
経験者が語る あの「ビットコインバブル」
2017年後半から2018年初頭にかけて起こったビットコインバブル。暗号資産「ビットコイン」の価格がこの期間だけでも数倍に跳ね上がり、そして暴落しました。ビットコイン投資を通じて、大きな利益を上げた人もいれば、反対に多額の損失を出した人も。
この時期、情報交換しながら暗号通貨(仮想通貨)に投資をしていた3名に集まってもらい、座談会を開催しました。当時を振り返りつつ、彼らの仮想通貨投資への考えを語っていただきました。
座談会参加メンバー

ビットコインではなく、他のコインにも投資
――当時、どんな暗号資産に投資していましたか?
Aさん: ビットコインの価格が8万円くらいだったときに、およそ250万円分のビットコインを購入しました。その後、アルトコインと呼ばれるリップル、イーサリウムやその他のマイナーな草コインにも投資していましたね。投資額は全部で700〜800万円くらいだったと思います。
Bさん: 私は2017年12月ごろに暗号資産への投資をはじめました。価格がだいぶ上がってしまっていたビットコインには手を出さず、リップルに500万円くらい投資しました。その他にはトロンなど。ロシアの取引所にも登録して、そこでしか扱っていないような怪しげなコインも買っていました。すべて合わせたら700万円くらい。
Aさん: ビットコインが100万円を越えたくらいのころだよね。
Bさん: リップルなんて最初に投資したときは80円だった。250万円分くらい買ったら、価格が一気に上がったので、もう250万円くらい追加したんですよ。取得単価の平均は100円〜120円くらい。それが300円くらいまで上がって「おーっ」となっていたら…。まぁ…。いまに至る…。
Cさん: 僕も2017年の12月の頭くらい。その時にネムとイーサリアムを買いました。バイナンス(※海外の暗号資産取引所。世界有数の規模を誇る)で扱っているコインのアルファベットの語呂を見て「これ上がりそうだな」と10銘柄くらいを10万円ずつ買って、一発を狙いにいきました。あと2018年の年明けにイーサリアムの価格が安定していたので、さらに技術的な部分も一応調べて、そこに500万円くらい入れました。合計の投資額は1000万円くらいですかね。
Aさん・Bさん: フルスイングしてるなぁ(笑)
暴落後、資産価値はどれくらいに?
――みなさん、暴落後はそのまま塩漬け状態だそうですが、価値はどれくらいになったんですか?
Aさん: ネム、リップル、草コインは放置。全体で当初の投資額の10分の1くらいになったと思います。
Bさん: なんか、空気がどんよりしてきた…。私は500万円分あったリップルが、いまは150万円分くらいになっていると思います。他のコインに投資した100万円くらいは、まあなくっているんじゃないかな…。もはや、取引所のIDとパスワードですら覚えていない。
Cさん: IDとパスワード忘れるのはやばいよ。
Bさん: ほらスマホを変えると、認証が必要で、取引所に問い合わせをしなければいけないんだけど、それすらもめんどくさくてやっていない。もう思い出したくない…。
Cさん: 僕は当初の投資額の3分の1くらいになっていますかね。イーサリアムは5年とか10年保有してもいいかなと思っています。技術面や基軸通貨で使われていたりするので、それなりに実用化に向けた何かがあるんじゃないかと。
寝ても覚めてもスマホを見ていたあの頃
――壮絶な下落を経験されているんですね…。つらいかもしれませんが、2017年末から2018年はじめのあの頃を思い出していただけますか?
Cさん: 正直、売りどきがわからなくなっていました。当時の暗号資産はすぐに何倍にもなった。自分で、「損切り」も利益を確定させるポイントも決めていなかったので。
Aさん: 当時ってやっぱり、寝ても覚めてもスマホの画面を見ていたんですよ。起きて最初にみるのも、暗号資産の価格なんです。寝ている間に1.5倍とか2倍とかになったり、目が覚めたら100万円プラスになっていたりということがあったので、ずっと見ちゃう。当時を振り返れば、元本だけでも抜ければよかったと思いますね。残りは寝かせておけばいいんだから。
Bさん: でも、あの上がり方を見ていたら抜けないよね…。
Aさん: 僕、堅実派だから、僕ひとりだったら抜くんですけど、まわりがみんな投資していて、儲かっていたから、自分だけ損しちゃうかなと思って抜けなかった。
Bさん: それ堅実派とは言わないから(笑)
Cさん: 振り返れば、損を出さずに済んだポイントがいくつもありました。損する人がいて儲かる人がいるわけだから、どこかで何か(暴落)が起こるぞみたいな予感はあった。
Aさん: そんな話はしていたね。そもそもバブルのときって、僕もこの二人に情報操作されていた。二人は強気なんですよ。「大丈夫、大丈夫」って(笑)。
Cさん: お前結構心配してたよな。
Aさん: バブルがはじける1週間くらい前に、急激に落ちて急激に上がった時があったよね。僕はその時に一回売っているんです。でも二人は「大丈夫」って売らなかった。せっかく元本割れしないように売ったのに、その数時間後にまた上がってるじゃないですか。僕は震えながらお風呂場でスマホの画面を見てました。その後、もう一回買い直して、そのまま持ち続けたんですけど、今度は下落が止まらず…。この3人のなかでは一番損していると思います。
みんなが儲かることはない
――みなさんがある種の熱狂の中にいたんだと思います。結構な額をつぎ込んでいる印象があります。
Aさん: 最初は自分のなかで無くなってもいい額を投資していたんです。自分の資産の1割未満とか。それを突っ込んだときに3日間とか4日間で2倍になったら、もうちょっとお金を入れたくなりますよね。
Bさん: そういうことだよね。あとは、儲けたい額からの逆算ですよね。たぶんその時は5億円くらいほしかったんでしょうね(笑)。5億あったら引退できそうだし。
Cさん: 多分、今までにはない金額が見えてしまったんだと思います。この上がり方でいったらどこまでいくの?あっという間に億万長者になれるかも!という感じで。
Aさん: バブルの前半、ビットコイン価格が高騰した1カ月で運用を終わらせたら儲かったはずなんです。でも、周りがみんな儲かると言っているときに、自分だけ全部売ってしまうのは難しい。
――改めて、当時を振り返って学んだことはありますか?
Cさん: 全員が儲かることはない、ということを改めて学びました。ほかの人と違う視点をいかにもつか。あとは、自分が何のために買っているかを考え、いくらで損切りするかといったルールを設けているか。改めて投資をするのに大切なことを教えられました。
Bさん: 何かしらの優位性がないと厳しいなと思いました。早く暗号資産投資を始めたひとは、早く始めたこと自体が優位性だと思います。安いときに買ったとか。それがないとただのギャンブルになってしまう。
Aさん: 人生に一度あるかないかのチャンスだったと思うんです。なので、やるかやらないかで言ったらやってよかったかなと。
Bさん: すごく前向きだな!
Aさん: だって、あの高揚感はすごかったよ、やっぱり。
宝くじを買う感覚で
――ちなみに、これから暗号資産投資を始める人にアドバイスはありますか?
Aさん: 自分の資産のうちでできる範囲内なら良いと思います。それと、どんな投資も元本だけは回収しようということですかね。元本を回収できれば、余裕が生まれる気がしますし。運用って、結局余裕がある人が勝つのかなと思っていて。
Bさん: 宝くじ買う感覚でやったほうが良いかもしれないですね。宝くじに500万円突っ込むかといったら突っ込まないですよね。何も見通しが立たないじゃないですか。上がるのか、下がるのかわからない。
Cさん: 宝くじよりはわかるんじゃない?
Bさん: 倍率の話ね。感覚的には上がるか下がるかは半々でどっちにもいく可能性があるので、暗号資産に関しては宝くじに近い感じがしている。いまから買うのなら、資産の多くを注ぎ込むようなフルスイングはおすすめしません。
Cさん: あとその仮想通貨がどのような目的で作られているのかを理解し、投資の価値があると思って買うべき。それでダメでも納得がいくと思うんです。自分なりの知識や確信をもって投資するのが大切だなと感じています。
Bさん: お金持ちになりたいと意志をもって行動し続けるのはすごく大事。だけど、すぐに成功できるとかはないなと思っていて、この投資だったら投資の道で勝つにはそれなりの経験と努力が必要だなと思っています。
イラスト=藤田マサトシ
※本記事の情報、予想及び判断は仮想通貨などの投資活動を推奨し、勧誘するものではありません。過去の実績や予想・意見は将来の結果を保証するものではありません。