現場へ! 緑の日傘(2)
今日、公共空間の樹木がわけもなく切られているわけではない。例えばインフラ整備のためなど。だが木が持つ存在価値を考えれば、看過できないという人々も少なくない。
東京都杉並区内を蛇行する善福寺川沿いの緑地は、散歩道や各所に広場があり、桜など四季折々の自然が身近に感じられる都の公園。広場の一つ、通称ロケット公園では真夏でも何本ものプラタナスの大樹の木陰に守られ、元気に走り回る子どもたちの歓声がこだまする。
が、間もなく閉鎖される運命にある。都が地下に洪水防止の巨大調節池(トンネル)を造る計画で、シールドマシンを入れる直径30メートルの立て坑を掘るためだ。
都によると、工事で影響を受ける緑地の樹木は約100本に上り、38本を伐採、64本は移植するという。
計画に反対する「善福寺川流域の自然と暮らしを守る会」の丸山ゑみさん(80)は「根っこが水を蓄える力など何百年と人間を守ってきた自然を犠牲にして、数十年で朽ち果てるコンクリートの人工物を莫大(ばくだい)な税金で造るとは」と批判する。
はんらんの危険性高い流域
丸山さんと現地を回った樹木の研究者の話では、移植といっても、すでに多くの樹木がある公園に密植しても弱るし、そもそも移植するには時間をかけて根を保護する必要があるのに、ほとんどの木にはそのような措置が取られないという。
善福寺川流域は水はけが悪く、はんらんの危険性が高いとされる。2005年には近くで1時間に112ミリの雨が降り、約1700棟が床上・床下浸水した。都は1時間50ミリなら従来の治水対策で対応できるが、75ミリの危険な雨の確率が近年は毎年5%に高まっており、調節池が必要だとする。
工事は10年かけて近くを通る環状8号線など道路の約40メートル地下に直径7.5~9メートルのトンネルを約5.8キロにわたって掘る。豪雨の際は川沿いの3カ所から取水し、最大30万トンの水をためる能力があるという。
技術力のいる工事のため、ゼネコンなどからの技術提案の内容で受注者を選考し、鹿島と大成建設の共同企業体と約1290億円の随意契約を結んだ。すでに現地では資材の搬入などの準備工事も始まっている。
ロケット公園以外の取水箇所でも都立公園の樹木が伐採されたり、住宅の立ち退きを迫られたりするため、主に3カ所の住民らが反対運動を展開している。
「過剰な施設」とみる専門家も
住民に共通するのは、そんな大規模調整池が必要かという思いだ。6月上旬に区内であった緊急報告会では、死者が出るほどの災害はまだないとの声のほか、過去の豪雨でも既存の調節池で取水すれば善福寺川の水位はかなり下がったという住民もいた。また、住民に理解を示す土木の専門家も他の水害対策と比べ「過剰な施設」と説明した。
都民の命と財産を守るためと…
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