【わかる!暗号資産】 暗号資産と税金

【後編】税理士が「税制的に暗号資産投資は不利」と語る理由

編集者・ライター村田 智博

本稿の前編では、暗号資産取引の所得にはどのように課税されるのか、税率はどれくらいなのかについて税理士の早戸崇倫さんに解説してもらいました。

後編でも、引き続き早戸さんに登場いただき、いろいろな疑問に答えてもらいます。

取引で損失が出ても相殺も繰り越しもできない

――暗号資産の取引で損失が出た場合、例えば給与所得などと相殺し、全体の所得額を減らすことはできますか?

早戸さん:暗号資産の取引で出た損失は給与所得などの所得と相殺することはできません。暗号資産の取引単体で考えます。黒字が出れば黒字のままで他の損失と相殺できませんし、赤字は赤字のままで、他の所得と相殺できません。また、赤字を繰り越して翌年の黒字と相殺することも不可能。1年単位で所得が確定し、税金がかかります。

――あまり融通がきかないというか……。

早戸さん:税制において暗号資産は不利ですね。例えば株式だったら、売却して利益が出ても、かかる税金は所得税と住民税をあわせても約20%なんです。株式取引の所得は、株の譲渡所得に分類され、分離課税が適用されています。暗号資産投資しかしていない人は、税制的には損をしていると言えるかもしれません。

利益が出た時点で税金がかかることの怖さ

――所有している暗号資産を現金に換えたりした時点で利益が出ていれば税金がかかるということでした。では、次のようなケースはいかがでしょうか?

【昨年】
1000万円で買ったビットコインがその年の12月に8000万円に上昇したので、売却。7000万円の利益を得る。

【今年】
年が明けて、手元の8000万円全額を使ってビットコインを購入。ところが、ビットコイン価格が下がり続け、1000万円分にまで値下がりしてしまった。その年は7000万円の損失となった(保有したまま)。

早戸さん:この場合、まず昨年に得た利益7000万円に税金がかかります。所得税率は45%ですので、所得税額は7000万円×45%−479万6000円=2670万4000円(※税率等は前編参照)です。このほかに住民税がかかってきますので、3000万円超を税金として納めなければなりません。

――そして、今年分は損失となるわけですね。

早戸さん:はい。この場合は保有したままではありますが、現金に換えたとしても損失分はそのままです。

――3000万円超の税金は他の資産から払うなりしないといけませんね……。会社員として給与所得があったとしても、この額は簡単に払えるものではなさそうです。利益が出たら税金がかかることを意識して運用しないと、税金が払えなくなるケースも出てきそうです。

取引の回数が多すぎて損益の把握が難しい……

――1日に何度も売り買いして、取引の回数が非常に多くなる人もいると思います。その場合、取引の利益等を把握するのが非常に困難だと思うんですが……。

早戸さん:暗号資産の取引では、購入した時点での価格と購入した数量を管理していかなければなりません。厳密にやるのは困難なので、税務上そうしていきましょうという方法があります。暗号資産の場合は総平均法です。総平均は1年間で買った額を合計し、それを買った数量で割る方法。平均いくらで買いましたというのが出せます。取引数量などは、取引所で明細が出せるはずです。

――計算方法はわかりました。でも、暗号資産投資を始めて以来、利益の計算はともかく、確定申告をしていない読者も多いと思います。

早戸さん:利益が出ている状態で、確定申告せずに放置していたら脱税になってしまいます。暗号資産投資を始めてから一度も申告していない人は、最長7年間さかのぼって申告するようにしましょう。利益が出ている年には税金がかかりますし、さらに延滞税や追徴課税などが課されることもあります。損失が出ている年も、それがわかるように申告したほうがいいですね。

――損失の年も申告しないと税務署から疑われる可能性があるということですね。ただ、申告作業は膨大で、正直、日常生活に支障をきたしてしまうのではないかと。

早戸さん:その場合は、料金などは発生しますが、税理士などの専門家へ相談することをおすすめします。専門家には代理権限があるので、あなたに代わって税務署とやりとりしてくれます。仮に税務調査が入ることになっても、税理士などが段取りを決めて対応してくれますから、安心だと思いますよ。もちろん、それで払うべき税金が減額されたりするわけではありませんが。

――税務署との間で処理をしてくれて、結果的に課税されるのなら、それは払えばいいということですもんね。

早戸さん:もちろん、確定申告前にヒアリングなどをして、税額等のシミュレーションをすることができます。最近、確定申告をしている人に税務署からの調査が入っているという話は聞いています。申告していない人に対してもいつ調査が入るかわかりません。

――早めに相談を、ということですね。税理士さんの相談料は1時間あたり1万円が相場とのことですが。

早戸さん:方向性を決める意味では有意義な時間になるはずですし、実際に申告まで税理士がすることになれば、その作業料金に相談料は充当されることもあります。一度、問い合わせだけでもしてみてはいかがでしょう? ただし、暗号資産の税務に対応していない税理士事務所もかなり多いですね。税理士自身がよくわかっていなかったり、リスクが大きいと捉えたりしているようです。

――しかるべき専門家を見つけて相談するのが安心ですね。

早戸さん:はい。今の生活を守っていくためにも、確定申告は必ずしてください。個人での申告が難しければ、専門家を頼ってもらえればと思います。

※本記事での税額の計算は概算です。実際の税額とは異なりますのであらかじめご了承ください。

※本記事の情報、予想及び判断は暗号資産などの投資活動を推奨し、勧誘するものではありません。過去の実績や予想・意見は将来の結果を保証するものではありません。

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