
【前編】ビットコインは今どうなっているの?
マネックス大槻さんに聞く
2017年後半から2018年の初頭にかけて起こった「ビットコインブーム」。ビットコインの価格はまたたく間に上昇し、そして…。投資した人の中には大もうけした「億り人」が誕生した一方で、多額の損失を出してしまった人も少なくありません。
それゆえ、暗号資産(仮想通貨)への投資は怪しくて危険なもの。そんな印象をもっても仕方ありません。一方でFacebookを始めとした企業連合が暗号資産「Libra」を発表するなど、新たな動きも出てきています。
最近の暗号資産・仮想通貨市場について、マネックス仮想通貨研究所所長・大槻奈那さんに話を聞きました。前後編に分けてインタビューをお届けします。
時価総額は下がったが、取引量は増えている
大槻さん:ビットコインの価格動向を見てみると2019年6月の時価総額は30兆円くらいです。ビットコイン価格が急騰した2017年12月ごろが60兆円くらいでしたから、およそ半分になっています。ただ、取引量自体は増えてきているんですね。
今年の4月くらいから再びビットコイン価格は上昇してきていますね。
大槻さん:4月以降のビットコイン価格の上昇は、機関投資家という新しい投資家ベースの拡大とユーザーの利用増加の両面からくる市場拡大への期待の現れです。
その頃の話題のひとつが機関投資家の仮想通貨投資への意欲の高まり。世界最大の運用会社フィデリティ・インベストメンツが機関投資家向けにアンケートをしたところ、すでに仮想通貨に投資している投資家が約20%、将来保有したいと答えた投資家が57%でした。実際に、今年に入ってから海外の富裕層や機関投資家による投資の増加が目立っています。
同時期に、米国でAmazonの支払いが仮想通貨で決済可能になるサービスが発表され、一般ユーザーの利用が広がっていくんじゃないかという見通しが高まりました。
加えて、昨年末に米国のオハイオ州が税金の支払いを仮想通貨で認めているんですね。公的機関が支払いを認めるなら、これは通貨じゃないかと。「仮想通貨は通貨じゃない」という定義づけが崩れ始めています。
投資家がビットコインに期待する理由とは
では、なぜ機関投資家はビットコインに期待を寄せるのでしょうか?ふたつの理由があると大槻さんは言います。

大槻さん:機関投資家がなぜ注目しているのかというと、理由のひとつには仮想通貨は他の資産の価格変動との相関が低いということが挙げられます。例えば為替と株価が連動している場合、仮想通貨の価格は影響されにくかったりします。
ふたつ目は他の資産のボラティリティ(価格変動の度合い)が落ちてしまって、仮想通貨にボラティリティを求めにいったこと。ある程度の価格変動がないと、機関投資家としては全く商売になりません。ですから、価格変動があって、リスクの高いものに投資しているのです。
ビットコインの価格は今後どうなる?
ビットコインに投資する側として気になるのは、今後のビットコイン価格の動向です。その参考となるのが、2014年にあったマウントゴックス事件(※)の時のビットコイン価格の変動だそうです。下記のグラフは事件報道後のビットコイン価格の変動と、2018年初頭のビットコイン価格暴落後の価格変動を重ねたものです。

大槻さん:2つの価格の変化を比べてみると、暴落の度合いが非常に似ています。ちょうどこの20%、最高値の5分の1くらいでとまっていて、ピッタリ一致している。
マウントゴックス事件後は緩やかに上昇していますが、現在の上昇のスピードはが前回に比べると早すぎます。バブルが崩壊してから次に上昇し始めるまでに、人々が前のトラウマを忘れなければなりませんが、それにしてはちょっと早い。つまり、もう一度ガクッときてもおかしくない状況です。
ビットコイン価格が下落するなら…
大槻さん:下落する場合に、何がきっかけになりうるかというと…、昨年の11月以降の価格変動を要因分析していくと、案外、取引所からの不正流出などのハッキングでは、市場は反応しなくなっているんですよ。
それよりはむしろ、仮想通貨の利用価値への期待や失望が効いています。例えばLibraの利用価値がそれほどでもないと失望が広がってしまったり、ないとは思いますがLibra協会に入った企業が抜けたりなどすると、ビットコイン価格にも影響を与えるかもしれません。
ビットコイン市場の現状と少し先の展望を解説してもらいました。インタビュー後編では暗号資産(仮想通貨)の投資の魅力や注意点などを伺います。
※マウントゴックス事件
2014年2月に明らかになったビットコインの消失事件。ビットコインの取引所「マウントゴックス」で顧客が保有する約85万ビットコインのほか、購入用の預かり金およそ28億円程度が消失した。
※本記事の情報、予想及び判断は仮想通貨などの投資活動を推奨し、勧誘するものではありません。過去の実績や予想・意見は将来の結果を保証するものではありません。