日本海溝・千島海溝地震、県内最大8500人死亡と試算
内閣府は21日、北海道から東北の太平洋沖で、マグニチュード9クラスの最大級の地震が発生した際の被害想定を公表した。宮城県内では、最悪の場合津波で約8500人が亡くなると試算。一方で早期避難などが実現すれば、条件次第で死者の発生はわずかにとどまると見積もった。
想定対象は東北沖から北海道・日高沖に続く「日本海溝」と、十勝沖から千島列島にかけての「千島海溝」の二つの地震で、日本海溝の方が被害が大きい。内閣府によると、県内では津波の要救助者が最大約9700人、避難者が最大約15万1千人。最大約1万7千棟の建物が全壊する。
県沿岸地域は10メートル超の津波に襲われるが、多くは東日本大震災時の津波高よりは低い。内閣府は最大級の地震について「発生頻度は極めて低い」とするが、防災意識の向上などを目的に被害想定を公表した。
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内閣府は今回、巨大地震の被害想定としては初めて、低体温症で対処が必要になる人数を試算した。冬の深夜に地震が発生して避難が遅れた場合、5道県で約4万2千人が低体温症になりえると想定。宮城県内では約6500人の対処が必要になるという。
低体温症を防ぐために、どのような備えが必要なのか。東北大学災害科学国際研究所の佐々木宏之准教授(災害医療)に聞いた。
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――低体温症とはどのような症状ですか。
自分を取り巻く環境が体温より低い時に体が冷え、体温が下がっていく現象です。基準はからだの深部の体温が35度未満になることで、一番最初の症状は体の震え。これは35度未満になる前から起きますが、寒くてガタガタ震えるというのが初期症状です。34度を下回るとろれつが回らなくなり、32度未満だと意識障害に陥って亡くなるリスクが高まります。低体温症では血が止まりにくくなるので、がれきなどで外傷や臓器出血などが生じると、出血が続く恐れもあります。
――低体温症のリスクが高いのはどんな人ですか。
高齢者、低栄養の人、内分泌系の疾患がある人。あとは認知症の人や乳幼児など、寒いことを自覚できなかったり、伝えられなかったりする人です。
――東日本大震災では、どれくらいの人が低体温症で亡くなったのですか。
実態は分かりません。ただ、私は溺死(できし)とされた人の中に、実際には低体温症で亡くなった人がかなりいたと思っています。本来はご遺体を解剖しなければ溺死とは判断できませんが、当時は津波につかっていた全てのご遺体を解剖するのは困難な状況でした。
私は2015年、他の研究者と共同で県内の病院で震災直後に亡くなった人の死因を分析しました。対象者1243人のうち、12人の死因を低体温症と判断しました。
例えば沿岸部の60代男性は、津波後の山火事で避難した際に低体温症となり、入院後に死亡しました。他には震災の2日後に自宅の2階で発見された80代男性も低体温症で亡くなっています。
彼らは津波につかっていない可能性があります。ぬれていなくても、低体温症になりえるのです。
――低体温症の危険は沿岸部だけではないのでは。
その通りです。内陸でも、外気温が低く暖房が使えなければ、低体温症で亡くなります。
体感温度は、外気温マイナス風速とされています。例えば気温20度でも、台風で風速が20メートルあれば体感は0度です。低体温症は沿岸部や寒冷地だけの問題ではありません。
――低体温症になったら、周囲の人はどのように対処すればいいですか。
服がぬれていれば乾いた服に着替えさせ、体をふきます。症状が震えなどの段階で意識があり、誤嚥(ごえん)の恐れがなければ、温かな甘い飲み物を飲ませます。ただしアルコールは厳禁。炭水化物やチョコレートでカロリーを補給してください。
あとは風雨をしのげる場所に行き、毛布でくるんで冷たい床に触れないようにすること。熱源で体を温める場合は体幹部、特に胸を温めるとよいです。
意識がもうろうとして震えがない場合、乱暴に移動させると致死性の不整脈を起こすリスクがあるので丁寧に扱います。嘔吐(おうと)の可能性もあるので、体は横に。ただ、この段階は本来、医療機関での処置をすべき状態です。
――平時の備えでは何が重要でしょうか。
雨具、薄手の保温性の高い衣類などの着替え、タオルを防災バッグに入れましょう。あとは水や炭水化物も必要です。他にも、電気やガスを使わなくても使える暖房器具も役立ちます。ガスコンロなどのアウトドアグッズも便利です。
私は自宅で「防災キャンプ」をしてみることをすすめます。電気やガスを使わずに一晩過ごしてみる。体験してみて、何が必要かを家族で話し合うことが大切です。
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