マネックス仮想通貨研究所所長の大槻奈那さんにインタビュー。後編はビットコインを始めとした暗号資産（仮想通貨）投資の魅力や注意点などを聞きました。すでに投資経験のある人は投資の際の指針として、未経験の人にとっては重要な準備段階の知識として役立つはずです。
暗号資産（仮想通貨）投資の魅力は価格変動
まずは仮想通貨投資の魅力について2点挙げてもらいました。
大槻さん：１点目はやはり価格変動ですね。他の資産に比べて、仮想通貨は価格変動が十分に期待できるということ。今年の4月以降の値動きを見ても、やはりそれなりにアップサイド（上昇）が大きいと実感してもらえたと思います。また、2018年の暴落以降、価格が低迷し昨年の11月、12月くらいには、このマーケットはダメじゃないかと言われていました。しかし、そこからの復活。ひとつの投資先として十分に検討できる存在になったと思います。
2点目は勉強のためにも有効だという点。現在、お金のかたちが変わってきているなかで、これから5年、10年たつとキャッシュレスが非常に大きなテーマになってきます。知識としてブロックチェーンや暗号資産は外せないわけです。それをどうやって勉強するのか。私の知る限り、仮想通貨に投資した人はものすごく詳しいんですよ。ブロックチェーンや暗号資産は、勉強し始めると面白いし、ニュースがダイナミックなんですね。嘘っぽくて怪しいものと思われていたのに、なぜか米国のオハイオ州では税金の支払いに使われていたり、三菱UFJフィナンシャル・グループが発表したデジタル通貨MUFGコインにもブロックチェーンを使っていたり、今度、Libraの運用が始まるとどうやら今まで散々手数料をとられていた国際送金がタダ同然になるらしいといったことがわかったり…。勉強の一貫として、セミナー1回に5万円を払うよりもビットコイン5万円分買っちゃってもいいんじゃないかと思うわけです。ひょっとしたら、10万円くらいになるかもしれませんし。
投資する仮想通貨と取引所の選び方
――2000種類以上あるとも言われる仮想通貨。ビットコインやイーサリアム、リップル、ネム、モナコインなど、主要な取引所で取引できるコインだけでも数多くあります。どのコインに投資すればいいのでしょうか？
大槻さん：メジャーなコインを選びましょう。やはり、マイナー通貨になればなるほど、流動性が低く、価格変動リスクが非常に高くなります。
――メジャーなコインとは…？
大槻さん：ビットコインとイーサリアムにしぼっても良いんじゃないかと思います。そもそもビットコインだけでも価格変動が他の資産に比べて高いので、投資先として考えるのであれば入り口はビットコインだと思います。
――投資すべき仮想通貨同様に、取引所の選択も重要だと感じますが、どのような基準で選べばいいのでしょうか？
大槻さん：一般論としては、ランキング等を見て選ぶのがいいでしょう。細かく調べたい方は取引所が現金として所有している資産を見ればいいかもしれませんね。最近の不正流出の規模感からいえば、ざっくり100億円程度あれば、仮に不正流出が起こったとしても、概ね対応できるだけのお金を持っていると考えていいのではないでしょうか。
取引所における不正流出、ハッキング、不具合というのは、永遠にゼロにはなりません。どんなに成熟したマーケットだとしても、そういった事故は起こりえます。例えばクレジットカードでも現金でも不正利用や詐欺はあるわけですね。
暗号通貨投資でもっとも大切なこと
以前のビットコインブームで損失を出して、投資に及び腰になっている人も多いと思います。改めて暗号資産に投資する際のアドバイスをいただけますか。
大槻さん：一時期、非常にビットコインの価格が上昇していたときは、年初来の上昇率が200%、300%だったわけですよ。それに対して日経平均株価はひと桁%でした。ということは、価格の変動幅が概ね数十倍になります。つまり、同じくらいのリターン額を目的にするにしても、ビットコインのほうは投資額が数十分の1でいいわけです。
それくらい、ほんのちょっとだけ、生活に困らない範囲のお金で投資するというのが良いと思います。仮想通貨投資が怖いものというのは、価格変動の大きさを考えると間違いないんです。一方で、だからこそ投資対象としては面白いということになるわけじゃないですか。
金額にするなら、ご自身がしている投資額の10分の1以下くらいで十分だと思います。
初心者は、ビットコインに投資予算の10分の1程度を投資する。それが一つの答えのようです。暗号資産（仮想通貨）に絡んだ「うまい話」にも乗ってはいけません。
大槻さん：現在いろいろな主体が仮想通貨を発行しようとしています。それらを投資対象と考えるなら、“分からないもの”に投資するのは絶対に避けてください。よく「こういうコインを買ってみたんですけど、こんなコインどう思いますか？」などと聞くのですが、それはほとんど流通しない…。うまい話はこの世界では相当怪しいと思ってください。
仮想通貨は黎明期の市場です。それだけで魅力的じゃないですか。ビットコインを買っただけだって上昇するんです。黎明期の市場で、かつマイナーなものには、情報がないところにつけ込んで不当に売りつけようとする意図があるかもしれません。
暗号資産投資を始めるなら、まずはビットコインで十分です。無理をしない投資を心がけましょう。
※本記事の情報、予想及び判断は仮想通貨などの投資活動を推奨し、勧誘するものではありません。過去の実績や予想・意見は将来の結果を保証するものではありません。
大槻 奈那（おおつき なな） マネックス証券株式会社 チーフ・アナリスト 兼 マネックス・ユニバーシティ長。マネックスクリプトバンク株式会社 マネックス仮想通貨研究所所長
東京大学卒、ロンドン・ビジネス・スクールでMBA取得。スタンダード＆プアーズ、UBS、メリルリンチ等の金融機関でリサーチ業務に従事。2016年1月より、マネックス証券のチーフ・アナリストとして国内外の金融市場や海外の株式市場等を分析する。現在、名古屋商科大学大学院教授、二松学舎大学国際政治経済学部の客員教授を兼務。テレビ東京「ニュースモーニングサテライト」等、メディアへの出演も多数。
著書に『本当にわかる債券と金利』（日本実業出版社）、『1000円からできるお金のふやし方』 （ワニブックス）。
Twitter：@otsuki7
マネックス仮想通貨研究所
聞き手・村田 智博（フリーランスライター） 宮城県仙台市生まれ。株式会社TAPE代表。編集者・ライター。verb、リクルート、メディアシェイカーズを経て独立。WEBメディアや雑誌、フリーマガジン等の編集が主な仕事です。ビジネス、子育てなど様々なジャンルに携わってきましたが、暗号資産はほぼ未知の世界。永遠の素人としてがんばります。
