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 小惑星探査機「はやぶさ2」が、6年50億キロの旅を経て帰って来た。10年前、満身創痍(そうい)で燃え尽きた初代と違い、ほとんどトラブルのない順調な飛行――。一見そう見えた裏で、着陸のめどが立たなかったり、再着陸の断念を迫られたりといった危機があった。過去の教訓を生かし、想定外をどう乗り越えたのか。日本の宇宙探査の集大成となった旅を改めて振り返る。

 2010年6月13日。初代はやぶさが豪州の空で砕け散ると、日本は空前のブームに包まれた。月より遠い天体に着陸し、その砂を地球に持ち帰る――。米国すら挑んだことのない宇宙航空研究開発機構(JAXA)の野心的な計画は、帰還前、故障や燃料漏れ、数カ月にわたる行方不明を経て、無謀な挑戦だったという評価になりつつあった。

 09年の民主党政権による事業仕分けでは「多額の税金を投入した効果が見えない」と酷評され、後継機はやぶさ2の開発は先送りに。だが、初代が「劇的な形で地球帰還を成功させてしまうと」(津田雄一プロジェクトマネージャ)、風向きは一変した。科学の優先順位を人気で決めていいのかという意見を横目に、はやぶさ2はともかく開発決定を勝ち取った。

 初代が7年かかった開発期間を3年半で終え、14年12月に鹿児島県の種子島宇宙センターからH2Aロケットで打ち上げられた。直前までエンジンの性能試験をする突貫作業。初代が500キロだった総重量を100キロ増やし、その半分を重要な機器の多重化に充てて信頼性を向上させた。残る半分は、史上初の人工クレーターを作る衝突装置など新たな挑戦に使った。

 目指したのは、地球や火星の軌道付近を回る直径1キロに満たない小惑星「リュウグウ」だ。初代が探査した小惑星より窒素や炭素が豊富。有機物を含んだ砂を持ち帰れれば、私たち生命の材料が宇宙からもたらされたのではという説の検証につながるかも知れない。

 初代は出発早々にイオンエンジン1基が故障したが、はやぶさ2は劣化を避ける設計変更がうまくいき、往路約30億キロをトラブルなく飛んだ。

 だが、18年6月に到着してみると、リュウグウは、初代が着陸したイトカワとはまったく違う岩だらけの小惑星だった。着陸できそうな場所が見当たらず、データの精査に4カ月を要した。それでも、初代が小惑星での滞在を3カ月間しか設定しておらず、調査も着陸もドタバタだったのに対し、1年半という余裕のある日程を組んでいたおかげでじっくり調査できた。

 チームは、地表の岩一つひとつを10センチ単位で再現した三次元地図を作り、はやぶさ2の機体を制御する12基の化学エンジンの癖も調べた。着陸の誤差は50メートルから1メートルに。19年2月22日、はやぶさ2は上空20キロから降下し、7時間半で高速回転するリュウグウの、直径6メートルの「平原」に着陸した。初代が失敗した、砂を巻き上げる弾丸の発射も確認された。

 4月5日には、史上初となる小惑星への人工クレーター作製にも成功。地下で40億年ほど眠っていた、太陽系が誕生した時のままの砂が露出した。

 あとは再び着陸して採取するだけだ。だが、ここでJAXA宇宙科学研究所の国中均所長が再着陸に反対した。「試料はもう採れている。2度目に挑んで探査機を失えば0点だ。60点でいいから帰還させよう」。イオンエンジン開発者の国中所長は、初代のエンジンが全滅したとき、別々のエンジンをつなぎ合わせて復活させた立役者。探査の厳しさを誰より知っていた。

 このまま帰還すれば、砂の採取…

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