【識者に聞く】グッドラックスリー 井上和久さん 前編

スマホゲームと何が違う? 暗号資産で遊べるゲームの中身とは

編集者・ライター村田 智博

ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨/暗号通貨)だけでなく、サプライチェーンや医療、アートなど様々な分野で活用されつつあるブロックチェーン技術ですが、実はゲームにも生かされているのです。

今回取り上げる「くりぷ豚(とん)レーシングフレンズ」(以下、くりぷ豚)は2018年6月にリリースされた国内初のブロックチェーンを活用したゲーム。架空の豚のキャラクターをトレード、交配し育て、法律に則ったイベントレースに参加させて暗号通貨「イーサリアム」を得ることができます。豚のトレードなどには「イーサリアム」を活用します。ということは、ゲームでデジタル資産を増やせてしまうということ…!?

そこで今回は本作を開発、運営するゲーム会社「グッドラックスリー」(本社・福岡)代表・井上和久さんにインタビュー。前編では、ブロックチェーンを活用したゲームと既存のゲームとの違いをテーマに話していただきました。

ブロックチェーンゲームと普通のゲームの違いとは?

――そもそも、ブロックチェーンを使ったゲームとはどのようなものなのでしょうか?

井上さん:我々は「ブロックチェーンゲーム」と呼んでいます。ブロックチェーン技術を基につくられる「暗号通貨」とは、ビットコインやイーサリアムなどのこと。ブロックチェーン上でトークンとして記録されたり、交換されたり、送付されたりする通貨のことです。ブロックチェーン上にはそういった通貨だけでなく、デジタルデータも記録できます。「くりぷ豚」に登場する豚のキャラクターたちはブロックチェーン上にあるデジタル豚のデータであり、「ノンファンジブルトークン(非代替性トークン)」のひとつです。

【写真説明文】「くりぷ豚」のゲーム画面。豚のキャラクターに餌を与えたりできる

――いわゆるスマホゲームとの違いはどこにあるのでしょう?

井上さん:当然ながら通常のスマホゲームでは、暗号通貨は使いませんし、暗号資産もありません。「くりぷ豚」に登場する豚のキャラクターたちがスマホゲームにおけるキャラクターと何が違うかというと、コピーできないということなんです。改ざんできないとも言えますね。「くりぷ豚」では理論上3京6000兆通りの豚ができます。ユーザーが所有する豚は世界にひとつしかない固有のキャラクターになります。

コピーできないから価値が出る

井上さん:このコピーできないことが価値を生みます。ブロックチェーンを活用するまでは、デジタル上の世界では、データをコピーすることが容易にできました。

例えば海賊版のマンガ作品を公開していた「漫画村」。単行本などのデータがコピーされ、漫画村で無料公開されてしまうと、作品の金銭的な価値はほぼ無くなってしまう。

もしマンガの作品データなどもブロックチェーンで管理されて、ユーザーが閲覧するにはトークンで権利を買ってから、固有のデータをもらうといった仕組みができていれば、デジタル上で「価値の移転」がしっかりできるわけです。しかし、それができていなかったため、実際のビジネスシステムやコンテンツのエコシステムがまわらないことが露見してしまいました。

ゲーム上にリアルな資産を形成できる

――ブロックチェーンを使うと、デジタルデータも価値を持ち、保ち続けることができるということですか。

井上さん:はい。コピーできない固有のデータがデジタル上にあるということは、それ自体がゲーム上で資産になるということでもあります。この場合の資産とは「イーサリアム(=暗号通貨)」と「ゲーム内のキャラクターやアイテム(=暗号資産)」が例としてあげられます。

ゲームとはそもそも現実世界のシミュレーターみたいなものですが、ブロックチェーンを活用することでリアルにより近いシミュレーションができるようになったということです。

「くりぷ豚」を例にとりましょう。リアルの養豚場では、豚を交配し、産み、育て、販売して通貨を得ています。それと同じようなことがゲームでもできます。豚を買ってきて、交配して、増やせます。ゲームなのでレースに出場させて、景品表示法の範囲内で、豚肉やイーサリアムなどの賞品などをもらうこともできる。さらに豚は持ち続けてもいいし、トレードに出したり、プレゼントしたりしてもいい、という状況をつくっています。

ゲームの世界をユーザーがつくる

――ゲーム内のキャラクターやアイテムをユーザー間でトレードできるというのは、画期的だと思います。

井上さん:今までのゲームでは、表立ったキャラクターなどの売買は、ゲーム会社側が禁止、あるいは推奨していませんでした。こうしたいわゆる「リアルマネートレード」に対して業界は消極的だったんです。その理由は2つあります。
ひとつ目は、ゲーム会社にとっては、ユーザーがお互いに自由にキャラクターを売買してしまうと、自分たちが売るはずだったものが売れなくなる可能性があるからです。自分たちが介在することで得られるはずだった利益を失ってしまう。ユーザーが中古品の売買をすることで新品の売れる量が減っていくようなものですね。しかし、ブロックチェーンゲームでは、そもそもキャラクターやアイテム等の所有権という価値がユーザーに移転されていて、防ぎようがないのです。

ふたつ目の理由は、仮にユーザー間の取引を認めていたとしても、そこで未送金などのトラブルが起こった場合に運営側が補償しづらかったからです。

――ユーザー同士の取引を許可するにしても、リスクや管理コストがそれなりにかかるということですね。ゲームにブロックチェーンを実装することで、それが簡単にできるようになったと。

井上さん:そうですね。ブロックチェーンゲームであれば、スマートコントラクトと呼ばれる仕組みを使って安全でスムーズにトレードができます。取引所が仲介することもありますし、ユーザーが持っているウォレットを使って、取引所を介さずに直接取引することもできます。

――暗号通貨にしても、キャラクターのデータにしても、ブロックチェーン上に置かれているわけですから、ウォレットさえ持っていれば、自由にトレードできるわけですね。

井上さん:ウォレットは、キャラクター、アイテムなどの暗号資産を保管するだけでなく、マーケットで流通させることができます。「くりぷ豚」でいうと、購入した豚を育てたり、交配させて新たに誕生させたりした豚を、マーケットでトレードに出すことができるわけです。かつその豚たちはどれもが固有の価値を持ったキャラクターです。

そういう意味では、これまでゲームの作り手であるクリエイターとユーザーは、はっきり分かれていたわけですけれど、ブロックチェーンゲームではゲームの世界をつくっている作り手にユーザーが入ってきたということが言えると思います。

ブロックチェーンを活用するがゆえにキャラクターに価値が出て、さらにそれを安全でスムーズに取引することができ、リアルな資産にもなる。既存のスマホゲームとの違いがはっきりとしてきました。

インタビュー後編では、国内初のブロックチェーンゲームとして話題を呼んでいる「くりぷ豚」についてもっと詳しく聞いていきます。

「くりぷ豚」公式サイト

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