言うまでもなく、フランスの印象派の画家クロード・モネ(1840~1926)の日本における人気は極めて高い。特に東京では2023年秋以降だけでも、大規模なモネ展はこれで三つ目となる。何度も開催されているためか、過去2回は、「連作」「睡蓮(すいれん)」といったテーマを設定していた。
それに対し、没後100年にアーティゾン美術館(東京・京橋)で開かれている今展は、「風景への問いかけ」という副題、切り口はあるが、モネが残した絵画のうち約9割は風景画に分類されるとされるのだから、基本的に極めてオーソドックス。モネ作品の点数では、国内展で過去最多というわけではないが、見応えがあり、やはりたいへんな人気となっている。
まず、1850~60年代の初期の油彩画から最晩年の睡蓮の作品までがほぼ時代順に並び、作風やモチーフの変遷が分かりやすい。
モネ作品はパリのオルセー美術館からの41点を含む約60点で、全体では現在は126点なのでモネ以外が60点以上になるが、その「その他」作品の選択と見せ方が秀逸。
セクション1では、モネが光に満ちた軽やかな作風に至る前の初期作が並ぶ。そこに、風刺画を描いていたモネが風景画に取り組むきっかけを与えたブーダンの作品があるのは自然だが、コローやドービニーといった、印象派に先駆けるバルビゾン派の作品も掲げられている。モネへの影響をテキストで明示はしていないが、細かいタッチによる写実性や落ち着いた色調に共通性を見る人は多いだろう。見る側に発見と検討の機会が与えられている。
次のセクションでは、同時代の写真表現が紹介され、写真家たちが絵画の伝統に連なろうとしたことを示す。それに加え、海景写真などを示すことで印象派との共振に気づかせてくれる。モネに影響を与えたとされる浮世絵版画もきちんと見せている。つまり、印象派のモネを突如現れた天才として扱うのではなく、歴史と社会に位置付けているのだ。
風景という切り口についても、明るい光に満ちた睡蓮の池や庭園、夕景などのイメージが強いが、パリのサン・ラザール駅や煙突が並ぶ風景なども含まれている。近代化、都市化が進む時代、そうした新しい要素も風景になったことも明らかにされている。
モネ自身が造った睡蓮の池も、描くために厳密に設計した人工的なものだったという。晩年の睡蓮の絵は、激しいタッチで色もくすみ、戦後米国のアクションペインティングを想起させるが、白内障という身体的条件もその風景画の一要素なのでは、と気づく。
オーソドックスでありながら、鑑賞者に読みを促し、モネの実像に近づかせる。チケット購入は難しいかもしれないが、記憶しておきたい展覧会だ。
▽5月24日まで。日時指定予約制(要公式サイト確認)。
■高村光太郎は「感覚の画家」…
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