映画監督、是枝裕和さんの長編デビュー作「幻の光」のポスターには、主演の江角マキコさんの両側に2枚の障子が写されている。
この映画が、石川県輪島市で31年前に撮られたとき、市観光課の職員としてロケ地の交渉などに駆け回った男性(77)が、自宅から外して貸し出したものだ。
男性宅は、2024年元日の能登半島地震で全壊。解体され、障子も姿を消した。「狭い仮設住宅には持ち込めない」。1年ほど前の取材で、淡々と語った男性の言葉が耳に残る。
惜しいけど、あきらめるしかない――。
駐在記者として能登に来て2年。家族の歴史や記憶を宿した家や道具を、処分せざるをえない無念の言葉を何度聞いただろう。
そんな中で出会ったのが、4枚の引き戸だった。
時々お邪魔する珠洲市の住宅にうかがうと、居間に増えていた。重ねた年月を感じさせる茶色の木枠に、昭和レトロな模様の入ったガラスがはめ込まれている。聞けば、「建具バンク」で譲り受けたのだという。
「建具バンク」とは、いったいどんなところなのか。2月下旬、月1回の一般開放日に、珠洲市若山町の保管庫を訪ねた。
建具を譲るたった一つの条件は
市街地から山間部に向かって車で10分余り。入り口を開け放った納屋に、たくさんの人が集まっていた。
中に入ると、ふすまや障子が…
この記事の続きを読むなら今がお得。初回1カ月無料+Visaギフトカードが当たる▶今すぐ登録











































