
【前編】暗号資産取引で利益が出たら、税金はどれくらいかかるの?
会社員として働いて給与をもらっても、暗号資産を取引して利益をあげても、稼いだ分の税金を払わなければなりません。
給与の場合は、会社が代わりに税金の処理をしてくれることも多いですよね。でも、暗号資産の取引となると、どのように税金がかかるのか、どんな方法で税金を納めればいいのか、個人で把握、対処しなければなりません(もちろん、税理士などの専門家の手を借りることもできますが)。
ここでは、暗号資産の税務に詳しい早戸崇倫会計事務所の税理士・早戸崇倫さんに解説をしてもらいながら、暗号資産取引にかかる税金について勉強していきます。
前編では、暗号資産取引において、どんなタイミングでどれくらいの税金がかかるのかを学びます。

課税される三つのタイミング
暗号資産の取引において税金が発生するパターンは主に三つあると早戸さんは語ります。

<1>所有していた暗号資産を売って利益が出る
取引所などで暗号資産を購入し、保有している状態では税金はかかりません。それを売った時点で利益が出れば税金がかかります。
<2>所有している暗号資産を別の暗号資産に交換する
例えば、ビットコインをリップルに交換するなどした場合も利益が出れば税金がかかります。
<3>暗号資産で商品を購入する
店舗やインターネット通販などで、暗号資産を使ってモノを買うことができますが、このケースでも税金はかかります。
「この場合、暗号資産を一度現金に換えて、そのお金で商品を買うという考え方をします。例えば1000円で0.01ビットコインを購入し、それが5000円に値上がりしたとします。それで、0.01ビットコイン分の商品を買った時、4000円の利益をあげたことになり、その分の税金がかかるということになります」(早戸さん)
図にすると次のような感じになります。

暗号資産で直接モノを買っているように見えますが、その間に現金化というステップを踏んでいるんですね。一時、「暗号資産でモノを買えば課税されない」という話が広まりましたが、それは不可能というわけです。
ちなみに、年末調整を受けている給与所得者の場合、1年間の暗号資産取引の所得が20万円以下(他の雑所得などとの合算)であれば所得税の課税対象とはなりません。
暗号資産取引の所得は「雑所得」
暗号資産取引の所得は雑所得に分類されます。所得の分類には給与所得(会社員の給与など)、事業所得(自営業者の売り上げなど)などがあります。

「暗号資産取引の所得は雑所得になります。暗号資産を取引している人は、毎年1〜12月の取引記録を確認し、確定申告するようにしましょう。取引で利益が出た場合は税金を払わなければなりません」(早戸さん)
その際にかかるのは所得税と住民税(県民税、市民税など)です。住民税は所得割として所得から各種控除を引いた額(課税所得)の約10%が課せられます。そして所得税の税率は次の通り。

例えば、暗号資産の取引で700万円の課税所得があったら、「700万円×0.23−63万6千円=97万4千円」と、およそ100万円は所得税として納付しなければなりません。もちろん、住民税の額も雑所得の分だけ増えます。会社員なら「給与所得+雑所得」の額に課税されることになります。
暗号資産取引の税金の扱いがなんとなくイメージできてきましたか?
後編では、より具体的な事例を示しながら解説していきます。利益が出ても喜べない現実が、待っているかもしれません……。
※本記事での税額の計算は概算です。実際の税額とは異なりますのであらかじめご了承ください。
※本記事の情報、予想及び判断は暗号資産などの投資活動を推奨し、勧誘するものではありません。過去の実績や予想・意見は将来の結果を保証するものではありません。