佑斗CEOに話を聞きました。
出会いはビットコインの海外送金
ブロックチェーンとは、特定の規則に則って情報を通信しあい、そのログを一定期間ごとにブロック状にとりまとめ、暗号化しながら一本の鎖のように繋げていく、データ共有ネットワークのこと。ビットコインなどの仮想通貨はブロックチェーン上に記録された残高情報であり、そのやり取りは、ブロックチェーンに参加しているノード(コンピュータ)間で相互に共有され同期が行われます。例えば、以下のような特徴をもったシステムを作り出すことが可能となります。
- どのノード(コンピュータ)で障害が起きても、ネットワーク全体を保持できる
- ネットワークの管理者がおらず、ノード同士は情報を直接やり取りできる
- 暗号化された過去の情報を書き換えることができず、データの改ざんがほぼ不可能
「ビットコイン」は、ブロックチェーン技術を活用した暗号資産(仮想通貨)の代表格。ビットコインの取引記録はすべてブロックチェーン上で処理、記録されます。
森川さんとブロックチェーンとの出会いは数年前。海外への送金にビットコインを使ったときのことでした。
森川さん:ビットコインで送金した際の手数料が数十円(当時)だったんです。国際送金がこの手数料で済むというのは、僕はイノベーションだなと思いました。通常の手数料の100分の1になるというのは、テクノロジーとして大きな可能性を持っているはずだと考え、事業として取り組むようになりました。

ブロックチェーンのすごさが段々分かっていった
ビットコインを通じてブロックチェーンの技術を知れば知るほど、その仕組みの「クールさ」を実感していく森川さん。次第にブロックチェーンという技術を「複数の関係者同士が、常に一貫したデータを同期しあう、改ざんの恐れがないデータベース」だと理解していったそうです。
森川さん:通常の通貨だと、銀行などの決済事業者が大きなシステムでデータを守っています。みんなが取引した記録を事業者のデータベースに保持するという中央集権的なシステムですね。不正を防いで、全体で一貫したデータを持つのを技術的に担保するのは非常に難しく、多くのコストがかかっています。
ビットコインのブロックチェーンの場合は、例えば、みんながメモ帳を持っていて、誰かから誰かに10BTC(ビットコイン)送られたのを1行ずつ記録し、その記録をみんなのメモ帳で持ち合う仕組み。誰かが記録を怠っても、実際のやり取りは全体として記録されていくし、誰かが嘘を書こうとしても、その不正が弾かれるようになっています。そこがブロックチェーンのすごさだと思います。
ブロックチェーンとは、記録の技術です。そこにフォーカスすると暗号資産だけではなくて、他の領域にも広がっています。特に、当事者間で合意されたやり取りを今まで以上に確からしく記録する技術であること、ここに人類の歴史のなかでも重要な変革が起きているなと感じます。
「ブロックチェーン=怪しいもの」と思っている人へ
従来のデータベースの仕組みよりも、より確からしい記録を、より多くの人と共有しあうことができる。ブロックチェーンとはそういった記録技術である、と解釈できますが、メリットはまだまだあるようです。とはいえ、昨今の取引所からの仮想通貨の流出など、どうしても怪しさを感じてしまう人も少なくありません。
森川さん:新しいものには怪しさがつきまとうというか、受け入れてもらうのに抵抗があるのかな、と(笑)。一方で怪しいものから新しいものが生まれるとも言えます。胡散臭いところに活路があるというか、それはインターネットもそうだったはずで、大事なのはその真贋を見極めることかなと思います。
仮想通貨の流出に関して不安だというのは、銀行強盗されて日本円が盗まれたから、「日本円のシステムは危険だ」と言っているのと変わらないんです。取引所から仮想通貨が盗まれたならば、それは事業者(管理側)の問題です。仮想通貨が流出した時に、ビットコイン全体の流通量が変わったり、ビットコインの送金自体に問題がおきたりしているわけではありません。あくまで、通貨の保管、しかも事業者の保管している管理体制に問題があるだけなのです。
ブロックチェーンは、今までのインターネットにまつわる技術のなかで一番透明性がある技術だと思います。ビットコインの仕組みについても、全てオープンソース。構成されるプログラムコードがすべて公開されていて、プロセスや記録もすべてオープン。だれでもアクセスできる。銀行の残高情報なんて基本的に本人以外は見られないじゃないですか。そういう意味ではもっともオープンなシステムであると言えます。
その全貌を理解するのにはなかなか難しいブロックチェーン技術。そのすごさの一端を感じていただけたでしょうか?インタビュー後編では、ブロックチェーンが具体的にどんなことに役立てられていくのか、森川さんに解説してもらいます。